10月31日に第49回衆議院議員総選挙が実施される。新型コロナ対応、経済・成長戦略、暮らし、外交、安全保障、環境・エネルギー、多様性、人権など、さまざまな問題・争点に関して各党が政策・公約を掲げている。
有権者それぞれに注目する争点は異なるのだろうが、私としてはこのブログで扱ってきた「デジタル権」に着目して各党の政策・公約を眺めている。
デジタル権(Digital Rights)といっても、はっきりした定義があるわけではなく、個々人の問題意識に即して使われてはいるものの、おおよそ「デジタルメディアへのアクセス、利用、創作、公開およびコンピュータなどのデバイス、通信ネットワークへのアクセスと使用を保障する権利(人権)」というあたりは共通している。 ユニバーサル・アクセス、表現・情報・通信の自由、プライバシーとデータ保護、匿名性の権利、忘れられる権利、いじる権利などと密接に関係する権利である。
デジタル技術やインターネットは我々の通信・表現・コミュニケーション環境を飛躍的に拡張してくれたものの、さまざまなゲートキーパー(政府、プロバイダ、プラットフォーム、バッドアクター)による介入・干渉を可能にもしている。また、昨今の誹謗中傷・ヘイトスピーチ問題に見られるように、情報流通の摩擦の低下は良い面ばかりではなく、我々ユーザ自身による他者の人権の抑圧にもつながっている。そして、データフローの増大は必然的にプライバシーの問題を生じさせ、AIなどを用いた大規模プロファイリングによって選別されるリスクがもたらされている。
と、短い説明ではなかなか伝わりづらい問題ではあると思うので、デジタル権に関連する具体的な問題を列挙しておこう。
- ブロッキングやフィルタリング、ネット遮断、サイトの取り締まり
- 政府/行政機関によるデジタル技術を利用した大規模監視
- 監視の民営化(テック企業がサービスを提供する上で収集・蓄積する個人データの捜査等への転用)
- オンラインコンテンツ規制(サイバー犯罪対策法、テロ対策法、児童ポルノ禁止法などオンラインの犯罪行為に対処するためのオンラインコンテンツ規制法が、政府批判や言論の自由を抑圧するために悪用されることもある。近年では、差別禁止法やフェイクニュース対策法などが政治的に悪用されるケースも散見される)
- 誹謗中傷、ハラスメント/トロール問題(意見表明の抑圧、とりわけマイノリティ/社会的弱者/野党勢力が影響を受けやすい)
- 誹謗中傷、ハラスメント/トロール規制(適法表現の不当な削除、自己検閲)
- サイバー空間における情報工作(国内/外国勢力による世論誘導や政治的分断工作)
- 暗号化の脆弱化/暗号化の禁止(バックドアの設置義務等による通信の秘密の毀損、監視リスク、プライバシーリスク)
- 匿名性の毀損(実名制度、登録制度含む|自己検閲を促すことによる意見表明の抑圧)
- ソーシャルメディア税等のデジタル税
- テクノロジーセクターの寡占に伴う選択肢の欠如(独占的プラットフォームのポリシーのデファクトルール化、囲い込み、相互運用性の欠如など)
- プラットフォームによるモデレーション(コンテンツやアカウントの削除の透明性・説明責任の欠如、自主規制の要請圧力に伴う誤削除・誤凍結)
- ネット中立性の毀損/ゼロレーティング(特定のコンテンツ、サービスの優遇的扱いによって、情報源を選択する自由が歪められる)
- 企業による個人データ・行動データの過剰な追跡・保存・利用・共有
- AI技術等を用いた大規模プロファイリング(社会信用システム、格差の固定化、AIによる間接差別等の“選別”的プロファイリング、情報の非対称性の拡大など)
- 過剰な知財保護に伴う情報アクセスの阻害(たとえばDRM、アクセスコントロール回避規制による適法アクセスの阻害)
- インフラ環境の未整備・未発達
- デジタル・ディバイド(地域格差・経済格差・世代格差など)
これらデジタル権に関わる種々の問題について、① 表現・情報・通信の自由/情報アクセス、② プライバシー/不当に選別されない権利、③ デジタル・アクセシビリティの観点から、各政党がどのような政策を唱えているかを見ていくのが本稿の目的である。単に列挙していくだけではつまらないので、それぞれの項目にコメントを付した。あくまでも個人的な意見であることをご留意いただきたい。また、表現の自由等の権利については、オフラインでの規制・制限であってもオンラインに影響するため、デジタルに限定していない。
まぁ、デジタル権云々を抜きにしても、このような政策・公約を掲げているというのをざっくりと見ておくだけでも投票の役に立つのではないかなと思った次第。
自由民主党
公明党
社会民主党
国民民主党
日本維新の会
れいわ新選組
日本共産党
立憲民主党
自由民主党
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
表現の自由を最大限考慮しつつ、侮辱罪の厳罰化や削除要請の強化等を通じインターネット上の誹謗・中傷やフェイクニュース等への対策を推進するとともに、人権意識向上の啓発活動を強化し、様々な人権問題の解消を図ります。
世界的に「フェイクニュース」という言葉を使うのを止めようという流れになっていることを考えると(一般にはdisinformationやmal-information)、あえて曖昧な語(misinformationを含むように)を使っているのかとも思える。「フェイクニュース対策」は政府に都合の悪い言説を抑圧するために悪用されやすいことを考えると、表現の自由にかなりの悪影響をおよぼしうる。また、「フェイクニュース」を問題視する一方でヘイトスピーチへの言及が皆無なのもバランス感覚を疑う。
誹謗中傷対策の強化も、SLAPPなどの不当な言論抑圧のリスクを生み出すことになるため、強力なセーフガードが必要にあるが言及は薄い(「表現の自由を最大限考慮」というエクスキューズでは全く足りない)。また、「侮辱罪の厳罰化」は、どれほどの抑止効果が期待できるかわからず、とりあえず厳罰化しておこうという場当たり的対応にしか思えない。むしろ、執行を強化するほうが効果的だろう。
