以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「Gemini is better than search because Google enshittified search」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

AI批判本を書くと、あらゆる人がAIにまつわる自分の罪を告白しにやってきて懺悔の相手役に仕立て上げられてしまう。私の周りの人々は、説明か赦免か断罪を求めて、後ろめたいAIの楽しみについて次々と打ち明けてくる。

https://us.macmillan.com/books/9780374621568/thereversecentaursguidetolifeafterai

たいていはこんな告白だ。「最近はもうGoogleのAI生成の検索要約しか使っていない。その下に並ぶ青いリンクはもうクリックしてない。要約を確かめるためにすら開かないんだ」。みな、その要約が「ハルシネーション」(つまり「欠陥」や「誤り」)だらけであることを知っている。だが要約が正しいことも十分に多いため、多くの人が実在の人間によって実在のインターネット上に作られた実在のウェブサイトを差し置いて、AI要約に頼りきるようになってしまった。

良くないことだと誰もがわかっている。GoogleのGemini AIが要約する対象であるウェブというものが存在するのは、Google――3度も有罪判決を受けた、市場シェア90%の検索独占企業――が人々をウェブサイトへ導いているからだ。ユーザがウェブサイトを訪れればサイトに収益が生まれ、それによって運営費が賄われる。最も一般的なのは「広告インプレッション」を生み出すことだが、購読契約を結んだり、推薦された商品を購入することで「アフィリエイト報酬」を発生させたりすることもある。

Googleが「答え」を刈り取ってページ最上部に表示してすべて奪い去るようになると、Googleとオープンウェブとのあいだの取り決めは崩壊する。Googleは要約したウェブサイトから価値の100%を吸い上げておきながら、その見返りに何も返さない。

Googleの創業理念からの著しい逆転である。かつてGoogleは、ユーザが自社サイトに費やす時間がいかに短いかによって、自らの成功を測っていた。Googleにとっての理想形は、ユーザが自社ページ(あるいはもっと良いのは、ブラウザの検索ボックスだけ)を訪れ、いくつか言葉を打ち込み、「10本の青いリンク」が返ってきて、その一番上が求める情報やリソースを見つけるための正しいリンクである、というものだった。Googleの存在意義はパイプであり、すべてのウェブページの関連性をすべてのウェブユーザに対して刻一刻と中立的に裁定する、信頼された仲介者として機能することにあった。

いまやGoogleの高邁なモットー「邪悪になるな[Don’t Be Evil]」を誰もが揶揄する。だが長年にわたり、同社の使命はそれよりもはるかに重要なものだった。「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスでき、使えるようにする」。これこそGoogle社員が同社の歴史の最初の20年ほどのあいだ従ってきた北極星だった……つまり、同社が市場を飽和させ、成長が頭打ちになるまでは。

かくしてGoogleは頭打ちになった検索収益に慌てはじめた。90%超という市場シェアの、逃れようのない帰結である。続いて起きた権力闘争は、技術的卓越性に忠実なGoogle社員たちと、検索を悪くすればこそ収益を増やせると提案する熱心なメタクソ化推進者たちを対立させた。何しろ、質問の答えを得るのに2回3回検索しなければならないようにすれば、2倍3倍の広告を見せられるのだから。

https://pluralistic.net/2024/04/24/naming-names/#prabhakar-raghavan邦訳

かつてGoogleは、いかに素早くユーザを自社サイトからオープンなインターネットへ送り出せるかで成功を測っていた。だが今日のGoogleは、ユーザを壁に囲まれた自社の庭に引き止めておく仕掛けだらけの粘着トラップと化した。

10年前、テック企業には主に3つのアプローチがあった。

I. Googleのやり方。何でも好きにやらせるが、やっている間じゅうスパイする。

II. Appleのやり方。できることを厳しくコントロールするが、プライベートにやらせて放っておく。

III. Facebookのやり方。あらゆる行動をコントロールし、頭のてっぺんからつま先までスパイする。

今日、テック企業はある種のカニ化を遂げつつある。あらゆる企業がFacebookという蟹に姿を変えつつあるのだ。監視は最大限、コントロールも最大限、という蟹に。

Appleは壁に囲まれた自らの庭に監視を植え付けた。

https://pluralistic.net/2022/11/14/luxury-surveillance/#liar-liar

一方Googleは、インターネット全域に及ぶ放し飼いの監視システムを、ユーザをできる限りオープンなインターネットから遠ざけようとする壁に囲まれた庭へと変えてしまった。

さて、Googleを弁護するならば、「オープンなインターネット」は最近どうにもひどい。オープンなインターネット上で何か有用な情報を探そうとすれば、半ダースものポップアップやポップアンダー、そして「ディックオーバー」に埋もれる羽目になる。

https://daringfireball.net/2026/05/what_is_a_dickover参考記事

それらをかき分けたあとでさえ、求める情報はAIの味気ない文章を5年も先取りしたようなワードサラダの中に埋もれている。2,500語にも及ぶ「初めて卵を食べたときのこと」というエセ・プルースト的回想の下に現れるオムレツのレシピを思い浮かべてほしい。

