ネット上での写真の無断使用に写真家たちが怒りの声を上げている。これまで我慢に我慢を重ねてきた彼らも、ついに堪忍袋の緒が切れて使用料の請求や、訴訟を起こすにまで至っている。こうした動きがさらに活発化すれば、安易な無断使用は次第に減っていくだろう。

だが、それまで無断使用していた人たちが写真家に許諾をとって写真を使うようになるか、というとそうはならないだろう。結局、手間やお金がかかるようになれば、単に使わなくなる。それではあまりにも寂しすぎる。

考えうる1つの解決策は、「勝手に使ってほしくない写真家の写真」ではなく、「勝手に使って欲しいと願う写真家の写真」を使うということだ。世界には自由に使用できる写真が無数に存在している。クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCL)などの緩やかな使用条件のついた写真、CC0のような使用にあたっての条件を設定していない写真、すでに著作権の保護期間が終了したパブリックドメイン(PD)の写真、そういったものを積極的に使っていけばいいのだ。

では、そうした写真をどうやって探せばいいのか――

というのが前回のあらすじ。そこで今回は実践編、具体的な「探し方」を紹介したい。やはりちょっとした探し方のコツを知れば、用途にマッチした写真を簡単に探せるようになるだろうし、そうすれば安易な無断使用も減るだろう。

そのためにCCLやCC0、PDの写真を扱うサイトやサービスを紹介したいのだが、その多くに共通する注意点を2つほど。1つは「検索」が必要になるということ。つまり欲しい写真を見つけ出すための検索ワードを捻り出すセンスが問われる。現時点ではどうしても言葉で探すしかなく、具体的、抽象的、あるいは類似の言葉を駆使して探すことになる。もう1つは「CCL」の写真を扱うサイトが多いということ。CC0やPDは基本的には自由に使えるのだが、CCLはいくつかの条件が設定されている。はじめはとっつきづらいかもしれないが、自分の用途を考えてみて、どの制限がついているものは使えないかを理解すれば、必然的にどのライセンスのものを探せばいいかはわかるはず。

Image: creativecommons.jp (CC BY 2.1)

この2つは少し慣れが必要だが、一旦慣れてしまえばそうそう考える必要もない。それに前者は無断使用であれ必要になるスキルで、後者はどうしてもわからなければCC0(やそれに類するライセンス)の写真、PDの写真から探せばいい。

ということで、CCL、CC0、PDの写真を探せるサービスやサイトを紹介しよう。

Google画像検索

CCL、CC0、PDの写真を一番手っ取り早く、広範囲に検索できるツールは、おそらくGoogle画像検索だろう。

Googleの検索ウィンドウに検索ワードを入力し、画像を選択。右側のツールボタンを押し、表示された「ライセンス▼」のプルダウンメニューから検索したい画像のライセンスを選択すれば、該当するライセンスのフィルターがかけられる。選択したライセンスによるが、検索結果に表示されるのは、CC0やCCL、パブリックドメインの写真・画像だ。

具体的にどのようなライセンスで提供されているのかは、実際にサイトにアクセスして確認する必要があるが、写真家本人に個別に許諾を得るのに比べれば、遥かに楽。

後述するサービスと比較すると、特定の人物や事件、製品の写真を探す際に最も役立っている(後述するサイト、サービスの作品も引っかかるし)。

Flickr

Flickrは長い歴史を持つ写真家コミュニティだが、同時に世界最大のCC写真ライブラリでもある。私自身、もっともお世話になっているのがここ。多くはすべての権利が留保されているAll Rights Reservedの写真だが、投稿時に作品のライセンス(CCL)を選択できるオプションがあるため、多くの写真家が共有可能なライセンスで写真を提供している。その数、4億枚を越えるという。CCLの写真を探すならまずはFlickrに行け、っていうくらい充実してる。

Flickrの写真検索にもライセンス・フィルターがオプションとしてあり、使用条件にあったライセンスを選択すれば、該当する作品のみが表示される。

また、CCLごとの写真ライブラリもあり、ライセンスを指定した検索も可能。

Wikipedia / Wikimedia

WikipediaWikimedia Commons)に投稿されている写真の大半は、CCL、CC0、PD(フェアユースとして投稿されているものもあるので少し注意が必要)なので、ライセンスの条件さえクリアできれば誰にでも利用できる。Wikipediaにはさまざまな項目に関連した写真・画像が掲載されているので、お目当ての写真を見つける糸口にもなるだろう。

