以下の文章は、2025年10月29日付けのコリイ・ドクトロウの「When AI prophecy fails」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

Amazonは昨年350億ドルの利益を上げた。その祝杯を上げるかのように、同社は1万4000人の労働者を解雇しようとしている(この数字は最終的に3万人に膨れ上がるという1訳注:2026年1月28日、Amazonは追加で約1万6000人の従業員の解雇計画を発表した。)。ウォール街はこの手の話を大歓迎する。今回の大量解雇の背景には、AmazonのCEOアンディ・ジャシーが「AIによって大量の労働者を解雇できるようになる」と繰り返し公言してきた経緯がある。

結局のところ、AIの物語とはそういうことだ。労働者の生産性や創造性を高めるという話ではない。これまでに投じられた7000億ドルの設備投資(AI企業各社がぶち上げている今後の設備投資計画はさらに荒唐無稽だが、それは脇に置くとしても)を回収する唯一の方法は、労働者をクビにすること――それも大量にクビにすることだ。Bain & Co.の試算によれば、AIセクターが損益分岐点に達するには、2030年までに総収入2兆ドルを達成しなければならない。この数字はAmazon、Google、Microsoft、Apple、Nvidia、Metaの売上を全部足した額を上回る。

https://mlq.ai/media/quarterly_decks/v0.1_State_of_AI_in_Business_2025_Report.pdf

7000億ドルの設備投資に1セントでも突っ込んだ投資家は誰であれ、経営者が大量の労働者を解雇してAIに置き換えることを当てにしている。Amazon自身も、そうやって労働者を解雇した企業が自社から大量のAIを購入してくれることを見込んでいる。Amazonは今年だけで1200億ドルをAIに注ぎ込んだ。

ただし1つ問題がある。AIに我々の仕事はできない。もちろん、AIのセールスマンがあなたのボスを説き伏せて、あなたを解雇しあなたの仕事をこなせないAIに置き換えさせることはできる。それは世界一イージーな営業だ。あなたのボスは、あなたをクビにしたくてたまらない。

https://pluralistic.net/2025/03/18/asbestos-in-the-walls/#government-by-spicy-autocomplete邦訳

しかし、AIを導入して後悔する企業が続出している。AI導入事例の95%が、投資に見合うリターンを生み出せないか、赤字に終わっている。

https://www.technologyreview.com/2019/01/25/1436/we-analyzed-16625-papers-to-figure-out-where-ai-is-headed-next

AIは「労働者の収入、記録された労働時間、賃金のいずれにも有意な影響を与えていない」。

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5219933

Amazonはどうすればいいのか。1800億ドルの設備投資を正当化できるほどにAIを買ってもらうには、どうすればいいのか。なんとかして、AIがあなたの会社の従業員の仕事をこなせると信じ込ませなければならない。そのセールストークを成立させる1つの方法は、Amazon自身が大量の従業員を解雇し、その仕事をチャットボットに任せたと発表することだ。生産戦略ではない。マーケティング戦略だ。Amazonは効率を犠牲にしてでも従業員を解雇し、「あなたも自社の従業員を解雇できますよ」と必死にアピールしているのだ。

https://pluralistic.net/2025/08/05/ex-princes-of-labor/#hyper-criti-hype

もちろん、Amazonは実際にAIを多用している。AIは、Amazonが(名目上は)下請け業者の従業員であるドライバーたちをコントロールする「デジタルの鞭」だ。Amazonはこの鞭を振るうことで、ドライバーや道路を共有する一般市民を危険にさらすような安全度外視の労働慣行を押し付けつつ、その責任は「独立配送サービス」事業者や個人事業主のドライバー自身に転嫁できる。

https://pluralistic.net/2025/10/23/traveling-salesman-solution/#pee-bottles邦訳

Amazonの経営陣は、AIが自社のプログラマーをすでに置き換えた、あるいは近く置き換えると宣言してきた。だがチャットボットにソフトウェアエンジニアリングはできない――たしかにコードを書くことはできるが、コードを書くことはソフトウェアエンジニアリングのごく一部にすぎない。エンジニアの仕事とは、非常に深く広いコンテキストウィンドウを維持することだ。個々のコードが、その前後に実行されるソフトウェアとどう相互作用するか、そのコードにデータを供給するシステムやその出力を受け取るシステムとどう関わるかを把握し続けなければならない。

AIが何より苦手とするのが、まさにこのコンテキストの維持である。AIに要求するコンテキストを線形に増やすだけで、計算コストは指数関数的に膨れ上がる。AIにはオブジェクトの永続性がない。自分がどこから来たのかも、どこへ向かっているのかもわからない。指を何本描いたか覚えていないから、いつ止めるべきかもわからない。ルーチンを書くことはできても、システムを設計することはできないのだ。

テック企業の経営者がプログラマーを解雇してAIに置き換える夢を見るとき、彼らが妄想しているのはこういうことだ――最も高給取りで、最も鼻持ちならない人材を追い出し、残った不安げなジュニアプログラマーをAIのお守り係に変える。その仕事は、AIが吐き出すコードを評価し統合することだが、誰であれ――ましてやジュニアプログラマーでは――丁寧かつ適切にやろうとすれば到底追いつけないスピードでこなすことを求められる。

https://www.bloodinthemachine.com/p/how-ai-is-killing-jobs-in-the-tech-f39

AIに置き換えられる仕事というのは、企業がすでにまともにやることを放棄した仕事だ。顧客の問題を解決する権限を持たない海外コールセンターにカスタマーサービスを外注済みなら、その労働者を解雇してチャットボットに置き換えない理由があるだろうか。チャットボットに置き換えたところで誰の問題も解決できないが、海外コールセンターの労働者よりさらに安くできる。

https://pluralistic.net/2025/08/06/unmerchantable-substitute-goods/#customer-disservice

