以下の文章は、TorrentFreakの「Will Cloudflare Kicking 8chan Undermine Pirate Sites?」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreakCDN企業のCloudflareは、先週末テキサス州エルパソで発生した銃乱射事件を受けて、犯行声明が公表されたとされるプラットフォーム「8chan」へのサービス提供を停止した。Cloudflare最高経営責任者のマシュー・プリンスは声明の中で、今回のサービス停止の主な理由として「無法な」という言葉を挙げた。同社の顧客である「海賊版」サイトの活動を表現するためにしばしば用いられている言葉だ。

米国では銃撃事件が頻発し、無辜の犠牲者の命が奪われている。

当局はこの悲劇を分析し、何が犯人をこのような凶行に駆り立てたのかを解明しようとしている。と同時に、その邪悪なメッセージがどのように拡散しているのかにも注目が集まっている。必然的に、インターネットがその責任の一端を担わされている。

一般にサービスプロバイダはユーザや顧客の行動に責任をとることには消極的だ。だが、本日早朝、CDN企業のCloudflareは、銃撃犯が声明を投稿したとされる「ヘイトの掃き溜め」掲示板こと「8chan」へのサービス提供の停止を発表した。

マシュー・プリンスCEOは声明で「8chanはCloudflareのサービスを利用する1900万以上のインターネット企業の1つです。太平洋時間深夜、当社は8chanを顧客として扱うことをやめました」と述べている

「その理由は明白です。彼らは自ら無法であることを証明し、その無法さによって多数の悲劇的な死を引き起こしました。8chanは憎悪に満ちたコミュニティをモデレートすることを拒否しました。たとえそれが法令に違反していなかったとしても、その精神に反する狂乱の環境を作り上げたのです」

多くの報道が犯人の人間的側面に注目するのだろうが、我々はこれまでどおり、Cloudflareと著作権侵害との関わりに焦点を当ててお伝えしたい。

Cloudflareは著作権侵害者ではなく、常に法の範囲内で活動している。しかし、もし8chanが法の「精神」に反した罪によりサービス停止に至ったのであれば、その事実を著作権団体が密かに歓迎していたとしてもなんら驚きはない。

Cloudflareの「海賊版」顧客として最も知られているのはおそらくパイレート・ベイだ。法律(具体的には著作権法)違反を目的としたサイトの顕著な例である。

しかし、このサイトをCloudflareから追放するための対策はいまのところ何も講じられていない。直感に反するかもしれないが、Cloudflare側からすれば、同社は(訳註:パイレート・ベイにサービスを提供したところで)いかなる法律にも違反していないのである。Cloudflareを同じように利用する数百から数千の「海賊版」プラットフォームについても、同社は同様に主張するだろう。

先週末の事件と、映画やテレビ番組、音楽共有とを比較するのはあまり気が進まないが、これまで著作権者たちは何のためらいもなくそうした事件を利用してきた。

たとえばALS ScanがCloudflareを提訴した裁判では、同社は裁判所に対し、Cloudflareが以前にDaily Stormerへのサービス提供を停止したが、海賊版サイトの顧客には同様の対処を行なってはいないと指摘した。Cloudflareはこの議論が法廷に持ち込まれるのを回避しようとしたものの、その主張は判事から却下された。

最終的に、CloudflareはALS Scanとの和解に合意した。つまり、Daily Stormerの追放という見地からの寄与侵害の主張に陪審の審判は下されなかったということだ。しかしそれから1年が経ち、8chanもほぼ同様の状況でCloudflareを追放された。

マシュー・プリンスCEOは今朝のメッセージで、Cloudflareが顧客よりも保守的なポリシーを優先すれば、顧客が自らの望むような管理・運営できなくなる可能性があることを認めている。だからこそ同社は黙認せざるを得ないこともあるのだという。

「我々は、非難に値するコンテンツを嫌々ながら許容してきましたが、このような惨劇をたびたび引き起こし、意図的に無法状態を作り出すプラットフォームには線引きをしなくてはなりません。8chanはその一線を越えてしまった。したがって、もはや彼らが我々のサービスを利用することは許されません」とプリンスCEOは言う。

著作権者は繰り返し、海賊版サイトを「無法な」サイトだと主張してきたが、無辜の人々に対する凶行を引き起こしたり、誘発したりはしていない。

とはいえ、法の「精神」に違反したがゆえに追放するというCloudflareの判断は、たとえそれが本当に正しいものであるにせよ、最終的に再びCloudflareの首を絞めることになるだろう。どんな企業であれ、殺人に狂喜乱舞するような人たちとは関わり合いたくはない。だが、著作権者がCloudflareとその顧客に対する訴訟を有利にすすめるべく、この一件を取り上げることになるのは時間の問題でしかない。

一度起こったことは、また再び起こることのだろう。

Will Cloudflare Kicking 8chan Undermine Pirate Sites? – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: August 05, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Jamie Kern