TorrentFreak

ドイツでオープンWi-Fiを提供する場合、提供者は利用者の行為に責任を負わされるリスクがある。しかし、今年後半からそれは解消されることになりそうだ。ドイツ連立政府は、第三者のファイル共有活動の責任を提供者に負わせる法律を廃止することを決めた。

多くの国で、ファイル共有ネットワークでの犯罪や不法行為に責任を負うのは、それに直接関与した人物に限定されている。

たとえば、ある人物が許可なく最新の映画をインターネットで共有した場合、著作権者からの追求を受けるべきなのは、その共有した人物のみとなる。無辜の第三者が責任を負うべきことではない。

しかしドイツでは、その責任の所在はいささか複雑である。Störerhaftung(妨害者責任)と呼ばれる概念により、誰かの著作権侵害に意図的に関与したわけではない第三者であっても、その侵害に責任を負わされている。この種の責任は、オープンWi-Fiを利用したファイル共有事件において、その提供者が利用者の侵害の責任を考慮しなくてはならないという問題を引き起こしている。

しかし現在、このような息苦しい状況は終わりを迎えつつある。Spiegelの報道によると、ドイツ連立与党はいわゆる『中間者責任(interferer liability)』を廃止することで合意した。

このことは、プライベートかつ小規模なWi-Fi運営者(たとえばカフェオーナー)が、(翻訳註:ISPのような)商業的運営者と同様に、その責任から解放されることを意味する。すでにフランスや英国などの国ではそうなっているが、ドイツでもようやくオープンWi-Fiにスプラッシュページやパスワード・ロックを要求されなくなる。

欧州司法裁判所が3月に公表したEU法務官の助言的意見では、セキュアでないワイヤレス・ネットワークの運用者が、何者かの著作権侵害の責任を負わされるべきではないと勧告されており、ドイツ政府には大きなプレッシャーがかかっていた。

この裁判には、海賊党メンバーTobias McFaddenが関わっている。彼はレコード会社Sonyから、彼の店舗のオープンWi-Fiで違法にアルバムの提供が行われたとして訴えを起こされていた。SonyはMcFaddenに対し、将来の著作権侵害を防ぐために、ネットワークのパスワード保護、ファイル共有に使われるポートのブロック、ユーザの著作物共有のログ保全とブロッキングを行うよう求めた。McFaddenは、(翻訳註:関節侵害)責任を問うSonyの申し立てに反論し、その後、本件は欧州司法裁判所で審理されることになった。

欧州司法裁判所の最終判決はしばらく先のことになるが、多くの裁判において、EU法務官の勧告は判決に踏襲されている。

このまま順調に進み、オープンWi-Fi提供者の法的責任が削除されれば、ファイル共有ユーザに対してドイツ国内で大規模に行われている和解請求ビジネスに大きな打撃を与える可能性がある。侵害を提訴する人びとは、すでに複数の武器を手にしてるが、オープンWi-Fi提供者の第三者責任がなれば、和解へと誘導する武器の1つを失うことになる。これは、侵害に間接的に関与している人物のみならず、直接的に関与した人物に対しての武器を失うことにもなる。

報道によると、法案は来週には閣議決定され、今秋には施行される見通しだという。

“Germany to Rescind Piracy Liability for Open Wifi Operators – TorrentFreak”

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 11, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Elliott Brown / CC BY 2.0

これ自体は何かしらの革新的なことではなく、おかしな状態にあったものが是正されるという類のものである。マイナスからゼロに戻すだけの話というところ。上記記事にもあるが、オープンWi-Fi提供者は、一般的なISPと同様に、利用者の著作権侵害の責任を負わないというだけのことなのだから。もちろん、オープンWi-Fi提供者は責任を負わないというだけで、そのWi-Fiを利用して著作権侵害を行った人物の責任まで免除されるわけではない。

ドイツでは以前より、和解金を当て込んだ著作権侵害警告が乱発されており、当然その中にはオープンWi-Fiでの著作権侵害も含まれている。しかし、その請求書は実際に著作権侵害を行った人物ではなく、オープンWi-Fiの提供者に宛てられたものとなっていた。少なくとも、そのような状況は改善することになるのだろう。というか、そうならないと、困る。

カテゴリー: CopyrightRegulation