こんな疑問を持ったことはないだろうか。なぜ2本の『ジャングルブック』の映画が、同時に制作されているのだろうか? なぜあらゆる作品がシェイクスピアを下敷きにしているようにみえるのか? 『オズの魔法使い』にたくさんのバージョンがあるのはなぜなのか? 答えは、いずれの作品もパブリックドメインだからである。つまり、著作権法はこうした作品を取り入れ、新たな作品を創ることをアーティストに認めているのだ。

著作権の主要な理論的根拠は、アーティストに作品の独占的権利を付与することで、アーティストが作品を公表することで利益をあげられるようにし、創作へのインセンティブを持たせることにあるとされる。しかし、著作権の保護には制限があり、期限が切れた作品は、誰しもが利用できるパブリックドメインにはいる。

米国では、著作権保護期間は着実に拡大しており、法人の著作物は95年間、個人の著作物は死後70年間にわたり保護されることになった。その結果、パブリックドメインとなる作品が減少し、アーティストが過去の作品を新た創作に活用することができずにいた。議会が1998年に成立させた著作権保護期間延長法が、遡及的に適用されたためだ。その結果、米国で長らくパブリックドメインとなる作品は皆無であった。しかし、2019年1月1日、1923年に公開された作品がパブリックドメインとなる。ついに魔法が解けるのだ。セシル・B・デミルの『十戒』と、ユニバーサルのサイレント映画『ノートルダムの鐘』がパブリックドメイン入りすることになる。

作家、映画製作者、音楽家、芸術家は互いに影響を及ぼしあい、批評はそれを引き出すために捧げられる。それは今に始まったことではない。古代ローマ時代、ウェルギリウスはホメロスの叙事詩を下敷きにして『アエネイス』を書き上げている。最近であれば、ベストセラーとなった『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』は、『トワイライト』のファン・フィクションとして書かれたものだ。インターネットはGIF、マッシュアップ、改作、ファン・フィクションといったポップカルチャーを花開かせた。

パブリックドメインに頼っているのは、アーティスト個人だけではない。ディズニーはパブリックドメインのおとぎ話をもとにした映画製作で帝国を築き上げた。ディズニーは昨年にも、18世紀の作品『美女と野獣』の実写映画を公開したばかりだ。しかし、ディズニーは自らの作品をパブリックドメインに還すほどの寛容さを持ち合わせてはいない。ディズニーは著作権保護期間延長により莫大な利益を得ており、その独占的使用によって、著名な作品や世界観をさらに囲い込んでいる。

新たなテクノロジーは芸術を生み出し、観客に届けることを容易にしてきたが、著作権保護期間延長は、巨大企業にそうした作品を封じ込めることを容易にしている。たとえ新時代のクリエイターが、フェアユースなどの原則に則って正当に利用していたとしても、それを証明するためのリソースが不足していることも多い。パブリックドメインの作品が多ければ多いほど、新たなアーティストが作品を作り上げるたための豊かな環境を作り出すことができる。パブリックドメインの作品が多ければ多いほど、自由に本を読み、映画を視聴し、音楽を聴くことができるようになる。たとえ新たな作品に影響を与えるものでなかったとしても、新たな世代が過去の作品を再発見できるようになる。

私たちの言葉はレファレンス(参照)によって作られており、私たちの芸術はそれを反映したものでなくてはならない。パブリックドメインが確固たるものとなり、容易にアクセスできてこそ、創造性は豊かなものとなる。2019年、ついにパブリックドメインが再び開放されることを楽しみにしている。

The Public Domain Starts Growing Again Next Year, and It’s About Time | Electronic Frontier Foundation

Author: KATHARINE TRENDACOSTA (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: January 15, 2018
Translation: heatwave_p2p