AmazonのCEOアンディ・ジャシーは、労働者を解雇することで同社が「AI対応」になると「確信している」と書いた。だが、その意味するところは判然としない。大量解雇で品質を維持しつつコストを削減できるということなのか、それとも今年AI投資に費やした1800億ドルの回収に大量解雇が寄与するということなのか。

経営者たちは本気でAIに成功してほしいと願っている。なぜなら、心の底からあなたをクビにしたいからだ。CNNのアリソン・マローが書いているように、経営者たちはAIがいつか生み出す……であろう節約を見越して労働者を解雇しているのである。

https://www.cnn.com/2025/10/28/business/what-amazons-mass-layoffs-are-really-about

これらすべてが信じがたく感じられるかもしれない。いつか実現するAIによる置き換えをあてにして、本当に経営者は労働者を解雇するのだろうか。AIへの高額な請求書を抱え、解雇した労働者の不在がじわじわ効いて売上が落ちるのに?

答えは間違いなくイエスだ。AI業界は、AIが労働者の仕事を代替できると経営者たちに信じ込ませるのに絶大な成功を収めた。その結果、AIが期待通りに機能しなかった経営者は、自分のやり方がマズかったのだと思い込む。詐欺でおなじみの光景だ。

ネズミ講にはまった人々は、毎月金を払って仕入れた「商品」を売れずにいるのは自分だけだと思い込まされる。売れ残ったレギンスやエッセンシャルオイルでガレージが埋まっているのは自分だけだと。実態はといえば、MLM(マルチ・レベル・マーケティング)業界にはほぼゼロに近い実売上しかない。「起業家」[訳注:マルチのカモ]たちが商品には需要があるとお互いに、自分自身に嘘をつき合い、誰も欲しがらない商品を自腹で購入し続けることで全体が成り立っている。

MLM業界はこの欺瞞に依存するだけでなく、そこからさらに利益を搾り取る。自己嫌悪に陥った「起業家」たちに、高額な研修コースを売りつけるのだ。成功を自慢する(が実は必死で嘘をついている)他の参加者のようになれないのはあなた自身の問題だ、でもこの研修で克服できる、と謳って。

https://pluralistic.net/2025/05/05/free-enterprise-system/#amway-or-the-highway邦訳

AI業界にも、こうした「営業研修コース」の独自バージョンが存在する。経営コンサルタントやビジネススクールが高額な「継続教育」プログラムを提供する二次産業が丸ごと成立している。購入したAIが経費削減につながらないのは自分のAIの使い方が間違っているからだ――そう思い込む経営者をターゲットにして。

Amazonには、AIに成功してもらう切実な理由がある。先週、エド・ジトロンが流出文書の詳細な分析を公表し、AmazonがAI企業のクラウドサービス利用からどれだけの収益を得ているかを明らかにした。彼の結論はこうだ――AIを除けば、Amazonのクラウド部門は急激な衰退の最中にある。

https://www.wheresyoured.at/costs

さらに、そうした大口のAI顧客――Anthropicなど――は年間数百億ドルの赤字を垂れ流しており、投資家が次々と差し出す資金を燃やし続けている。Amazonにとって、経営者たちが「労働者を解雇してAIに置き換えられる」と信じ続けてくれることこそが頼みの綱だ。そうすれば投資家はAnthropicに資金を提供し続け、Anthropicはその資金をAmazonに流し込み、Amazonの黒字を支えるのだから。

Amazonがクリスマスを前に3万人を解雇するとは、メタクソ化の輝かしいマイルストーンだ。米国のK字回復により、消費のほぼすべてが富裕層に集中し、彼らは圧倒的にPrime会員だ。Prime会員のご家庭は価格比較をしない。なにしろ1年分の送料をすでに前払い済みだ。こうしたご家庭の買い物は、ほぼ必ずAmazonアプリで始まり、Amazonアプリで完結する。

Amazonが3万人を解雇し、物流ネットワークとeコマースシステムを崩壊させ、スパムや詐欺レビューに溺れるがままにし、配送期限を守れず返品対応を台無しにしたとしても、それは我々には問題となってもAmazonには問題ではない。Amazonの略奪的価格設定、ロックイン、度重なる企業買収によって他の選択肢がほとんど残されていない商取引の世界において、Amazonはまさに「大きすぎて気にしない」を地で行くことができる。

https://www.theguardian.com/technology/2025/oct/05/way-past-its-prime-how-did-amazon-get-so-rubbish

この羨ましいポジションに立つAmazonは、壮大なAIの嘘を売り込むために自社サービスをメタクソ化する余裕がある。3万人の雇用を奪うことなど、AIへの無謀な過剰投資の清算が数ヶ月先延ばしにでき、AIという詐欺をもう少しだけ延命させられるなら、安い代償にすぎない。

Pluralistic: When AI prophecy fails (29 Oct 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: October 29, 2025
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: AI