たとえば、Wikipediaの「青空」の項にある写真をクリックすると、下の画像のような概要ページが表示される。

さらに「詳細」ボタンを押すと、画像が保存されているWikimedia Commonsのページで、作成者やライセンスに関する情報が表示される。

Wikimedia Commonsには5000万点を越える資料・史料が保存されているので、ここで探してみるのもいいだろう。

Unsplash

Unsplashは、CC0に類似したライセンスで写真を公開する写真家コミュニティ。写真家がUnsplashに投稿する写真は、使用料なし、クレジット表示なし、商用利用可、改変可という、基本的にどんな利用でも許諾するライセンスで提供されている。

ここはかつてCC0を採用していたのだが、Unsplashの写真を第三者がフォトストックに投稿したり、フォト・アグリゲーションサービスがクレジットを消して再配布したり、ということが目立ってきたため、現在はフォトストックや類似サービスでの再配布を禁止するオリジナルライセンスのもとで提供されている。自分のコンテンツの素材としての写真の使用が制約されているわけではないので、基本的にはCC0と同じように使用できる。

写真家コミュニティだけあって、投稿される写真はクオリティが非常に高く、それぞれの写真家の個性が出ている(投稿ガイドラインはこちら)。投稿されている作品数も多く、見ているだけでも楽しい。

Pexels

PexelsもUnsplashと同様の写真家コミュニティで、同様の理由からCC0から独自ライセンスに移行している。こちらも再配布などを除けば自由に使用できる。

ぱくたそ

ぱくたそは国内のフリーフォトストックで、UnsplashやPexelsと同様の非常にゆるいライセンスで写真素材を提供している。「写真素材サイト」を名乗るだけあり、かなり実用的な写真を揃えているという印象を受ける。上記のサイトに比べ、やはり日本人モデルが被写体になっている写真があるのが強み。

Pixabay

PixabayはCC0画像投稿コミュニティで、ここに投稿された写真や画像はCC0で提供されているので、使用料なし、クレジット表示なしで、商用利用も改変も可能だ。

ただ、ユーザが投稿している写真の出所が怪しいなと感じることもある。テイストのまったく異なる写真や画像を数千枚、数万枚とアップロードしているユーザもいて、おそらくこの人物が作成したものではなさそうだと、いささか不安を覚えることもあった。その多くは、どこかで見つけたCC0やパブリックドメイン、再配布可能な写真や画像をアップロードしたものなのだろうが、All Rights Reservedなものも含まれている可能性もありそうだ。

Pixabayでは、アカウント作成時にもすべてのユーザに5枚の写真を投稿することが要求されるので、その際にも適切でない写真が紛れ込む恐れがある。よく紹介されているのでここでも取り上げたが、個人的には積極的にはおすすめできない。

Visual Hunt

Visual Huntは、CC0サイトやFlickrなどに投稿された再利用が許諾された写真・画像を検索できるメタ検索エンジン。ここで検索した見つかったものを、本家のサイトで入手するといった感じ。検索オプションを利用してライセンスを絞り込んだり、色味などを指定して検索することもできる。

ただCC0のコンテンツに関してはVisual Huntが直接提供する形をとっている。おそらくは外部のCC0サイトから収集したもので、ライセンス上問題があるわけではないのだが、そういうふるまいもあって、UnsplashやPexelsの独自ライセンスへの移行が促されたのだろう。

便利だけど、お行儀のよい印象はないというサイト。

Getty Images </>EMBED

個人的信条からすればあまり紹介はしたくないのだが、人によってはとても便利なツールだと思うので、思い切って紹介したいのがGetty Imagesの</>EMBED

Getty Imagesは商用のフォトストックなのだが、無料で使用できるオプションも提供している。Getty Imagesのライブラリの中には、</>のボタンが付いているものがあり、その写真は外部のサイトにエンベッド(埋め込み)表示できる。大手のフォトストックということもあり、特定の人物や事件、製品の写真が必要なときに役立つだろう。ただし、商用は不可

Embed from Getty Images

すべての写真を使用できるわけではないし、商用不可、エンベッドというかたちではあるが、豊富なカタログのなかから多数の写真を使用できる点は評価されてよいだろう。とはいえ、このサービスはGetty Imagesに大きく依存しているために、同社が写真の提供を終了したり、サービスの提供を打ち切ったりすれば、当然表示されなくなる。