ネット上での問題行動に対する取組みを強化し、情報モラル教育を充実するとともに、家庭教育支援チームの地域への必置化に向けて、方針の作成や「家庭教育支援法」の制定に向けた取組みを推進します。
家庭教育支援法は、立法・政府による家庭教育への介入の色彩が強く、香川県ゲーム規制条例のような保護者への制限的努力義務が盛り込まれるリスクをはらむ。
青少年健全育成のための社会環境の整備を強化するとともに「青少年健全育成基本法(仮称)」を制定します。またITの発達等による非行や犯罪から青少年を守るための各種施策を推進します。
青少年健全育成基本法は、「子どもに有害」とみなされたさまざまな情報やサービス、機器への規制や制限を盛り込んだものになることが予想される。
国民の身近なメディアとして公共的な役割も担ってきた放送については、スマートフォンの普及や視聴スタイルの変化などを踏まえ、国民視聴者のニーズに応えていくため、その将来像について検討を行います。
政策自体は穏当ではあるが、政権与党として放送内容に積極的に介入することをいとわない自民党の政策であることを考えれば、報道の自由や言論の自由への抑圧のために用いられる可能性があることも懸念される。
安全保障の観点から、わが国の戦略的不可欠性(技術的優越性を含む)と戦略的自律性を支える戦略技術・物資を特定した上で、機微性に応じて、技術情報の管理強化、輸出管理の見直し、特許の非公開制度の導入等を進めていくとともに、投資審査体制の強化、研究環境の健全性・公正性の強化を含め、統合的、包括的な対策を講じます。
安全保障上の理由から一定の制限を設けることは仕方ない側面もあるが、いきすぎれば技術情報に関する表現・学問の自由を損ねることにもなりうる。また特許の非公開制度は、後願特許の問題等課題は山積みなので実現に向けた道筋がないとまったく支持できない。
プライバシー/不当に選別されない権利
郵便局が地域に貢献し、地方の金融機関や自治体業務の補完等の住民サービスに資するため、DXやデータ活用の推進、マイナンバーカードの積極活用を図るとともに、郵便局ネットワークの維持とユニバーサルサービスの安定的な提供に努めます。
「郵便局の顧客データ活用へ 総務省が来夏まで指針」(産経新聞)という記事が話題になったが、自民党としてはこれを幅広く拡張していくというのが既定路線になってるようだ。
DFFTルールの具体化において、EUと米国を連結する中核的役割を果たし、国際デジタル秩序の形成を主導します。また、デジタル時代におけるデータの法的権利に係る法整備を検討します。
“21世紀の石油”と言われるデータの国際的な利活用が公正かつ安心に行われるよう、イニシアチブをとって、国際社会とともにデータ活用の枠組み(国際標準)を構築します。
データ利活用推進と安全・安心が確保されたデータ駆動型の社会を構築し、国際社会においても先進的かつ先導的な取組みを推進します。
マイナンバーカード機能のスマートフォン搭載、健康保険証としての利用や運転免許証・在留カードとの一体化、社会保障・税・災害の3分野以外への情報連携を拡大し、マイナンバー利活用を推進します。
このあたりを見ても、データの利活用にはかなり積極的な一方で、ユーザの側に立ったデータ保護のあり方についてはかなり消極的に見える。少なくとも、どのようなデータ保護が必要であるかを示してはいないため、いくらでも後出し解釈可能な文言にとどまっている。また、マイナンバーにあらゆる情報を主役させようとしていること、マイナンバーカードの事実上の携帯義務化に向けた動きも懸念される。
デジタル・アクセシビリティ
デジタル庁を中心に、誰一人取り残さない“人にやさしいデジタル化”を推進し、一人ひとりのニーズに迅速かつ的確に寄り添った、多様な幸せが実現できる社会を創ります。
「デジタル格差」の解消に向けて、民間企業や地方公共団体などと連携し、特にオンライン手続きの利用に不安のある高齢者等へのデジタル活用支援を推進します。
順当だが、「高齢者を取り残さない」に重きを置いたデジタルデバイド対策といった印象を受ける。個人的には、高齢者のデジタル対応を無理にすすめるよりは、デジタル化を進めた上で不利益を被らないようにするほうが良いように思う。
誰も取り残さないサイバーセキュリティを目指し、DXとサイバーセキュリティの同時推進、安全保障の観点からの取組み強化等を通じ、自由、公正、かつ安全なサイバー空間を確保します。
サイバー空間においても、実空間と変わらぬ安全・安心を確保するため、官民連携を進め、サイバーセキュリティを一層強化するとともに、国の捜査部隊を創設するなど、サイバー犯罪やサイバー攻撃などへの対処能力の強化等に努めます。
いかなる状況下においても、国民生活の基盤を維持するために、基幹インフラ産業(情報通信、エネルギー、医療、金融、交通・運輸等)の自律性を高め、強靱化を図ります。
都道府県警がそれぞれにサイバー空間に対応せざるをえない状況を考えると、サイバー空間に特化した捜査機関が必要という論は多少の懸念はあるが支持できる。
社会のデジタル化などに対応した消費者行政の強化を通じ、消費者の安全・安心を守ります。
政権与党の公約としては具体性にかけ、方向性を示せていないので、実質的に何も言っていないように思える。
公明党
公明党は、「日本国憲法について」の項目で、デジタル権の保障に類する政策を提案している。
3.デジタル社会の進展と人権の保障と民主主義
デジタル技術の急速な進展は、憲法上の人権保障、民主主義にも大きな影響を与えています。
例えば、ネット上での個人にかかる情報は、その個人の知らないところで不適切に利用される危険に晒されています。また、選挙や国民投票において、ネット上での一方的な情報操作により、民主主義の過程が歪められるおそれも指摘されています。
- デジタル社会において一人ひとりが自律的な個人として尊重される人権保障のあり方を具体的に検討します。
