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Wikipediaを運営するウィキメディア財団は、DMCAセーフハーバー条項の修正によって、現在ウィキメディアが著作権侵害の問題にうまく対処できているにも関わらず、多大なコストとリスクを支払わされることになると警鐘を鳴らしている。ウィキメディア財団の法律顧問チャーリー・M・ロスロフは、「テイクダウン・ステイダウン」システムがプラットフォームに大きな負担をもたらし、言論の自由を萎縮させるという。

著作権者はインターネットでのコンテンツの無断使用に頭を抱えている。そうしたコンテンツやそこに繋がるリンクを削除しなければ、誰もがそのコンテンツに自由にアクセスできることになり、ビジネスモデルは崩壊すると彼らは主張している。

この問題に対処するため、彼らは毎週数百万の削除通知を無数のプラットフォームに送りつけ、無断でアップロードされた映画、音楽、テレビ番組、ソフトウェア、画像を削除するよう要請している。

しかし、著作権者たちは、削除したはずのコンテンツやリンクが、しばらくすると再アップロードや再インデックスによって復活してしまい、終わりのないイタチごっこをさせられ続けている、と言う。

そこでエンターテイメント産業団体は、DMCAを修正し、一度削除されたコンテンツを同一のプラットフォームにふたたび復活させないよう義務づけることを提案している。言うのは簡単だが、この夢のメカニズムの実現はきわめて困難だ。

この「テイクダウン・ステイダウン」には方々から懸念の声が上がっている。その輪に新たにWikipediaを管理するウィキメディア財団が加わった。ウィキメディアは、現在彼らが著作権の問題に対処できているにも関わらず、DMCAの変更によって負担とリスクだけが増えてしまうと言う。

「DMCAのノーティス・アンド・テイクダウン手続きは、ウィキメディアのプロジェクト、とくにWikimedia Commonsにおいて、著作権侵害の防止にそれほど大きな役割を果たしてはいません」とウィキメディア財団の法律顧問チャーリー・M・ロスロフは言う。

「自発的にプロジェクト・ポリシーを執行するコミュニティメンバーたちは、著作権を侵害するファイルを削除する困難な仕事をしています。そのおかげで、私たちは有効な削除通知をほとんど受け取ってはいないのです。2015年の1年間に受け取ったDMCA通知はわずか12通でした」

ロスロフは、運営の現在のプロセスは著作権侵害を最小限にするために十分に機能しているという。ボランティア・スタッフが、著作権者が通知を送る前に、大部分の著作権の問題に対処しているためである。

「何かがずっとそばにいた場合、ノーティス・アンド・テイクダウンプロセスは、有効な防止装置である。このシステムは、現在の法体制によって成り立っている」とロスロフは記す。

ウィキメディアは、もしDMCAに「テイクダウン・ステイダウン」の義務化が追加された場合――実質的に、すべてのアップロードされるコンテンツを事前にフィルタリングすることをプラットフォームに強制する――非営利団体や彼らがパブリックに提供しているサービスに、ネガティブな影響を及ぼすと考えている。

「そのようなシステムを実装するには相当な資金が必要になります。わたしたちのような非営利団体にはきわめて難しいことです」とロスロフは言う

「第一に、Wikimediaプロジェクトが扱うコンテンツやファイルフォーマットは非常に多様であるため、侵害コンテンツを確実に削除し、かつ過剰な削除や萎縮を引き起こさないフィルタリング・ツールを作り上げることがきわめて難しいのです。第二に、私たちに著作権侵害の監視を義務づけることで、ウィキメディア・コミュニティのプロジェクト管理リソースが大きく損ねられることになります」

「テイクダウン・ステイダウン」の最大の目的は、いつ何時も遵守していなければならないという恐怖を植え付けることにあるのだろう。ウィキメディアを含めあらゆるプラットフォームが、著作権侵害の責任を負わされ、莫大な損害賠償を支払わされるリスクを負わされることになる。

「法定損害賠償――1つの著作権侵害につき最大15万ドル――は、プラットフォームにノーティス・アンド・テイクダウンを厳密に遵守しなければならないという強い義務感を植えつけています。著作権を侵害するファイル誤ってを見逃してしまえば、数万ドルの損害賠償を支払わされる可能性があるのです。そうならないためにも、セクション512セーフハーバー条項は、プラットフォームが存続していくために不可欠な存在なのです」とロスロフは言う。

最後に、米国著作権局は近日中にふたたびDMCAセクション512に関する意見を募集する。ウィキメディアはそのユーザや大衆がパブリック・コメントに参加してくれることを願っている。

「著作権法の本質的な目的は、著作者に利益をもたらすことではなく、一般大衆が新たな創作物を享受できるようにすることにあります。その意味でも、一般大衆や公共からの声が、こうした議論に反映されるようにすることが重要なのです」

“Wikimedia: If Copyright Law Ain’t Broken, Don’t Fix It – TorrentFreak”

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 17, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Lane Hartwell / CC BY-SA 3.0