TorrentFreak

映画『ダラス・バイヤーズ・クラブ』の海賊版をダウンロードしたとして提訴されているTor出口ノード運営者が、当面の危機を脱した。米地裁のマイケル・サイモン判事は、この男性が故意に著作権を侵害したとする下級判事の勧告を採用しないことを決定した。つまり、被告に勝訴の可能性はまだ残されているということだ。

Torは匿名化ツールである。そのリレーポイントや出口ポイントの運営は、基本的に数百、数千のユーザのトラフィックがそのIPアドレスからインターネットに接続されることを意味している。

海賊版ユーザがTorを使用した場合、そのトラフィックは出口ノードから接続しているように見えることになり、そのことが法的責任問題を引き起こすこともある――オレゴン州に住むジョン・ハサール氏の身に降り掛かったように。

2015年、インターネット上の海賊ユーザを積極的に追及していることで知られる映画『ダラス・バイヤー・クラブ』の制作会社は、IPアドレス「173.11 .241」を連邦裁判所に提訴した。

数カ月後、この訴状は修正され、被告が「Integrity Computer Services」に書き換えられた。その手続きの一環として、制作会社は被告に対し、複数の陳述に回答するよう認否要求(RFA:request for admissions)していた。

しかし、この要求に回答はなかった。一般に、回答がない場合、裁判所は陳述を事実であると仮定する。今回のケースで言えば、ハサール氏がダラス・バイヤー・クラブの海賊版の違法な配信を認めたということになり、それによって、高額な金銭的要求への道が開かれることになった。

制作会社は、ジョン・ハサール氏がその後の手続きで、違法ダウンロードを繰り返し否定したとしても、本件とは無関係であるという。

これを受けて、ダラス・バイヤー・クラブ側は略式判決の手続きを進め、ハサール氏が故意に著作権侵害を行ったことを確認するよう裁判所に求めた。

この問題は今年はじめ、ジョン・アコスタ判事に持ち込まれた。アコスタ判事は、報告書と勧告のなかで、制作会社側の主張を支持した。

「本法廷は、フザール氏が訴状の嫌疑を否定せず、また認否要求に回答しなかったという事実により、ハザール氏がダラス側の著作物を故意に侵害したことを明確に立証されるものであると判断する」とアコスタ判事は記している。

通常、地方裁判事はこうした勧告を受け入れており、そうなればハザール氏は数千ドルもの損害賠償責任を負わされる可能性も出てくる。

しかし今週、これまで見落とされてきた問題が取り上げられ、ハザール氏に有利な判断が示された。

米連邦地裁のマイケル・サイモン判事は、被告側が指摘する異議申し立てを再審査した。2016年に認否要求が出された時、フザール氏は被告として指定されていなかったのだ。

当時、訴状では同氏の会社であるIntegrity Computer Servicesが被告として挙げられていた。この訴状は数カ月後に修正され、その際に被告がハザール氏に書き換えられた。つまり、本件の認否要求(RFA)はハザール氏に直接宛てられたものではなかったことを意味する。

「当時の本件の被告は『Integrity Computer Services』だけであり、第一次修正訴状に記載されている被告はこれのみである」とサイモン判事は記している。

「それゆえ、ハザール氏は2016年4月13日のRFAを受け取った当事者ではなかった。したがって、本件請求において求められている事実は、ハザール氏が回答しなかったことによって認めることはできない。かかる事実を認めた裁判所の命令は撤回する」

そして、同法廷は報告書と勧告の不採用を決定した。

当初、被告側はこの手続き上の問題を見落としていた。これはハザール氏が当初、本人訴訟で裁判に臨んだためであろうが、この見落としが今のところ彼を救ったといえるだろう。

「『本人訴訟』であるがゆえに、見落としてしまった技術的問題でした。しかし、下級判事の決定からも明らかなように、RFAは事件に重要な影響を与えるものです。私たちはこの間違いを地裁に訴え、そして私たちに有利な判決につながりました」と被告側のJ・カーティス・エドモンソン弁護士はTorrentFreakに語った。

ハザール氏は認否要求に基づく故意の著作権侵害の判決は免れたが、訴訟自体が終結したわけではない。略式判決の申立ては、本案について検討するためにアコスタ判事に差し戻された。

一方、ハザール氏は、非侵害に関する反対略式命令申立てを検討しているという。ハザール氏は特に、今回の訴訟で用いられた証拠収集ソフトウェアには欠陥があり、信頼性が低いと主張している。

両者は現在、追加的訴答を提出できる。フザール氏は最終的に、自身が無実であることを証明し、裁判費用を請求する考えだ。一方、制作会社側は、Tor出口ノード運営者が有罪であることを証明し、損害賠償を求める構えを崩していない。

連邦地方裁判所のマイケル・サイモン判事の命令の写しはこちらから(pdf)

Tor Exit Node Operator Dodges Bullet in Piracy Lawsuit – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 11, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Thomas Le

この件はさておき、BitTorrentダウンロードを匿名化したいのであれば、それを許容するVPNを利用しよう。