デジタル社会における個人情報の保護について、憲法上の位置づけを検討するとともに、自分の情報に関する自己決定の確保など、個人情報の取扱いについて定める基本法の制定をめざします。- また、デジタルデバイド(情報格差)が大きな課題となります。情報格差により、さまざまな利益を享受できる機会を失うことがあってはなりません。その解消に向けての国や事業者の責務等が検討されるべきです。
- 選挙や国民投票の際、国民の自由な意思形成過程が保障され、有権者が多様な情報にアクセスできるよう、国や事業者の役割等を検討すべきと考えます。
方向性としては良い。ただ、政権与党として経済格差を放置し続けていることを考えると、情報格差の是正も空手形のように思える。
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
行政が保有するデータに関して質の高いオープンデータ化を進め、新サービス・新事業の創出を促し、産業の国際競争力の強化や社会全体の生産性の向上をめざします。
オープンデータ化は支持したいが、非識別加工情報制度への不信感が払拭できない。
ネットによる誹謗・中傷の根絶のため、SNS や無料アプリ、ゲームなどの特性や、安全なインターネットの使い方を教えるなど、各学校現場での「情報モラル教育」を充実させます。
インターネット上の誹謗中傷対策として、プラットフォーム事業者による適切かつ迅速な削除やアカウントの停止など自主的取り組みの実効性を高める方策を促進します。また、相談体制の強化や情報モラル教育の充実を図るとともに、侮辱罪の厳罰化を図ります。
教育・相談体制の強化は(内容にもよるが)概ね支持したい。ただ、プラットフォーム事業者に自主規制的なコンテンツ削除やアカウント停止を求めるのは、共同規制的側面もあるものの、立法・行政の責任回避・無責任を招くようにも思える。少なくとも、犯罪として規定している行為への対応を法執行ではなく、民間事業者による自主努力に任せるのでは、怠慢というよりほかない。また、侮辱罪の厳罰化も大して意味はないと思う。
相手の反論を許さないほど威圧し、憎悪をあおるヘイトスピーチは、人権侵害や社会の分断という観点から決して許されるものではありません。公明党が主導し成立したヘイトスピーチ解消法の理念をもとに、さらなる実態調査や教育、啓発を行い、ヘイトスピーチを社会から根絶することをめざします。
まったく異論はない。強く支持したい。
インターネット上のショッピングモールやフリマアプリ、マッチングサイトなどのデジタル・プラットフォームが介在する取り引きのトラブルが増加していることから、消費者の安全・安心と消費者からの信頼性の確保のために必要な法的枠組み等を検討します。
CtoCの取り引き、やり取りに起因するトラブルへの対応は必要ではあるが、適法に利用するユーザが使いづらく/アクセスしにくくなる可能性もあるので、その点は注意が必要である。
プライバシー/不当に選別されない権利
自治体が子育て支援や地域振興などにマイナンバーカードを活用して〇〇Pay や△△カードなどのキャッシュレス決済で使えるポイントを付与する「自治体マイナポイント事業」の全国展開を進め、マイナンバーカードの普及促進、官民キャッシュレス決済基盤を構築しデジタル化を加速させます。
マイナンバー/マイナンバーカードの利用拡大は支持できない。
ネットバンキングにおける不正事案等への対処や子どものネット犯罪被害防止対策などのサイバー空間の脅威への総合対策について、実態把握・情報収集の強化、人材育成・確保、国際連携、産官学民の連携・協力を促進しつつ、サイバーセキュリティの抜本的な強化を図ります。
子どものネット犯罪被害防止対策は、Appleが計画するデバイス・スキャン、クラウド・スキャンのように侵入的な措置が許容されがちなので注意が必要である。
個人情報保護の観点に配慮しつつ、AI など最先端技術を活用した交通事故対策や安全・防犯システム等の構築に向けた検討を進めます。
個人が不当な識別や選別を受けるリスクを押し付けられることが問題なので、個人情報保護の観点からだけでは不十分。非常に懸念される。
デジタル・プラットフォーム事業者等が消費者に十分な説明をせず個人情報を集めて広告に活用するなどの課題解決に向けて、デジタル・プラットフォーム取引透明化法の対象にデジタル広告市場を追加するなど、デジタル取引の透明化・公正化のためのルール整備を進めます。
方向性としては良い。ただし、プラットフォーム規制としては物足りない。
中・高生や若い女性への痴漢犯罪をなくすために、警察、法務省、文部科学省、国土交通省、内閣府等による関係省庁連絡会議を設置して、まずは国による実態調査を行うとともに、警察による被害者への聴取が二次被害を生まないようプロセスの見直しや都道府県のワンストップ支援センターの周知と充実、女性専用車両の増設や痴漢防止アプリなどのICT を活用した鉄道における安全対策の推進、防犯カメラの増設、痴漢被害を受けた時に学校が適切に対応できるよう対応マニュアルの作成、周知等、国を挙げた取り組みを進めます。
前述の防犯システムの推進を考えると、痴漢犯罪の抑止の目的であっても、「防犯カメラの増設」は強く懸念される。それ以外の点は良いと思う。
国際テロやサイバー攻撃を未然に防ぐため、関係省庁や外国の治安情報機関と連携し、情報収集・分析の強化に一層強力に取り組みます。また、サイバーセキュリティ対策として、重要インフラサービスの防御体制とリスクマネジメントの強化を促進します。
治安維持のための情報収取は侵入的になりがちなので、注意が必要である。
デジタル・アクセシビリティ
国民がデジタルの活用により得られる「生活満足度」を図る指標を導入し、各種政策の立案や評価に反映させ、国民の暮らしの充実、質の向上につながる仕組みをつくります。
指標を作るのは難しいだろうが取り組みとしては評価したい。
デジタル技術が社会の隅々まで浸透し、安全で自由なデータ活用が当たり前になるデジタルインクルージョンをめざして、支援を必要としている情報弱者(高齢者、障がい者、外国人、生活困窮の方、IT 人材の配置が難しい中小・小規模事業者等)のため、デジタル活用支援員の拡充や申請サポートの制度化、多言語化など総合的なデジタル・デバイド(情報格差)対策を講じます。
