以下の文章は、Public Knowledgeの「“Censorship”: President Trump keeps using this word, but I do not think it means what he thinks it means.」という記事を翻訳したものである。

Public Knowledge

他者の行為を批判しながら、自らがそれをやる。今やそれが政治の常套手段になっている。

映画「プリンセス・ブライド・ストーリー」からの引用で恐縮だが(あえて言うなら、史上最高のラブストーリーである)、実に言い得て妙だ。トランプ大統領と共和党の同盟者たちは、他者、特に政敵や自分たちに批判的な者による「検閲」を非難し続けている。しかし皮肉なことに、まさに彼ら自身が検閲を行っている。

議会の動きを見てみよう。今週、下院司法委員会は「検閲産業複合体」に関する公聴会を4回目に開催する。最初の3回の公聴会と関連報告書は「連邦政府の武器化」というタイトルで実施された(この原稿を執筆している時点で、今週の公聴会で証言予定の3人全員が、すでに委員会で証言を行っている)。委員会の見解によれば、この「産業複合体」とは、バイデン政権、テクノロジープラットフォーム、学術機関、研究者、アドボカシー団体、広告主とそのエージェンシー、そしてメディアが結託して、特にオンライン上の発言を抑制しているという構図を指す。これはソーシャルメディア企業による「保守派の声の検閲」(この主張は数多くの学術研究により否定されている)という従来の主張を超えて、さらに拡大解釈されている。現在では、ヘイトスピーチや虚偽情報を指摘する者、大統領や政権を批判する者、有害なコンテンツとの関連を避けようとする者――すべてが「複合体」の一員とみなされている。

今週の議会公聴会は氷山の一角に過ぎない。共和党主導の連邦政府の各部門が、不都合な情報を抑制し、市民を操作し、権力獲得のための戦略として偽情報の流布を容認するという、周到に計画された運動の一部である。表現の自由の擁護者を装いながら、実際にはこうしたアクターこそが表現の自由を脅かしている。下院司法委員会の民主党スタッフは昨年末、「共謀の妄想:共和党による反トラスト法の武器化と表現の自由の破壊」という独自の報告書を発表した。しかし、トランプ大統領とその同盟者による民主主義への脅威に対抗するには、社会のあらゆるステークホルダーによる協調的な取り組みが不可欠となるだろう。

修正第1条が禁止する検閲とは、政府による検閲である

民主主義の根幹として覚えておくべきことがある。検閲とは、政府がその権力を用いて言論を抑圧することを指す。つまり、米国憲法修正第1条が禁じているのは、政府による言論、報道、宗教、結社の自由の制限である。ジョージ・ワシントン大学ロースクールのメアリー・アン・フランクス教授は、この問題に関する別の共和党主導の公聴会(下院小企業委員会による)で次のように明言した。

「修正第1条は、批判や競争から言論を守るものではない。発言者にプラットフォームや利益を保証するものでもない。ある人の発言を守る修正第1条は、同時に他者がその発言を拒絶、否定、無視する権利も守っている。批判的な発言によって批判された側の人気や収益が低下したとしても、それは発言が効果的だったことを示すだけで、決して検閲ではない。

競争は検閲ではない。

反論は検閲ではない。

研究は検閲ではない。

企業が他の企業について情報提供することは検閲ではない。

特定のコンテンツが虚偽、詐欺的、有害、過激、嫌がらせ、搾取的であると消費者、広告主、一般市民に訴えかけることは検閲ではない。」

我々は、Murthy v. Missouriにおける最高裁判決が、少なくともバイデン政権とソーシャルメディア企業間の「検閲」に関する根拠のない主張に終止符を打つと期待していた。この裁判で、保守派多数の裁判所は、政府のコミュニケーションとプラットフォームによる原告の投稿のモデレーションに関連性を見出さなかった。つまり、申し立てられた「検閲」など存在しなかったのである。

検閲に反対すると主張しながら、検閲を進めるトランプ政権

最高裁判決にもかかわらず、トランプ大統領は就任日に「言論の自由の回復と連邦検閲の終結」という大統領令に署名した。その中で「憲法で保護された言論に従事する米国民の権利」を再確認し、連邦職員による言論の自由の制限を禁止している。それ以来、トランプ大統領とその同盟者は検閲の弊害を声高に訴える一方で、自ら検閲を行い続けている