パブリックデジタルライブラリ

近年、世界各地の博物館・美術館・図書館のデジタルライブラリもかなり充実しており、多数のPD作品が公開されている。写真自体が時代が新しいためそんなにはないのだが、絵画や印刷物なんかを探すのにはいいだろう。数が多いのですべてを紹介するのは難しいのだが、いくつか気の利いた役立ちそうなコレクションを紹介したい。

Europeana

Europeanaでは欧州各地のデジタルアーカイブを一括検索できる。著作権の切れていない作品も多数保存・公開しているが、再利用の素材を探す場合は、検索オプションの「CAN I USE IT?」から「Free Re-use」か「Limited Re-use」のフィルターを選択して検索するといい。

作品ページには再使用の可否、CCであればその条件が表示されているので非常に便利。

Metropolitan Museum

メトロポリタン美術館のコレクション検索にも「Open Access」オプションがあり、パブリックドメイン作品を探しやすい。

New York Public Library

ニューヨーク公共図書館のデジタルコレクションでも、700万点の資料からパブリックドメイン作品を検索できる。検索欄にフォーカスすると、「Search only public domain materials」というオプションが出てくるので、それをオンにして検索すればいい。実に気が利いている。

国立国会図書館

国立国会図書館のデジタル・コレクションも、パブリックドメイン作品を多数公開している。古い雑誌の記事などを探したりするにはとても重宝しているのだが、上記のデジタルコレクションに比べると、写真やが画像を探すのにはそれほど向いていない気もする。詳細検索の「古書籍資料」の錦絵・絵図のチェックボックスをオンにして探すと江戸時代以前の作品が結構ひっかかる。

その他

他にも米議会図書館の「Free to Use and Reuse Sets」や、パブリックドメインのポスターを集めたPDPOSTER、パブリックドメインのヴィンテージ画像を集めたReusable Artのように、PD作品を集約するページやサイトもある。

また、1966年以前に逝去した作家の作品であれば、すでにパブリックドメインなので、上記以外の美術館・博物館・図書館などのデジタルライブラリを眺めるのもいいだろう。個人的にはグッゲンハイム美術館フランス国立図書館なんかを眺めたりしているが、他にもたくさんあると思うので、ここがオススメ!なんてとこがあればぜひ教えて欲しい(別に再利用可能な作品が見つけやすいだけじゃなく、単純に見ていて楽しいとかそういうのでもよいので)。

Twitter / Instagram

Getty Imagesと同様、正確には再利用可能ではないのだが、TwitterやInstagramにパブリックに投稿された画像は、外部のサイトやブログにエンベッド可能だ。

パブリックな投稿は誰であれサービスの外部にエンベッド表示できるというのは、サービスの設計上そうなっているのだし、それに合意した上で各ユーザが利用しているはずではあるのだが、第三者によるエンベッドを無断転載のごとく毛嫌いする人もいるので、その点は注意が必要かもしれない。個人的には、エンベッド機能も含めて各サービスのエコシステムであると考えているので、それが嫌ならサービスの利用をやめるか、改善を要求するか、エンベッド表示されても構わない範囲で利用するしかない。嫌味で言ってるんではなく、どうしても許せない要素があるサービスを嫌々使い続けるのはよろしくないし、本来自由であるものをマナーで制限しようとしても無理が生じるのは避けられない。

そうは言っても嫌だと思う人はいるし、現状の利用規約への合意の取り方が果たして本当に合意といえるのかという問題もあるので、タイトルにある「写真家に怒られない」という範疇には入らないかもしれない。このことを踏まえた上で、エンベッド機能を利用するかどうかはそれぞれに考えてみて欲しい。私は使うけどね。

いかがでしたか?

ということで、今回は私がブログで使用する写真をどう探しているか、を中心に、いくつかのサイトを紹介した。実際に試してみて、手触りの良いものをいくつかブックマークして大いに活用してほしい。もちろん、これがすべてではない。もしあなたが今回紹介したのとは別のやり方で、自由に使用できる写真を見つけているのであれば、ぜひ教えて欲しい。

なお、タイトルの「写真家に怒られない」は、無断使用に腹を立てている写真家を揶揄したものではない。前回の記事でも書いたが、写真家が無断使用を訴えるのは正当な権利行使であり、決して否定されるべきものではない。むしろ写真家の怒りを知って、無断使用について考えだした人に届くよう意図したタイトルである。

Header Image: 隔壁光头老王