以下の文章は、電子フロンティア財団の「Incoming Biden Administration Officials Should Change Course on Encryption」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

デジタル世界でのプライバシーとセキュリティの確保には、暗号化は必要不可欠である。暗号化がなければ、我々は権威主義政府、過剰な警察権、詮索好きな企業、オンライン犯罪者による搾取の危険にさらされることになる。

だがこの数年、連邦捜査当局は口先では「サイバーセキュリティ」を謳いつつ、実際には我々のセキュリティを損ねようとしてきた。ウィリアム・バー元司法長官やジェームズ・コミー元FBI長官ら多数の政府関係者は、広範囲に及ぶ暗号化が「ゴーイング・ダーク(訳注:監視・盗聴を難しくすること)」をもたらし捜査に支障をきたしているとして、政府の要求に応じて暗号化データの中身にアクセスできるセキュアなシステムを設計するようテクノロジー企業に呼びかけてきた。だが、暗号されたセキュアなシステムと、捜査当局にアクセスを可能にする特別な「バックドア」を両立することは、どのような名称で表現しようとと不可能である。

黄金の鍵も魔法の弾丸も存在しない。捜査機関や情報機関の当局者がそれを認め、公言しなくてはならない時が来ているのである。だが残念ながら、バイデン新政権に抜擢されたキーパーソンの顔ぶれをみるに、現時点では期待できないかもしれない。

まずはトランプ政権からの続投で、10年間の任期を継続しているFBI長官のクリストファー・レイから見ていこう。彼はこれまで何度も、捜査機関には暗号化された会話への例外的なアクセスを認めるべきであり、「ユーザ制御のデフォルト暗号化」は「捜査機関にとって重大な課題」だと述べてきた

新国家情報長官の就任が承認されたアヴリル・ヘインズは、カーネギー平和研究所が暗号化に関する「現実的で建設的な」議論をはじめるために招集した専門家グループの一人でもあった。このカーネギーグループの報告書は2019年に発表されているが、率直に言って暗号化とプライバシーの擁護者にとっては期待はずれの内容であった。報告書は、暗号化の技術的現実を認めるのではなく、重要な問題を無視するかたちで、暗号化デバイスの「キー・エクスロー」スキームの変形版を提案している。だがこうした提案は、過去何十年にも渡って提案されては却下されてきた信頼性の低いアプローチである。

バイデン政権の司法副長官候補のリサ・モナコも、カーネギー報告書の共同執筆者である。次期司法長官と目されているメリック・ガーランドは、暗号化に関して目立った発言はないが、連邦検察官として長いキャリアを持つ。

もちろん、政府高官のこれまでの経歴とは無関係に、新政権は新たな道を切り開くことができる。我々はすでにバイデン大統領の政権移行チームに要望を送り、新大統領が正式に暗号化を支持する政策を採用すること、暗号化バックドアといったデジタルセキュリティを損ねるいかなる取り組みも否定することを求めている。政府高官は、暗号化とコンピュータの脆弱化が公共安全に不可欠だという間違った発言を否定しなければならない。そうではないし、そうであったこともないのだから。

Incoming Biden Administration Officials Should Change Course on Encryption | Electronic Frontier Foundation

Author: JOE MULLIN (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: FEBRUARY 4, 2021
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Joe Biden (CC BY-NC-SA 2.0) / Santeri Viinamäki (CC BY-SA 4.0)