以下の文章はAccess Nowの「Don’t help Putin and Lukashenko silence anti-war voices」という記事を翻訳したものである。

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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、国民がFacebookやInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームを通じて外の世界にアクセスすることを何年にもわたって阻止しようとしてきたが、そのたびに失敗を繰り返してきた。現在、プーチンはルカシェンコへの影響力を利用してウクライナへの全面侵攻を支持させているように、西側企業やメディアのなかには、反対の声を上げる人たちを意図せず黙らせる手助けをしているところもある。ここでは、ロシアとベラルーシでの反戦の声を守るための4つの方法を紹介したい。

1. プーチンのプロパガンダに対抗するためにインターネットを分断してはならない

プーチンの戦略の一部は、ロシアによる違法な戦争を正当化するためにプロパガンダや偽情報を拡散することにある。侵攻から数週間、一部のウクライナ政府関係者や友好国は、Apple、Facebook、Googleなどの主要オンラインプラットフォームや、ロシアのトップレベルドメインのサービス遮断を呼びかけた。また、自らの判断でロシアとベラルーシとの関係を絶った企業もある。

プロパガンダの発信源をブロックするという意味では論理的なアプローチに見えるかもしれない。だが我々、市民社会団体がバイデン大統領への公開書簡で説明したように、プーチンの戦略に加担しているに過ぎない。ロシアやベラルーシをインターネットから切断しても、ウクライナ侵攻に対する抵抗の助けにはならない。プーチンが人びとを切り離し、プロパガンダを流布させるための情報の空白を生み出すのを助けることにしかならない。

だからこそ、ICANNCloudflareNamecheap、ドメイン・ウェブサイト証明書プロバイダなどの企業や組織が、ロシアをインターネットから分断することを拒否したり、戦争を支持しないロシア、ベラルーシの市民社会活動家を例外的に扱うといったことが必要になるのである。

2. 「真実の空白」を作ってはならない

ウクライナ国家通信局は3月3日、この戦争の残虐行為、犯罪、結果の証拠をソーシャルメディアで共有するよう市民に、特に「真実の情報へのアクセスが制限されているロシア市民」に語りかけた。ゼレンスキー大統領自身も、ロシア市民にウクライナの真実を共有するよう呼びかけている。だが、そのためのネットワークがロシアやベラルーシで遮断されていたとしたらどうなるだろうか?

長い間、プーチンとルカシェンコは党の方針に反対するあらゆる声を黙らせ、自らの嘘と政府公認のナラティブを流布するための真実の空白を生み出すために組織的に取り組んできたのである。ロシアのインターネット主権法プロジェクトは、全国民に純粋なプロパガンダ定食を強制的に摂取させるためのものであった。これは、過去8年間のクリミア併合、東ウクライナでのロシア主導による戦争を「正当化」するために構築されてきた情報環境なのである。

現在、プーチンはさらにその先に進み出している。すでにロシアの検閲当局は、Facebook、TwitterInstagramなどのソーシャルメディアプラットフォームやDozhd、DOXA、Meduzaなどの独立系ニュースチャンネルをブロックした。報道機関のロイターが「独占:FacebookとInstagram、ロシア人への暴力扇動を一時的に許可」という不正確な見出しの記事を掲載した後、ロシアの裁判所はFacebookの親会社のMetaが「過激派活動」に関与していると判断し、両プラットフォームの使用を禁止した。一方、ロシアで新たに制定された「フェイクニュース」法に対応するため、TikTokはライブ配信を停止して状況を見極めると発表した

このようにデジタル空間が縮小しているにも関わらず、ベラルーシとロシアの活動家は、ウクライナ難民の住居確保を支援するアプリを制作したり、ベラルーシ内のロシア軍・ベラルーシ軍の動きを監視して、ウクライナ住民に攻撃の危険性を事前に警告するなど、自由のために戦うウクライナ人を支援しようとしている。

言うまでもなく、このような(訳注:プロパガンダの)代替情報ソースのパージに際して国際社会が注力すべきなのは、真実にアクセスするための最後のチャンネルを守ることであって、それを根絶することではない。報道機関であれば、ソーシャルメディアプラットフォームが検閲の対象とされることの危険性を警告しなければならない。また、AppleとGoogleがロシアのアプリストアを遮断するよう求める要請にも反対しなければならない。それは過去にも起こったことだ。AppleとGoogleが野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏のスマート投票アプリをアプリストアから削除するよう脅された後に何が起こったのか、我々は見てきたはずだ。そうしてプーチンは権力を維持してきたのだ。

3. 反戦の声と運動を支持し、そのプライバシーを保護すること

反戦の声は、時に信じられないほど大きな力を持つことがある。ウクライナのゼレンスキー大統領がロシア市民とベラルーシ市民にプーチンの侵略に反対の声を上げるよう求めたとき、多くの人が、これほど気持ちのこもった言葉をかけてくれる政府関係者は初めてだと認めた。数千人のベラルーシ市民ロシア市民が、正当な手続きなしに逮捕され、拷問され、さらに迫害されるおそれがあるにも関わらず、戦争に抗議するために街頭に立った。

最近では、アーノルド・シュワルツェネッガー元カリフォルニア州知事の心からのメッセージに、涙するロシア人もいた。

ロシアやベラルーシの人びとに、声を届けなければならない。反戦のために組織化された人びとは、安全を守るためにプライバシーを必要としている。プーチンとルカシェンコの批判者は、逮捕、拷問、拉致、さらには暗殺されてきた。にもかかわらず、DigiCertはロシア・ベラルーシに関係するウェブサイト証明書の発行を停止している。これでは、政府が市民を監視し、独立系ウェブサイトをプロパガンダに置き換えることを助けるだけだ。プライバシーツールや、検閲・監視回避ツールを提供する他の企業には、こうした動きに追随しないよう求める。

4. クリミアと占領地域を忘れてはならない

ロシアをインターネットから切り離せという要請は、占領地域や併合地域を世界からさらに孤立させる危険性をはらんでいる。ロシアがこれら地域のインターネット・通信インフラの支配を強化しているため、クリミアで活動する我々のパートナー人権団体は、当該地域がロシアの国家インターネットだけになればロシア当局のさじ加減でオン・オフできるようになり、抵抗が一層困難になると警鐘を鳴らしている。ロシアベラルーシの体制がインターネットを遮断して抗議活動を抑圧してきたことを考えれば、当然の懸念である。

結語

独裁者は、国民を孤立させ、嘘をつき、真実を隠蔽することで、国を支配する。我々は独裁者を助けてはならない。能動的に独裁者と戦わなくてはならない。

つまり、我々――市民社会、政府、テック企業、一般市民――は、ロシアとベラルーシの人びとが今起こっていることの真実を知ることができるように、できる限りのことをしなければならないのである。いずれプーチンとその同盟国は、この侵略の重い代償を支払うことになるだろう。おそらく最も重い代償は、市民が独裁者の嘘に耳を傾けなくなることであるはずだ。

Don’t help Putin and Lukashenko silence anti-war voices – Access Now

Author: Natalia Lrapiva and Anastasiya Zhyrmont / Access Now (CC BY 4.0)
Publication Date: March 29, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Greg Rosenke