これは絶対に進めてほしい。
行政のデジタル化を進めるに当たって、サイバー攻撃による情報の改ざん漏えい、不正使用などを防ぎ、個人情報の保護を徹底するために技術動向に応じた必要な安全対策を講じ、国・地方公共団体だけでなく民間事業者も含めた連携の強化と継続的な技術支援を行います。また国民一人ひとりのセキュリティ意識の向上のため、意識啓発、周知徹底を推進します。
暮らす地域によって通信の格差が生じないよう、DX(デジタルトランスフォーメーション)の基盤として進展が期待される5G の基地局整備を一気に進め、5G の全国展開と利活用を早期に実現します。また、光ファイバ等のブロードバンド整備を全国くまなく進めます。
携帯事業者間の競争を促し、国民目線に立ったさらなる料金・サービスを実現するため、建物内や地下などにも届く周波数帯、いわゆる「プラチナバンド(800MHz 前後)」について、新規参入事業者も含めて再割当できる仕組みを導入します。
災害時に、スマートフォン等で家族の安全確認や緊急連絡、災害情報等を得るための「無料公衆無線LAN」について、2021年度末までに、避難所・避難場所に指定された学校等を含む全国各地の防災拠点(約3万カ所=整備済みを含む)に整備します。
概ね良い。
携帯電話料金の引き下げを広く国民が実感できるよう、分かりやすい情報発信を一層推進します。
それぞれの利用者の使い方に合った携帯事業者や料金プランを安心して選択できるようにするため、中立的な立場で相談・サポートを行う「スマホ乗り換え相談所」の推進を支援します。
前政権から引き続いての政策なのだろうが、若干介入し過ぎな点が気になる。
そのほか
若者等の政治参画を一層促進するため、有権者がスマートフォン等から投票できるインターネット投票の実現に向けた研究・検討を進めるとともに、電子投票システムの信頼性を確保するための検討も進めていきます。
オンライン投票はたしかに投票率の向上につながるが、セキュアに実施するのが難しく、選挙の正当性を損ないかねない(たとえば、米大統領選挙後の混乱、ミャンマーのクーデター)ので、私は支持しない。
社会民主党
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
日本には性別や国籍・民族が違う人、障がい者など様々な人々が暮らしています。差別に反対する長年の努力の一方で、ネット上などでは差別的な表現が横行しています。「ヘイトスピーチ解消法」などをより実効性のある包括的な差別禁止法にし、共生社会の実現をめざします。
「ヘイトスピーチ」という用語が現状では幅広い意味合いを包含してしまっていることを考えれば、この禁止法によって制限される言説がどのようなものであるかを推測することは難しく、特にプラットフォームに削除・凍結義務が課された場合には過剰規制になりうる懸念がある。
安保法制、秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法廃止
自公政権下で憲法違反を指摘される立法が次々行われました。とくに、長年憲法上許されないとされてきた集団的自衛権の行使を認めた9条違反の「戦争法(安保法制)」(2016年施行)、国民の知る権利を侵害し、国民主権原理を形骸化させる21条違反の「特定秘密保護法」(2014年施行)、思想・良心の自由(19条)、表現の自由・通信の秘密(21条)を侵害し犯罪着手前の「計画(共謀)」を処罰することで罪刑法定主義(31条)にも反する 「共謀罪」法(2017年施行)、基地周辺などで住民を監視し土地の取引に政府が介入し財産権(29条)、居住・移転の自由(22条)、表現の自由、思想・良心の自由、プライバシー権(13条)などを侵害する「重要土地調査規制法」(22年施行予定)など、悪質な違憲立法が続いています。社民党はとことん反対し、廃止を目指します。
秘密保護法、共謀罪法、重要土地調査規制法については、たとえその意義が正当化されても、セーフガードが足らなすぎるので、廃止ないし改正が必要である。
プライバシー/不当に選別されない権利
公権力の管理・監視強化から個人情報と権利をまもる
この5月に、菅義偉政権の看板政策とされる「デジタル庁創設」などデジタル改革関連法が成立しました。行政手続きのオンライン化や民間の取引も便利になり、生活が豊かになるというのですが本当でしょうか。確かにオンライン会議の普及などデジタル化で利便性が向上する部分もありますが、「デジタル化=善」という単純化は危険です。
デジタル化は、私たちの一挙手一投足が記録される社会、すべての個人情報が監視され統制される社会にもつながりかねません。政府はコロナ対策の給付金支給の迅速化などと謀ってマイナンバーカードの普及をすすめようとしており、デジタル情報を利用した、プライバシー侵害、個人情報の統制のおそれが懸念されます。
現状の行政組織が縦割りで、異なるシステムが併存するなど効率が悪い面があるのは確かで、総合調整をはかる意義には理解できる面もありますが、その前提は何より個人情報保護の徹底ではないでしょうか。デジタル庁やマイナンバー制度、重要土地調査規制法案など菅政権が進めようとしている施策は、市民を監視し、情報を政府に集中しようとするものにほかならず、断じて認めるわけにはいきません。
一足飛びに何でも廃止せよとは思わないが、適切な第三者監査が実施されていなければ、組織というものは簡単に腐ってしまうので、懸念としては理解できる。
国民民主党
国民民主党は、デジタル権に類するデータ基本権を憲法に明記するよう訴えている。
人権分野では、憲法制定時には予測できなかった時代の変化に対応するため、人権保障のアップデートが必要です。特に人工知能とインターネット技術の融合が進む今、国際社会では個人のスコアリングと差別の問題や、国民の投票行動に不当な影響を与えるネット広告の問題などが指摘されています。デジタル時代においても個人の自律的な意思決定を保障し、データ基本権を憲法に位置づけるなど議論を深めます。
憲法に明記しなくても実現は可能であると思うが、意気込みは買いたい。
