実にふざけた話である。

軽減税率:有害図書、出版業界で線引きを 菅官房長官 – 毎日新聞

要するに、出版物に軽減税率を適用させるなら、「有害図書」を対象から外すということである。ただし、政府が「有害図書」を決めると検閲にあたるから、出版業界自らが生け贄を差し出せと。

菅義偉官房長官は、「出版界が自主規制し、例えば議員立法という形で、国民から見てなるほどという線引きが必要だ」と発言しているが、立法に反映することを前提として求められる「自主」規制とは何なのか。そんなものはただの責任のアウトソーシングであって、本来追うべき責任を回避せんとする目眩ましにすぎない。

そもそも「有害図書」などという言葉自体、実にレッテルに満ちたものなのだ。あくまでも「青少年の健全な育成に有害な(影響があるという社会共通の認識がある)図書」である。世間では天動説を信じられているからそうなのだというレベルの脆弱な根拠にもとづいているにすぎない。それならばせめてゾーニングのためにだけにとどめておくべきである(それでも、青少年の「知る権利」を制限していることには変わりはない)。

出版業界には、軽減税率欲しさに表現の自由を売り渡たすような情けないことはせず、意地を見せてほしいものである。「有害図書」も含めた一律の適用を求めるか、それでは認められないというのであれば、軽減税率を叩き返すくらいの心意気を見せるべきであろう。

また、新聞業界も自らが軽減税率を手に入れたからそれでいいという態度ではいけない。自らが拠って立つ表現の自由が侵されようとしているのである。自分たちは軽減税率を認めてもらえたから声を上げにくいというのであれば、それはすでに政府に表現の自由を売り渡したということである。

もちろん、このようなことを言い出した当の本人たちには、介入の意図などはないのかもしれない。

出版物に対する軽減税率を入れるにしてもポルノのような不道徳な表現が入ることは許されない、という公明党の考えに基づくものであろうが、そもそもそれが介入であることに気づいてはいないのだろう。自民党はもう少ししっかりしろやクソが。

Header Image: Newtown grafitti / CC BY