3月はオンライン・ジャーナリズムにとって厳しい1ヶ月だった。ニューヨークの連邦裁判所は賢明とは言えない、ジャーナリズムへの法的保護を切り崩す2つの著作権判決を下した。
1つ目は、Goldman v Breitbartらの事件だ。ニューヨーク州連邦裁判所は、これまでの判例を覆し、ウェブページにツイートを埋め込み表示しただけで著作権侵害にあたりうるとの判断を示した(pdf)。さらにひどいのは、この裁定の論理はツイートの埋め込みだけでなく、あらゆるインラインリンクに適用されうる点だ。
この事件は、ボストン・セルティックがバスケットボール選手ケビン・デュラントを獲得しようとしているという噂が流れるなか、フットボール選手トム・ブラディの写真が拡散(viral)したことが発端となっている。写真家のゴールドマン氏がSnapchatに投稿したこの写真は、すぐさまRedditやTwitterに転載された。その後、この噂を報じるさまざまなニュースメディアの記事に写真を含む埋め込みツイートが掲載された。ゴールドマン氏はこの写真の拡散を明示的に許可していたわけではなく、不満を覚えた。
この時点で、ゴールドマン氏にはいくつかの選択肢があった。もっとも簡単なのは、元の写真をTwitterから削除するためにDMCA削除の申立をすることだった。そうすれば、埋め込み表示された写真も表示されくなる。もう1つは、自らの写真を表示するTwitterを著作権侵害で訴えることだが、この場合、TwitterはDMCAセーフハーバーで守られており、裁判で勝利することは難しい。しかし、ゴールドマン氏は第三の、より利益が得られそうなアプローチを選択した。この話題を報じた報道機関を訴えることだ。
ゴールドマン氏は多くの著作権弁護士からこのアプローチはおすすめできないと告げられただろう。というのも、法廷はこれまで、著作権侵害の責任はリンクを張る者ではなく、侵害コンテンツを蔵置する主体にあるとしてきた。つまり本件では、ツイートを埋め込んだメディアのウェブサイトではなく、Twitterが主体となる。往々にして、リンクを張る側は、ブラウザがサーバにアクセスした際に提供されるコンテンツが著作権侵害かどうかを知らず、その完全な制御を有するわけでもない。この「サーバテスト」は、もともと2007年に第9巡回区控訴裁判所で争われたPerfect 10 v. Amazon事件の判決に由来し、明瞭かつわかりやすいルールを提供している。現代インターネットの基盤ともいえるルールだ。
驚くべきことに、ゴールドマン氏は賭けに勝った。キャサリン・フォレスト裁判官は、埋め込みに対する驚くべきアプローチによって、第9巡回区控訴裁のサーバテストを否定した。その意見には、数百万人のインターネットユーザが当たり前のように行っているツイートや画像の簡単な埋め込み作業が、「プログラマ」が行うような高度な技術を必要とする処理として記述されている。このプロセスにより、コンテンツを蔵置するサーバではなく、リンクするウェブサイトが主体となるとの結論を導き出している。つまり、リンクした画像が著作権を侵害していた場合、その直接責任を負うことになる。もしこの判断がほかの裁判所でも採用されれば、一般のインターネットユーザはもちろんのこと、すべてのオンライン・ジャーナリストたちが、著作権侵害の恐怖に脅かされることになってしまう。
良いニュース:昨日、フォレスト裁判官はこの判決の潜在的な影響を認識し、即時抗告を認めた。
悪いニュース:控訴審は第二巡回区控訴裁判所で行われる。第二巡回区控訴裁は先日、オンラインジャーナリズムの友人ではないことが証明された。
公共性から目を背けた控訴裁のTVEyes判決
最近、第二巡回区控訴審は、Fox Newsがテレビ・ラジオ番組のテキスト検索可能なデータベースを提供する企業TVEyesを訴えた事件を扱った。TVEyesはジャーナリストや学者、政治家の研究や、国内メディアの監視のために利用されているサービスだが、Fox Newsは同社番組の著作権を侵害していると主張した。地裁は一部はフェアユースに該当するが、一部は該当しないとの判決を下した。
控訴審では、TVEyesのサービスは、少なくとも3つの根本的な誤りによってフェアユースには該当しないとの判断がなされた。
第一に、控訴裁は、TVEyesのビジネスモデルの成功は、そのようなサービスの市場が存在していることを示しており、Foxも「当然に市場開拓が可能であった」として、フェアユースの適用に不利に働くとした。この種の循環論法は、しばしば著作権者から主張されてきたが、これまではほぼ否定されてきた。どんなフェアユースであれ、潜在的な市場は存在する。TVEyesもまさにそれに該当するのだが、控訴裁は、フェアユースの権利を主張するのではなく、ライセンス料を支払えと判断したのである。
この論法が有効なのであれば、ジャーナリズムやオンライン情報へのアクセスを支える多様な商業的フェアユースが失われることになる。法廷がこの論法を採用した場合、とくに厄介なのは、TVEyesがアーカイブするクリップの多くがFoxのライセンスなしには提供できなくなり、これまでTVEyesが可能にしてきた批判的批評をFoxのライセンス契約で制限することができてしまうということだ。
第二に、控訴裁は本件著作物の事実の性質を軽視している。最高裁がHathiTrust事件において、フェアユースは「フィクション作品やファンタジー作品よりも、事実に関する作品が頒布される必要性が一層高いことが認められる」と是認した判決とは真逆である。事実に関する(少なくとも事実の主張を形成する)作品を広め、分析することは、知る権利にとって必要不可欠である。著作権法は伝統的にこの認識に則ってきた。
最後に、控訴裁は「その使用が著作権の趣旨に適うか」という最も重要な問題を軽んじている。最高裁が示したように、著作権は「知識の収穫を増やし、妨げることのないよう意図されている」。TVEyesの事件はフェアユースの典型事例であり、「知識の収穫」を増やす健全な国民的議論の土壌を築くものである。TVEyesのシステムは、Foxのような報道機関が、重大な出来事をどのように切り取り、記述しているかという事実の発見、収集、報告を可能にする。Foxが現米大統領の熱心な視聴者層を抱えていることを考えれば、どう伝えているかという点は非常に重要だ。
ニューヨーク州の裁判所には、オンライン・ジャーナリズムやメディア批評を支持する強力な判例を破壊しないよう願う。メディア批評家や変形的作品のためのNPOや共に スタンフォード大学ロースクールのユエルスゴーア知的財産・イノベーションクリニックが提出した法廷助言書のなかで、EFFは法律を正しく適用する方法と、この問題を正しく理解することの重要性について説明した。
Copyright and Online Journalism: What’s Going On In New York? | Electronic Frontier Foundation
Publication Date: March 28, 2018
Translation: heatwave_p2p