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
ヘイトスピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律を制定します。与党の反対により進まない「LGBT差別解消法」の成立を目指します。
差別禁止法がヘイトスピーチの禁止を含むものであれば、やはり表現への影響が気にかかる(ただし、人種、民族、出身などを理由とした差別的扱いを禁止すること自体は反対しない)。LGBT差別解消法は現状の野党案で良いと思う。
人工知能や次世代通信規格5G、6G、ドローン、半導体や量子技術などは民間企業だけでなく軍事転用可能な技術であることから、これら技術の流出や、外国資本による技術保有企業(中小・中堅企業を吹く)の買収を的確に把握、規制することが重要で、必要な法整備を進めます。
過剰な制限にならないようなセーフガードが必要。
自由貿易協定については、自由貿易の重要性を踏まつつ、自動車や農業分野など、日本の国益を守ることを最優先に位置づけ、主体的・戦略的な経済外交を推進します。
日欧EPAによって日本の著作権保護期間が延長されてしまったことを考えると、FTA、EPAによって情報へのアクセス権が失われることもあるという点には注意が必要である。
そのほか
インターネットを活用して、政策づくり、選挙運動の各場面で一人でも多くの国民が政治に参加している実感の持てる環境をつくります。また、オンラインでの投票を可能にします。
ネガティブ。
日本維新の会
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
公判前に裁判官・裁判員や世論の予断を生じさせている、捜査機関や関係者による事件に関連した「情報リーク」がないよう、守秘義務の遵守徹底と厳格な調査・処分を行います。
内部告発や報道の自由の抑圧にもなりかねない点が懸念される。ただし、リークが世論の予断を生じさせているという点はごもっともなので、完全に秘匿するのではなく、よりオープンかつ公正な場での情報公開が求められる。
行政が保有するデータは特段の理由がない限りオープンデータとする「オープン・バイ・デフォルト」の理念を推し進め、国・地方自治体のオープンデータ化について具体的目標を設定するとともに、都市に存在する膨大なデータを蓄積・分析し他の自治体や企業、研究機関などと連携するシティ OS の実装を進め、AI 化と都市の DX(デジタルトランスフォーメーション)を進展させます。
IoT、AI 分野の普及・実用化を進めるため、世界共通のプラットフォームに積極的に参加するとともに、衛星データ等国家が保有する情報を積極的に開放し民間利活用を促進するオープンプラットフォーム拡大、データ流通市場の創生支援を行います。
オープンデータ推進は良いが、AIやデータ保護についての歯止めについてはほとんど言及されていないので、不安が払拭できない。
表現の自由を最大限尊重し、マンガ・アニメ・ゲームなどの内容に行政が過度に干渉しないコンテンツ産業支援を目指します。ANGA ナショナルセンターの設置による作品アーカイブの促進、インバウンドを意識した文化発信やクリエイターの育成支援などを行います。
産業支援の時点で特定の表現への介入であると見ることもできる。また「過度に」の度合いが不明なため、どの程度の介入を許容するのかも不明である。
文化的コンテンツ等をデジタルデータとしてブロックチェーン上に記録したいわゆる NFT(非代替性トークン)について、イノベーションを阻害しないルール作りによる市場の拡大支援を行い、日本の強みであるマンガ・アニメ・ゲーム等のコンテンツ産業・アート市場のさらなる発展を後押しします。
投機的な金の流れは生み出せるが、コンテンツ産業・アート市場の振興にはならない。
インターネットの発達などによる児童・生徒の性意識・性知識の早熟化に対応するため、性的リスクなどに対する知識を発達段階に応じて教えられるよう、教育現場における指導方法や教員の対応及び学習指導要領を適切に見直します。
「性意識・性知識の早熟化」についての事実関係がわからず、現在の性教育にどのような方向性の変更を加えようとしているのかイマイチわからない。
インターネットを通じた新たな犯罪・特殊詐欺や、犯罪の温床となる無登録の投資助言・医療広告などが横行していることに鑑み、各省庁におけるサイバー犯罪対策を強化し、消費者保護に努めます。
対策強化に異論はないが、具体性に欠く。
表現の自由に十分留意しつつ、民族・国籍を理由としたいわゆる「ヘイトスピーチ(日本・日本人が対象のものを含む)」を許さず、不当な差別のない社会の実現のため、実効的な拡散防止措置を講じます。
ヘイトスピーチ規制のなかで最も危惧すべき提案である。私はヘイトスピーチ規制には消極的ではあるが、少なくとも導入するからには差別の解消のために必要な範囲に限定すべきだと考えている。「日本・日本人が対象のものを含む」との文言は、過剰に規制の範囲を拡大し、被差別者への抑圧をより強めるために悪用されることは想像に難くない。
SNS などにおける誹謗中傷問題につき、行政による過剰な規制や表現の自由侵害には十分に配慮しつつ、発信者情報開示請求を簡素化するなど司法制度を迅速に活用できる仕組みを整備し、被害者保護と誹謗中傷表現の抑止を図ります。
発信者情報開示の遅れが権利行使にネガティブに働いている側面もあるため、迅速化等は概ね理解できる。ただし、発信者情報開示請求の手続き自体は、発信者を守るためのものでもあるため、悪用等がないよう継続的にそのあり方を見直し続けなければならない。
日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中、日米同盟を基軸とし、日米英印豪台など共通の価値観を持つ海洋国家ネットワークで我が国の防衛力を強化します。
ファイブアイズの追従は、暗号化の脆弱化という方針への賛同でもあるため、我々のデジタル環境をインセキュアにすることにも繋がりかねない。
プライバシー/不当に選別されない権利