AI検索要約の大きな利点は、こうしたナンセンスすべてから読み手を守ってくれる点にある。だが、そもそもそのナンセンスはどこから来たのか。

おおよそGoogleのせいだ。

GoogleとFacebookはディスプレイ広告市場を独占し、広告主により多くを支払わせ、パブリッシャにより少なく支払われるよう入札を不正操作する違法な共謀を取り交わした。

https://en.wikipedia.org/wiki/Jedi_Blue

Google/Metaのデュオポリー[複占]はディスプレイ広告収益の51%を吸い上げる――広告仲介業者(バイヤー、ブローカー、代理店など)が歴史的に取ってきた取り分の実に3倍以上だ。ウェブパブリッシャの広告収益が急落するにつれ、ウェブページの「広告負荷」は増えていった。これが悪循環を生んだ。広告の数を増やせば読者の数は減り、その損失を埋め合わせようとパブリッシャは広告負荷をさらに増やすのだから。

これに対する強力な抑止力が広告ブロックだ。広告ブロッカーが存在する世界では、広告負荷を増やそうと考えるパブリッシャは、読者の広告過剰負荷を招いてしまう可能性に向き合わねばならない。一線を越えてしまえば、読者は一切の広告を見なくてすむ広告ブロッカーを導入してしまう。

https://www.eff.org/deeplinks/2019/07/adblocking-how-about-nah邦訳

Googleは10年前から広告ブロックを葬り去ろうと画策してきた。いまや自らの検索独占を強化するための支配的ウェブブラウザ、Chromeを用いてそれを実現する一歩手前まで来ている。

https://protonprivacy.substack.com/p/google-is-finally-killing-ublock

Googleはとうの昔にモバイル端末上での広告ブロッカーを葬り去った(アプリのリバースエンジニアリングは重罪であり、つまりアプリとは、それを使う間の自分のプライバシーを守ることを犯罪化するのにちょうどよい類の知的財産権で表面をくるんだだけのウェブページにすぎない)。Googleはウェブ上の広告ブロックを葬り去る理由の1つとして、これによってウェブはアプリと対等な土俵に立てる、という――底の底へと向かう競争を言い表すのにこれ以上ないほど奇妙な言い方である。

https://pluralistic.net/2026/06/12/compelled-speech/#quishing

おまけにこの10年、Googleは検索の優先順位に変更を加え続け、丹念に調査された信頼できるサイトよりも価値の低い粗製濫造サイトを優遇してきた。商品レビューを検索すれば、かつては信頼できたForbesのようなメディアではなく、役に立たないどころか危険ですらあるレビューで埋め尽くされた「サイトの評判の不正使用」の結果ばかりが表示される。そんなサイトが独立して運営される厳密な競合サイトよりもはるかに上位に表示されるのだ。

https://pluralistic.net/2024/05/03/keyword-swarming/#site-reputation-abuse

これはAI検索でいっそう悪化した。AI検索はスパムサイトを優先的に引用し、文脈を削ぎ落とした、きわめて自信ありげなレコメンドを吐き出す。質の低い割高な粗悪品を推し、良い製品のレコメンドを犠牲にするのだ。

https://pluralistic.net/2025/07/15/inhuman-gigapede/#coprophagic-ai

Googleに良し悪しを選り分ける能力がないわけではない。Kagi.comは月額10ドルの有料検索エンジンで、その結果はGoogleのものよりはるかに優れている。だがKagiは自前の検索インデックスを持っているわけではない。彼らはGoogleからインデックスへのアクセスを借り受け、そこに自分たち独自の(はるかに小規模で資金の乏しい)チームのアルゴリズムを採用して、クエリに対する結果をランク付けしている。言い換えれば、Googleは良い検索結果を届けることができるのに、そうしないことを選んでいるだけなのだ。

https://pluralistic.net/2024/04/04/teach-me-how-to-shruggie/#kagi邦訳

グレシャムの法則は「悪貨は良貨を駆逐する」と説く。これはテューダー朝の英国で起きた贋金危機に由来する。人々は贋金を他人に押しつけようと優先的に使い、その一方で良い貨幣は誰もが退蔵した。ほどなく、流通する貨幣のほぼすべてが偽物になってしまった。

質の高いコンテンツの順位を下げ、労力をかけないスパムを優遇することで、Googleはウェブ全域でグレシャムの法則を実演した。悪しきウェブページが良きウェブページを駆逐したのだ。さらに、そうしたウェブページの多くは商品のレコメンドが含まれており、それらは実在の製品の世界にまでグレシャムの法則を及ぼす。つまり、悪しき製品が良き製品を駆逐するのである。

これこそが、GeminiのAI要約が解決を謳う問題である。Googleはウェブで最も重要なゲートキーパーという立場にありながら、ウェブを広告で飾り立てられたゴミテキストと金目当ての粗製濫造サイトの肥溜めに作り変えてしまった。そしていまGoogleは、検索エンジンとパブリッシャとの共生関係というウェブの暗黙の約束を破り、これまでコンテンツを生み出してきたパブリッシャたちを一掃しようとしている。Googleは完全なる寄生体として、オープンウェブの最後の一滴まで絞り尽そうとしているのだ。

Pluralistic: Gemini is better than search because Google enshittified search (29 Jun 2026) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: June 29, 2026
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: AI