これまでのところ、新政権による露骨な検閲活動の多くはFCCから発せられている。1月、新任のブレンダン・カーFCC委員長は、PBSとNPRの加盟局の資金調達方法がFCC規則に違反していないか調査すると発表し、これが議会の資金提供判断に影響を与える可能性を示唆した。案の定、数日後には下院監視政府改革委員会の「政府効率性実現(DOGE)」小委員会のマジョリー・テイラー・グリーン委員長が、PBSとNPRの幹部に対して、「これらの機関への連邦資金提供継続の妥当性を評価する」調査を開始すると通告した。公共メディアへの資金提供を打ち切ろうとする共和党の動きは、いわば「古典的な手法」だが、今回は対象機関の編集判断そのものが標的となっている。グリーン議員はNPRへの書簡で、(まさかこんな話題をまた取り上げることになるとは思わなかったが)ハンター・バイデンのラップトップに関する記事を報じないというNPRの判断を非難した。PBSへの書簡では、DOGE共同創設者のイーロン・マスクが「ナチス式敬礼とされる」ジェスチャーをしたことに関するPBSの報道を問題視した。彼女はNPRとPBSの両方を、「同じ考えを持つ個人とイデオロギー集団の狭い層」のためだけに報道していると非難した。編集判断を理由に議会が資金提供打ち切りをちらつかせることは、まさに検閲の定義に当てはまる。

カーFCC委員長はまた、3つのネットワークテレビ局に対するトランプ大統領の偏向報道に関する申し立てを、カマラ・ハリスに肩入れしていたという理由で蒸し返した。これらはABC(大統領候補討論会でトランプ大統領の発言をファクトチェックしたこと)、NBC(「サタデー・ナイト・ライブ」でのハリスの短い出演)、CBS(「60 Minutes」でのハリスのインタビュー編集)に対するものだ。前任のジェシカ・ローゼンウォーセルFCC委員長は、これらの申し立て(およびFox系列局に対する1件の申し立て)について、「FCCの免許付与権限を修正第1条の精神に反する形で武器化しようとするもの」として却下していた。CBSに対する案件では、カー委員長はハリスとのインタビューの完全な原稿と録音の提出要求を、同社が熱望するSkydance Mediaとの合併審査と露骨に結びつけた(興味深いことに、カー委員長はFox Newsに対する名誉毀損の申し立ては蒸し返さなかった。これは問題の報道が裁判で虚偽と認定されているにもかかわらずである)。編集判断を理由に政府の承認を人質に取るような脅しは、紛れもない検閲行為だ(「信じられない話」の部類だが、4年前、カー委員は声明で、下院エネルギー商業委員会の民主党議員2名がケーブルテレビ各社の報道判断について問い合わせた書簡を「この国のすべてのメディアが享受している言論の自由に対する戦慄すべき侵害」と非難していた。さらに当時、「ニュースルームの記事選択や構成に関する判断は、政府当局者の手の届かないところにあるべきで、彼らの標的にされるべきではない」とも指摘していたのである)。

数日前にも、カー委員長は新たな一手を打った。カリフォルニア州でのトランプ政権による大量強制送還に関する報道について、サンフランシスコのラジオ局KCBSに対して「正式な調査のための照会状」を送付した。カー委員長は同局の報道について、「公共の利益に関する責務とどう整合性を取れるのか」と脅迫めいた発言を繰り返している。偶然とは思えないが、カー委員長は以前、ジョージ・ソロスと関係のあるKCBSの親会社Audacyの破産再編を承認した2024年のFCCの決定について「厳しく精査する」と公言している

カー委員長はさらに、ユーザ投稿に関するプラットフォーム企業の免責を定めたSection 230の改革でソーシャルメディア各社を脅している。「Project 2025」大統領移行プロジェクトの章で彼は、FCCは「解釈」によってSection 230の保護範囲を狭めるべきだと主張している。その狙いは、プラットフォーム企業にコンテンツモデレーションを控えさせることだ。しかし、大手プラットフォームのモデレーション判断を制限しようとする提案は、表現の自由を促進するどころか、むしろ損なう結果となる。

FCCによるこれらの脅しは、現政権が報道機関やソーシャルメディアプラットフォームに仕掛けている攻撃の、ほんの一例に過ぎない。トランプ大統領は、大統領選でカマラ・ハリスに後れを取っているという世論調査を報じたDes Moines Registerを訴えた。バンス副大統領もまた、デジタルプラットフォームのコンテンツモデレーションについて、インタビューで「検閲を止めることはできる。もし止めないなら……トランプ政権は容赦しない」と脅しをかけている。

