以下の文章は、電子フロンティア財団の「EFF and COVID-19: Protecting Openness, Security, and Civil Liberties」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

EFFとそのメンバーは、テクノロジーが世界中のすべての人々の自由、正義、イノベーションを支えることを保証するために活動を続けている。COVID-19のパンデミックは、インターネットとデジタルツールが私達の生活にとっていかに重要であるか、そしてそれらに対するオープンかつセキュアなアプローチを維持することがいかに重要であるかを明らかにしている。

インターネットの創造性は暗闇に差し込む光明

隔離された場所やシェルターでの生活を余儀なくされている人たち、あるいは自らの地域社会を守るために自主的に自宅待機する人々にとって、情報やアドバイスを共有したりアートやミームに勤しんだり、お気に入りのミュージシャンの“ライブ”パフォーマンスを聞いたり、あるいは孤独を忘れるために、これまで以上にインターネットやデジタルツールに頼っている。(願わくば一時的な)対面接触が失われるなか、テクノロジーはその状況への順応に役立っている。また、この危機に直面した多くの人々が、デジタルツールやサービスを活用して地域やコミュニティの共助体制を組織している。

オープンアクセスのおかげで、科学・医療チームは自らの研究を即座に共有し、ウィルスを追跡したり、人体への影響を研究したり、ワクチン開発に向けた取り組みを積み重ねられるようになっている。他のチームも、3Dプリントなどのオープンツールを活用して、命を救う医療機器の作成・修理方法を開発している。私たちはオンラインでもオフラインでも、新しく創造的なやり方で集まっている。ツールやサービスのセキュリティ、プライバシー、オープンネスが保証されていることが、こうした取り組みを後押ししているのだ。

ある意味では、この恐ろしい時代に私たちをつなぎ、正気を保つために、オンラインでオープンな創造性が爆発的に高まっていることは、暗闇の中の一筋の光明と言える。しかし米国では、この危機が平時より社会的に阻害されている人々――シェルターに避難している人たち、経済的事情から学校や仕事を継続するための安定したブロードバンドサービスを利用できずアクセスする手段を持たない人たち、蓄えがほとんどないコンサルタントや小売店で働く人たち、社会のセーフティーネットから抜け落ちた人たち――に、不相応な悪影響をもたらしている。富裕層のみならず、すべての人に安定したブロードバンド・アクセスを確実に提供するために、ここでもイノベーションが必要とされているのである。一部大手プロバイダの一時の大盤振る舞いに頼っていてはいけないのだ。

今だからこそ、権利を守るための特別警戒を

社会全体が恐怖に包まれた時期は、大きなリスクが伴うこともまた事実である。公共に広がる恐怖心は、著しい人権侵害をもたらし、私たちから権利を剥ぎ取り、苦労の末に勝ち取ってきた人権や自由権を縮小・制限しようとする人びとにチャンスを与えてきた。すでにこの公衆衛生の危機は、私たちと共に生きるアジア系コミュニティに不条理な非難を浴びせ、難民や移民への抑圧や差別の口実として利用されている。また、この危機を金儲けのチャンスと見た企業が、医学・疫学的必要性を大きく逸脱して、未審査の顔監視・ソーシャルメディア監視などを売り込もうともしている。

恐怖が私たちの権利を損ない、正義を捻じ曲げようとしているのであれば、まさしくEFF――そしてあなた――の出番だ。

このウィルスに対処するには、平時には考えられないような行動を取らねばならないのかもしれない。屋内にとどまり、集会を制限し、疫学的に必要な範囲でウィルス追跡に協力することは、適切なアプローチである限り、合理的かつ責任ある行動である。だが私たちは思慮深くあると同時に、それと同じくらい警戒しなくてはならない。COVID-19への対応という名目でとられた措置が、ウィルスとの戦いにおける社会のニーズに(国際人権法でいうところの)「必要かつ相応な」ものであることを確認しなくてはならない。何よりも、こうした目的のために収集されたデータが、措置の終了後に政府や企業に再利用されないことを確認しなければならない。

テクノロジーを活用した強靭な社会へ

困難な時代に突入していくなかで、テクノロジーが私たちを助け、(今まで以上にとはいかなくても)強靭な自由と民主主義とを手にしてこの時代から抜け出せるようEFFは戦い続けている。EFFの年間予算の半分以上は、献身的な個人会員から寄せられたものだ。EFFの弁護士たちは、法案や規制案、企業のプライバシーに関する動き、とりわけ企業や政府による監視活動増加とその問題精査している。EFFのテクノロジストたちは、危機的状況下で頼らざるを得ないデジタルツールを掘り下げ、プライバシー保護が十分に行われているかを確認している。このような時代から抜け出すために、我々は情報共有における人為的障壁の除去を進め、知識へのアクセスを確実なものにすべく奮闘している。

我々は今後、COVID-19に関連した問題に特化した特集ページを作成し、COVID-19のフィッシング攻撃と闘う術、あなたの権利のために30年にわたって戦い続けてきたEFFを支援する方法など、実用的な情報を公開していく。

科学が攻撃にさらされがちな今だからこそ、真実、衛生、共助の精神を大切にする私たちは、感染拡大を抑止する方法について、科学と医学が私たちに伝えていることを真剣に受け止めなくてはならない。そして、私たちが暮らしたい社会、子どもたちに受け継ぎたい社会のためにも、この危機がもたらす別の側面にも警戒しなくてはならない。私たちはそれを両立することができる、いや、そうしなければならない。

EFF and COVID-19: Protecting Openness, Security, and Civil Liberties | Electronic Frontier Foundation

Author: Cindy Cohn (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: March 23, 2020
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Hugo Jehanne
カテゴリー: Freedom of Speech