マイナンバー法を改正して使途を拡大し、マイナンバーの「フル活用」を推進します。マイナンバーとすべての銀行口座の紐づけを義務化すること等を通じて収入と資産を捕捉するとともに、戸籍から不動産登記、外国人在留管理までを紐付けし、ワンストップサービスの拡張、有事の際の給付金の速やかな支給など、透明で公平公正、迅速な行政施策の実施を実現します。
マイナンバー制度の活用や銀行口座との紐付けにより、個人・法人の資産と収入を正確に把握し、効率的かつ公平で抜け漏れのない徴税を行います。
マイナンバーカードによる外国人労働者の在留管理を推進するとともに、新たな外国人労働者の受け入れも踏まえ、AI チャットボット・AI 翻訳を活用した行政の多言語対応など、外国籍児童・外国出身児童を含めた外国籍住民との共生を図ります。
マイナンバーにあらゆる情報を紐付けようとする動きには警戒が必要である。
デジタル教科書については完全無償化するとともに、個人情報に配慮しながらデジタル教科書を使用した生徒のビッグデータを活用し、最新テクノロジーを駆使した効率的・効果的な学習支援を行います。
具体性を欠くバズワード政策。「個人情報に配慮」との文言が、学習データを統計的な分析にのみ使用することを意味するとは思えない。
性暴力被害者、セカンドレイプ被害者への支援を強化するとともに、出所者を把握し、治療に結び付けるなど性犯罪再犯の防止策の法制化を検討します。
GPS端末(たとえばスマートフォン)で出所者の位置情報を把握するということにも繋がりかねない提案ではある。
米国の CIA のような「インテリジェンス」機関を創設するとともに、諸外国並のスパイ防止法を制定し情報安全保障を強化します。
デジタル・アクセシビリティ
障がい者の社会参加に必要な情報アクセスやコミュニケーション手段の保障、デジタル・ディバイド(情報格差)解消のため、行政サービスを中心として情報保障の充実化を図ります。また、手話を言語として定める手話言語法を制定します。
良い。
そのほか
財やサービスの所有から利用への転換を見越し、ライドシェアや民泊普及の障壁となる規制を撤廃し、シェアリングエコノミーを強力に推進します。
ブロックチェーン技術等を活用したインターネット投票(スマホ投票)の実現を目指すとともに、マイナンバーカードを活用したコンビニ投票を導入するなど投票方法の多様化を進めます。
オンライン投票がセキュアに実現できるとは思えない。
れいわ新選組
プライバシー/不当に選別されない権利
デジタル技術による監視社会化を防ぎ、個人情報を保護するための法制度を強化。最新のデジタルインフラ整備を国が保障するとともに、その行政における活用については、個人データの利用についてのコントロール権や幅広い住民の合意を担保します。マイナンバー制度については、国家による個人監視や社会保障の削減につながる懸念があることを踏まえ、広範な情報を集積する性格の制度から、公正な税の徴収に特化するための制度に移行します。
「デジタル技術による監視社会化」を防ぐ政策は評価したい。ただ、コントロール権の付与がどのような性格のものになるのかはわからないため、実効性があるかどうかはわからない。マイナンバーの使途限定も好ましいが、税の徴収以外の行政サービスの手続きの簡素化・効率化は国民に恩恵がある部分については、「個人監視や社会保障の削減」につながらないようなかたちで進めても良いと思う。
デジタル・アクセシビリティ
通信費ゼロ(携帯電話・Wi-Fi・固定電話など)
掛け値なしに良い。
日本共産党
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
―――児童ポルノは「性の商品化」の中でも最悪のものです。児童ポルノ禁止法(1999年成立。2004年、2014年改正)における児童ポルノの定義を、「児童性虐待・性的搾取描写物」(※)と改め、性虐待・性的搾取という重大な人権侵害から、あらゆる子どもを守ることを立法趣旨として明確にし、実効性を高めることを求めます。
(※)ここで言う「描写物」には、漫画やアニメなどは含みません。詳しくは下記のリンクをご覧ください。
「共産党は表現規制の容認に舵を切ったのですか」とのご質問に答えて – 日本共産党 個人の尊厳とジェンダー平等のための JCP With You
現行法は、漫画やアニメ、ゲームなどのいわゆる「非実在児童ポルノ」については規制の対象としていませんが、日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており、これらを適切に規制するためのより踏み込んだ対策を国連人権理事会の特別報告者などから勧告されています(2016年)。非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。
「児童ポルノ規制」を名目にしたマンガ・アニメなどへの法的規制の動きに反対します。
現行法において対処できない(主に漫画やアニメ、CG、ビデオ、ゲームによって表現される)「非実在児童ポルノ」を法規制以外の手段で社会から排除したい、と読むほかない。もちろん社会の道徳的意識の変化によって、そのような表現が忌避されるようになりうることまでは否定しないが、それでもなお表現行為自体や表現の場を守ることこそが「表現の自由」を守ることにほかならない。排除を目的とした政策は受け入れられない。
子どもや女性を「性の商品化」するビジネスの法規制、相談や啓発の体制を強化します。
女性の性をおとしめ人格をふみにじる性の商品化、性的搾取を許さず、法規制と相談・啓発の体制を強化します。
「性の商品化」論は、性の神聖化や従事者のスティグマ化、過剰な表現規制につながることが懸念されるため、規制の根拠として持ち出すことに違和感がある。私は「意味のある」自己決定権の保障によって、この手の問題は解決すべきだと考える。
リベンジポルノ、SNSでの誹謗中傷などオンライン暴力への対策を強化します
