YouTubeユーザは、同プラットフォームの著作権侵害の申立への対応にますます不満を感じている。適法なビデオが、誤った申立を受けたり、場合によっては削除されているためだ。これらは、自動化が引き起こすミスであることもあれば、意図的な濫用の場合もある。もはや、YouTubeが「濫用的な」著作権者に対処すべき時がきたのだろう。
YouTubeの著作権侵害取締りは、フラストレーション増大の一員となっており、多くのクリエイターが行き過ぎた削除の取り組みに不満を訴えている。
こうした抗議の声は、この数ヶ月間にますます高まっている。しかし、この問題は決して今に始まったことではない。
我々がYouTubeのコンテンツIDシステムの問題をお伝えしたのは7年も前のことだ。それ以降、多くの問題が発覚してきた。
問題の大半は、YouTubeが問題のないはずのものにフラグをつけてしまう、行き過ぎたフラグ設定のためである。こうしたフィルタにより、たとえばランダム生成された音声や、小鳥のさえずりなどにもフラグが立てられる結果となっている。
今週も、50時間の雨音のビデオに、5人以上の別々の権利者からフラグが立てられていたことが明らかとなっている。確かに、ビデオの中の雨音はありがちなものに聞こえるが、それ自体はユニークであるはずである。
いくつかの問題は予想どおりではあるのだが、事態はますます悪化の一途をたどっている。この数日間だけでも、YouTubeの著作権問題の新たな事例が数十件報告されている。その多くがクリエイター自身から報告されたものだ。
先週、人気ミュージシャンのTheFatRatは、「何者か」が彼の曲の権利を主張し、広告収入をその何者かにかすめ取られていたことを知った。数百万のビュー数を持つ楽曲だけに、些細な問題ではない。
YouTubeでは、「異議申し立て」の提出をユーザに認めている。もちろん、TheFatRatもそうした。しかし、請求者はそれを拒絶した。TheFatRatはその主張にさらに異議を申し立てることもできたが、YouTubeは、そうすれば1ストライクのリスクを侵すことになると警告した。たとえそれが失敗としたとしても、別の異議申し立ての選択肢がある。DMCAの手続きを利用するのだ。
コンテンツIDの申し立てに異議申し立てがあった場合、請求者は通常の削除要請を提出しなくてはならない。これによって1ストライクとなる。このYouTubeアカウント所有者は反論を提出することができ、請求者が2週間以内に訴訟を起こさなかった場合、ビデオは最終的に復旧することになる。
しかし控えめにいっても、かなり面倒な手続きだ。
さらに厄介なのは、YouTubeが虚偽の請求者を「著作権者」としていることだ。同様の虚偽申立は、先週、ダン・ブルの身にもふりかかった。
こうした問題が、何に起因しているかは不明だ。TheFatRatの件では、彼の楽曲がアンドレス・ガルヴィスのトラックを侵害しているのだという。しかし、アンドレス・ガルヴィスは、YouTubeが請求者として挙げているPower Records LLCもRamjetsも知らないという。
実に奇妙な話であるが、現実はさらに奇妙である。11月、ユーチューバーのドリュー・グッデンは著作権侵害の申立を受けとった。……ドリュー・グッデンから。
YouTubeの著作権ポリシーを悪用して、他人の動画の虚偽のクレームを入れ、収益をかすめ取ろうとする輩が存在することは想像に難くない。少なくとも、こうした事例は、YouTubeの著作権侵害申立プロセスが混沌としていることを示している。これは適法なユーザを著しく害する可能性がある。
こうした不満を、ユーチューバーのガス・ジョンソンがうまく説明してくれている。
彼はこうした誤った申立のすべてが自動認識によるものではなく、不正確な『手動』の申し立ても数多く存在することを明らかにしている。たとえビデオ内で楽曲が使用されていないとしても、アーティストや曲名を言及しただけで、申し立てが行われる可能性があるというのだ。
Techdirtが指摘するように、このような混乱はEUの第13条に取って好ましからざるものである。しかも、対応するためにさらなるフィルターを必要とする可能性もある。とはいえ、YouTubeではすでに問題は暴走している。
間違いや虚偽の申し立てを日々指摘し続けることは簡単だが、もうそんなフェーズはとっくに通り越している。今こそ変化のときを迎えているのだろう。
カナダの著作権改革に関する公聴会で、自由党のデイヴィッド・グラハム議員は、YouTubeが現在「無罪の証明が出るまでは有罪」のシステムを運用していると喝破した。YouTubeの担当者はこの主張に反論しなかったが、このポリシーの撤回については言及しなかった。
クリエイターは「有罪が証明されるまでは無罪」ということを歓迎するだろうが、著作権者がそれを認めることはないだろう。
TorrentFreakは、長らくYouTubeのシステムを批判し続けてきた電子フロンティア財団(EFF)に話を聞いた。EFF法務ディレクターのコリーヌ・マクシェリーによれば、著作権ストライクはとくに問題であるという。
こうした「ストライク」を受けると、チャンネルのオーナーは3回のクレームでその生活を失う危険性があるという。こうしたストライクは、コンテンツIDフラグを介してではなく、直接の著作権削除請求があった場合にのみ適用されるのだが、それでも大きな懸念であることに違いはない。
コンテンツIDシステムを繰り返し悪用している著作権者にも、同様にペナルティが課せられることがある。
「YouTubeは、コンテンツIDを悪用する権利者を積極的に特定し、排除することで、著作権侵害申立の扱いを改善することができます」とマクシェリーはいう。
さらに、YouTubeは善良なるユーザのチャンネルを守らなくてはならない。
すでにGoogleは、検索の削除要請について、侵害のないドメイン名のホワイトリスト作成に着手しているようだ。YouTubeでも、チャンネルに同様の措置を講じることができるはずで、そうすれば行き過ぎた削除請求からそうしたチャンネルを保護できる。
大手の著作権者がより厳格な措置を求める一方で、ユーチューバーたちはその状況に不満をいだいており、YouTubeが苦しい板挟みになっていることは明らかだ。少なくとも、同社は悪用を特定し、防止するためにポリシーやシステムの見直しが必要とされている。
YouTubeチームは今月はじめ、この問題について調査を実施することを明らかにしたが、現在のところ、目立って改善しているとは思えない。
TheFatRatにとって、最近の問題は、動き出す決定打になったようだ。彼は昨日、YouTubeの著作権保護システムの改善を求める嘆願書を発表した。すでに22000人がこれに署名している。
YouTube’s Copyright Protection System is a Total Mess, Can it Be Fixed? – TorrentFreak
Publication Date: December 22, 2018
Translation: heatwave_p2p