他にも、政治報道するメディアへの政府機関の購読打ち切り(これらのメディアが報道に影響を与えるために「政府資金」を受け取っているという虚偽の口実による)、XとTruth Socialでの記者の実名晒し、そして新設の「メディアローテーション・ポリシー」の名のもとにホワイトハウスペンタゴンの記者会見から批判的なメディアを締め出し、トランプ寄りのメディアを優遇するといった事態が起きている(焚書、多様性・公平性・包摂性への言及の抹消、政府文書からのキーワード削除についても触れたいところだが、紙幅が足りない。ただし、これらはすべて、政権の意に沿わない情報への市民のアクセスを妨げるための、同一の作戦の一環だと我々は見ている)。

トランプ政権や議会が直接動かない場合は、トランプ大統領の取り巻きが検閲を推し進める役回りを演じる。彼らは批判者を黙らせるために、名誉毀損訴訟やSLAPP訴訟を武器として用いている。現在「特別政府職員」となったイーロン・マスクは、彼が所有するプラットフォームXで有害コンテンツの横に広告が表示されていると報告したMedia Mattersを「消費者詐欺」で訴えた。そして先週、トランプの大口献金者が大きな標的に狙いを定めた。スティーブ・ウィンが、公職者への厳しい報道を可能にした1964年の画期的判決New York Times v. Sullivanの破棄を最高裁に求めたのである。

これらの組織的な攻撃は、少なくとも3つの影響をもたらしている。個々のメディアによる批判的な報道を封じ込め、他のメディアを萎縮させ、一般市民のメディアへの信頼を掘り崩す。そして最も深刻なことに――この戦略は着実に効果を上げている。圧力と報復の脅威にさらされた全国メディアは、勝てる公算の高いトランプ陣営からの訴訟でさえ、和解に応じることで憲法上の権利を自ら手放している。ABC、Meta、そしておそらくCBSも、脅しをかけてくる政府高官との関係維持や、ビジネス機会の確保のために、勝てるはずの訴訟に和解で応じた。さらには選挙結果が出る前から、ワシントン・ポストLAタイムズは、社説委員会が用意したトランプ氏に対するハリス氏支持の社説を葬り去った。表現の自由が奪われようと、自ら手放そうと、結果は同じである

集団で立ち向かう以外に検閲と戦う術はない

ハーバード大学の教授が最近指摘したように、個々の組織が抵抗すれば深刻な報復を受けかねない状況下で、市民社会は集団行動の難しさに直面している。以下は、Public Knowledgeが提案する、この検閲攻勢に対抗するための政策立案者と市民のための戦略である。

  • 今週の公聴会で我々が実践したように、民主党議員に対して、反対意見を抑え込み、独裁政権さながらの報道環境を作り出そうとしている同僚の責任を追及するよう働きかける。敵意むき出しの公聴会やFCCの脅迫から、民主主義制度への攻撃へと一直線に続く道筋がある。
  • 連邦反SLAPP法の制定を求めるなど、報道の自由を守るために市民社会組織と連携する。
  • 地域に根ざした独立系報道機関による報道を重視した、地域ジャーナリズム支援策を提言する。
  • 初等教育から生涯学習まで、コミュニティにおける基礎能力としてデジタル・メディアリテラシーを支援する。
  • 公共メディアの編集権独立と継続的な資金提供の両方を訴える。
  • FCCの政治的濫用に異を唱える戦略的な訴訟を支援し、権力の乱用と戦う。
  • FCCや議会の政策立案者による検閲の実例をPKと共有する――政策立案者に示すべき地域への悪影響の具体例として活用するため。

今週、インターネット政策会議State of the Netの基調講演で、アンナ・ゴメスFCC委員は次のような見解を示した。「党派的な文化戦争に執着するのではなく、FCCは接続性の拡大、競争とイノベーションの促進、ネットワークの安全確保、そして強固で独立したメディア生態系の支援に注力し続けなければならない。放送メディアにおける地域性、競争、多様性の確保というFCCの伝統的な政策の柱を堅持しなければならない。誤情報やデマが横行する今日、地域ジャーナリズムはかつてないほど重要性を増している。消費者が自分たちにとって重要な問題に関する情報の真偽を見極めるために必要なメディアリテラシー教育の取り組みとツールを、私は今後も強調し続けていく。」

FCCとその他の機関、議会、そして裁判所がこの原則のもとに結束できれば、それこそが表現の自由にとっての真の一歩となるだろう。

“Censorship”: President Trump keeps using this word, but I do not think it means what he thinks it means. – Public Knowledge

Author: Lisa Macpherson / Public Knowledge (CC BY-SA 4.0)
Publication Date: February 12, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Michael Dziedzic