以下の文章は、電子フロンティア財団の「On International Day to End Violence Against Sex Workers, We Must Look Closely at the Results of FOSTA」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

本日は「セックスワーカーへの暴力を終わらせる国際デー」だ。2019年は、議会がインターネット検閲法の「SESTA/FOSTA」を可決してから2年目に当たる。EFFはこの法案が議論されていた当時から、法律の曖昧な表現や厳しい刑事罰・民事責任によって、憲法で保護されるべきコンテンツがインターネットから排除されることを懸念し、強く反対してきた。また、我々は法廷においても、SESTA/FOSTAに違憲訴訟を起こした団体や個人の弁護を務めてもいる。セックスワークコミュニティの活動家や組織者たちは、当初から懸念を表明していた。SESTA/FOSTAはその目的こそ性的人身売買における暴力の撲滅を掲げてはいるが、それとは真逆の結果をもたらすことになるだろう、と彼らは警告した。セックスワーカーの安全を守り、彼らが連帯するために用いていた多数のオンラインツールをコミュニティから奪うことになるためだ。不幸なことに、2019年は彼らの懸念が正しかったことが証明された。

セックスワーカーの草の根支援団体「Hacking//Hustling」が「Whose Corner Is It Anyway」とともに行った最近の研究では、回答者の40%がFOSTA施行後に暴力が増加したと報告している。さらに、回答者の99%がFOSTA施行によって安全になったとは感じていないと回答している。この研究の詳細は、ハーバード大学バークマン・クライン法律センター主催のカンファレンスでレビューされ、近日中に完全な結果が公開されることになっている。サンフランシスコ市警の発表によると、昨年、人身売買とセックスワークに関連した路上犯罪は、FOSTA可決後から急増し170%まで増加しているという。

これらの数字は、セックス産業の従事者が発した警告を裏付けるものである。FOSTAが広範囲に及ぶプラットフォームやオンライン・マーケットプレイスを違法状態に置いたことで、運営者たちは性的なコメントや投稿、広告を掲載したことで負わされうる責任を恐れ、ユーザの発言を検閲したり、完全に閉鎖したりしている。こうした場所を失ったことで、セックスワーカーは連帯の術を失い、自らの身を守るためのツールを利用できずにいる。顧客のスクリーニング、危険人物リスト、コミュニティによる安全のためのアドバイスなどを失えば、セックスワーカーは路上に出ざるを得なくなり、その結果、暴力と人身売買の増加につながる。こうした検閲は、暴力を受けやすい有色人種のトランス女性をさらに危険に晒す結果をもたらしてもいる。現にニューヨーク市では、地方条例1を根拠として、トランス女性を狙い撃ちにする取締が横行している。この放浪法は「トランスジェンダーの歩行禁止〈Walking While Trans〉」法とも呼ばれている。

SESTA/FOSTAの可決後、ウッドハル自由財団ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アレックス・アンドリュー、インターネット・アーカイブ、エリック・コチックは、同法の無効を求める訴訟を起こした。EFFは原告を弁護する法律チームの一員として参加している。原告は同法の違憲性を認め、施行を停止することを裁判所に求めている。セックスワーカーへの暴力を終わらせる国際デーの今日、そうした暴力を終わらせるための現実的な第一歩は、SESTA/FOSTAを廃止し、こうした法律の影響を受けるコミュニティにもっと耳を傾けることだ。多くのセックスワーカー支援団体は、差別の撤廃とセックスワークの完全な非犯罪化を求めている。だが、そうした主張すらFOSTAのもとでは違法とみなされるかもしれない。このようなリスクと、FOSTAによる検閲が現実に及ぼす影響を真剣に考え始めるべきだ。

On International Day to End Violence Against Sex Workers, We Must Look Closely at the Results of FOSTA | Electronic Frontier Foundation

Author: Daly Barnett (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: December 17, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image:Fibonacci Blue
  1. 訳注:売春の客引きを禁止する条例。