「昔の交際相手に、性的な写真をSNSにアップされた」「女性がSNSで意見を主張すると、誹謗(ひぼう)中傷や殺害予告などが殺到」――オンライン上の暴力は、被害者を精神的に追い詰め、命すら奪いかねない重大な人権侵害です。
――オンライン上の暴力について、通報と削除の仕組みを強化し、被害者のケアの体制をつくります。
対策強化やケア体制は必須である。ただ、「通報と削除」の主体が不明確で、どのようなかたちで強化するかについては明言されていない。法執行によるものであればよいが、プラットフォームに要請ないし義務づけるというかたちになれば、適法な表現すら不当に通報・削除され、不利益を被ることにもなりかねない。
「アームズ・レングス原則」(お金は出しても口は出さない)にもとづいた助成制度を確立し、萎縮や忖度のない自由な創造活動の環境をつくります。
すべての助成を専門家による審査・採択にゆだねるよう改善します。
あいトリ助成金問題でみられたような政府・行政による表現への政治的介入を抑止するという点で望ましい。
政府から放送行政の監督を切り離し、新たに「放送委員会」(独立行政委員会)を設置するように制度改正を求めます。
放送行政への政治的介入を防ぐためには、絶対に実現すべきである。ただし、放送委員会の独立性をどのように担保するのかが課題である。
- 法案の名称を「ヘイトスピーチ根絶に向けた取組の推進に関する法律」とする。
- 何人もヘイトスピーチを行ってはならない旨の規定を設ける。
- ヘイトスピーチの定義を、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」に換えて、「人種若しくは民族に係る特定の属性を有する個人又は集団(民族等)に対する、この社会からの排除、権利、自由の制限、民族等への憎悪又は差別の意識若しくは暴力の扇動を目的として、不特定多数の者がそれを知り得る状態に置くような場所又は方法で行われる言動であって、その対応が民族等を著しく侮辱、誹謗中傷し、脅威を感じさせるもの」との規定を置く。
- 「適法に居住する」との要件は削除する。
差別禁止法の最も恐ろしい弊害は、差別する側が差別される側を抑圧するために法律を悪用すること、そして法の執行が悪用される方向に不均衡に行われること(つまり被差別者側ばかりにヘイトスピーチ禁止法が適用される)、なので、共産党の提案ではそれを防ぐ強力なセーフガードが必要になると思うが、それについて言及されていない。それでも維新の公約よりは相当マシではある。
著作権法を改正し、映画監督やスタッフ、実演家の権利を確立します。デジタル化、ネット配信など多様化する二次利用に対しては、著作者の不利益にならないよう対策を求めます。
妥当だと思うが、ワンチャンス主義は二次利用の円滑化という点では有益であったわけで、許諾権を与えれば流通を阻害することになる。隣接権の録音・録画権の見直しなのか、新たな権利の付与なのか。報酬請求権を与えるにしても、権利として与えるというだけでは不十分で、利用(事業)者の権利処理コストを最小限に抑えた制度設計が必要になるとは思う。
プライバシー/不当に選別されない権利
「29、GAFA、プラットフォーマー」の項目で、ビッグテックの問題点を幅広く概説した上で以下の公約を挙げている。各政党の政策を読んだ中では最も問題を理解している印象がある。
プライバシーを守る権利は、憲法が保障する基本的人権です。そもそも個人情報は情報の主体である個々人のものです。
いま必要なことは個人情報やプライバシーを保護するための法律や条例の強化、ガイドラインの整備と、行政と企業を国民の立場で監視・監督する第三者機関の設置、事業者の個人情報漏えい事実の消費者への通知義務、充分な被害救済、罰則の強化、情報の自己決定権などを保障することです。
- 日本版GDPRを制定します。
- 個人情報を大規模に集める手段であるマイナンバーカードは廃止します。
- 健康保険証や運転免許証などとマイナンバーカードの一体化をやめさせます。
- デジタル庁は廃止します。
- 地方自治体への強引なデジタル化の押し付けをやめさせます。
- プライバシー保護の最後の防波堤である地方自治体の優れた個人情報保護条例を守ります。
- RCEPやTPPなどから離脱し、個人情報の国外への持ち出しを禁止します。
- 個人情報保護法を見直し、情報の自己決定権、個人情報保護を抜本的に強化します。
- 行政と企業を国民の立場で監視・監督する第三者機関を設置します。
- 事業者の個人情報漏えい事実の消費者への通知義務、充分な被害救済、罰則の強化を実行します。
個人的にはマイナンバー制度およびカードの無分別な拡張こそ問題だと思っているので、廃止すべきとまでは思っていない。デジ庁主導で個人情報が民間活用されてしまうという懸念も若干無理矢理な感じがする(が、懸念としては理解できる)。それ以外は概ねポジティブだと思う。
「55、デジタル化問題、個人情報保護、マイナンバー」の項では次の公約を掲げている。
行政による、本人同意なし・目的外流用・外部提供する匿名加工情報制度をやめさせます
個人情報保護法を改正し、「自己情報コントロール権」を保障します
リクナビ事件などを挙げ、「ビッグデータやAIを利用して、個人をレッテル貼りし、信用力を点数化してサービスや取引から排除する」選別的なプロファイリング・スコアリングが「個人の人生に大きな影響を与える」とした指摘した上で、「どんな自己情報が集められているかを知り、不当に使われないよう関与する権利(自己情報コントロール権、情報の自己決定権)」を確立すると主張している。良い。
労働基準法をはじめ、男女雇用機会均等法(均等法)、パート法などに、間接差別の禁止、同一価値労働同一賃金の原則を明記し、差別の是正を労働行政が指導できるようにします。現在の均等法の間接差別の禁止の規定は、非常に限定的で、間接差別のほとんどが、事実上野放しになっています。「すべての間接差別の禁止」を明記し、結果として一方の性に不利益を与える基準、制度について、広く規制し、是正を図ります。
若干文脈は異なるが、間接差別の禁止はAI等機械による差別的選別に対抗するための根拠となるため、概ねポジティブな方向性である。
デジタル・アクセシビリティ
「アナログも、デジタルも」行政手続の多様化で、住民サービスの向上をはかります
デジタル・ディバイド対策として、「アナログも」を打ち出すのは良い。頑張っても世代的にデジタル化できない人もいるんだから仕方ない。
そのほか
ギグワークなどの無権利な働かせ方を広げる規制緩和に反対し、権利保護のルールをつくります。
シェアリングエコノミーを謳いながら、結局はプラットフォームの規制逃れ、責任逃れにしかなっていないギグワークに関しては、規制緩和ではなく規制が必要であると思う。
立憲民主党
表現・情報・通信の自由/情報アクセス
インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷への対策に取り組みます。
ほぼすべての政党が対策に乗り出すことを打ち出しているので、公約としては「やるかやらないか」ではなく「どうやって」が必要なのではないだろうか。
巨大デジタルプラットフォーマーへの適切な規制と起業の促進に取り組みます。
「どうやって」規制するかが重要なのではないだろうか。
ポルノや売買春、痴漢等の被害からインターネット上の性犯罪、子ども・高齢者・女性を対象とする性的虐待・暴力、あるいは性的指向や性自認に関する暴力に至るまで、性暴力は被害者の人権を著しく侵害し、心身を害する重大で深刻な被害が生ずる犯罪であり、断じて許されるものではありません。
メディアにおける性・暴力表現について、子ども、女性、高齢者、障がい者をはじめとする人の命と尊厳を守る見地から、人々の心理・行動に与える影響について調査を進めるとともに、情報通信等の技術の進展および普及のスピードに対応した対策を推進します。
売買春等における買い手を生まないための教育・啓発など、「女性の性を商品化する風潮」を変える取り組みを具体的に進めます。
ポルノは適法であるし、性暴力ではない。断じて許さないというのは、ポルノの非合法化、犯罪化を目指しているようにも取れる。また、「インターネット上の性犯罪」が何を指すのかが不明であるが、未成年者に裸体等の写真を送信させる行為を指しているのであれば、Appleのデバイス・スキャン、クラウド・スキャンのような取り組みを容認する姿勢を示しているのかもしれない。
メディアにおける性・暴力表現への「情報通信等の技術の進展および普及のスピードに対応した対策」も、何をしようとしているのかが定かでなく、あまりに漠然としている。
「性の商品化」については共産党と同じく、ネガティブにしか評価できない。
2016年の第190回通常国会で法律が作られた「ヘイトスピーチ対策」への取り組みを拡大し、人種・民族・出身などを理由とした差別を禁止する法律の制定など国際人権基準に基づき、差別撤廃に向けた取り組みを加速します。
インターネットを利用した人権侵害を許さず、速やかに対応できるような法改正、窓口創設を実現します。
ヘイトスピーチ規制は、結果としてヘイトスピーチによって攻撃される被差別者を追い詰める可能性が十分にあること、ヘイトスピーチに該当しない表現を萎縮させる可能性があることを十分に認識した上で制度設計が必要である。
刑法の名誉毀損罪の法定刑の上限は懲役3年となっていますが、現状の人権侵害の深刻な状況に鑑みて、上限の引き上げを検討します。
執行が不十分なだけで、法定刑が不十分なわけではないと思うのだが、なぜ一足飛びに厳罰化すればよいという発送に至るのかまったく理解できない。
不正アクセスによるインターネット上の人権侵害について、プロバイダが被害救済のための対応をとることを義務付けます。
人権侵害は、然るべき法執行機関が迅速に救済のために対応し、その結果としてプロバイダに迅速に対応せよというのであれば理解できるが、プロバイダに判断を委ねるような義務づけには断固反対する。
プライバシー/不当に選別されない権利
①政府による国民の監視手段にしない、②個人情報の保護の徹底、③セキュリティの確保、④利便性の向上、⑤苦手な人も含め誰も取り残さず、使わない人が不利にならない――の5原則をもとに、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。
原則としては概ね良い。
個人の権利利益の保護を図るため、自己に関する情報の取扱いについて自ら決定できる権利(自己情報コントロール権)、本人の意思に基づいて自己の個人データの移動を円滑に行う権利(データポータビリティ権)、個人データが個人の意図しない目的で利用される場合等に当該個人データの削除を求める権利(忘れられる権利)、本人の同意なしに個人データを自動的に分析又は予測されない権利(プロファイリングされない権利)について法律上、明確化します。
行政機関等が個人情報を利用する際、マイナポータルで自己情報の利用状況を把握できる仕組みを構築します。
概ね良い。が、プロファイリングされない権利は過剰すぎれば統計的な利用すら難しくなりかねないので、注意が必要。
個人情報保護委員会が、行政機関等への監視、資料の提出、実地調査、勧告や報告の要求を遅滞なく行えるよう体制を強化します。
良い。
人工知能の倫理基準の国際標準化に取り組みます。
AIの利活用ばかりが語られがちななかで、AIの倫理について触れているのはポジティブに評価したい。
デジタル・アクセシビリティ
情報インフラである通信の基盤を強化し、誰もがアクセス可能な環境の整備を進め、真に「人にやさしいデジタル化」による「誰ひとり取り残されないデジタル社会」を目指します。
情報技術格差(デジタルディバイド)を最小化するとともに、国民の多様な要望、ニーズに応えられるよう、行政サービスにおける対面業務、電話対応、紙による手続等を維持し、通信料の補助等の支援策を講じます。
公共施設などを中心とした「どこでも無料Wi-Fi」を実現します。
そのほか
非正規雇用の正規化、同一価値労働同一賃金の実現、残業代支払い厳格化、フリーランス・みなし個人事業主やギグワーカーなどの保護を行います。
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