以下の文章は、電子フロンティア財団の「Self-Proclaimed Free Speech Platforms Are Censoring Nude Content. Here’s Why You Should Care」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation


彼らの謳い文句を信じるなら、Parler(「表現の自由が栄える場」)や、Frank Speech(「表現の自由の声」)などの自称“表現の自由マキシマリスト”サイトは、あらゆるユーザコンテンツの公表を可能にしてくれるのだろう。だが現実には、適法な性的コンテンツを含む多数の合法コンテンツを禁止している。こうした制限は、クィア・コミュニティセックスワーカーその他の周縁化されたグループにとってあまりにも身近な問題である。彼らはあらゆる場所で、まったく適法なコンテンツを検閲されてきたのだ。

多くの性的表現やポルノコンテンツは適法であり、ソーシャルメディアプラットフォームでそのようなコンテンツに関わることによって、人びとはコミュニティを築き、自分のアイデンティティを探究できる。だが、性的コンテンツのモデレーションによって、ソーシャルメディアはオフライン・オンライン空間の双方で、ヌードコンテンツをどのように作成し、それにどのように関わって良いかを判断する決定者となってしまっている。破綻したモデレーションシステムは、あらゆるユーザにとって重要なエンゲージメントを排除し、弱い立場の人びとの声を定期的に黙らせるという結果をもたらしている。

冒頭に記したプラットフォームは、しばしばヘイトに満ちた言論を擁護するために、自らを表現の自由過激主義者と位置づけてきた。だが彼らにとっても、セクシュアリティに関連する表現(訳注:が表現の自由の保護の対象であったこと)はまったくの想定外だったのだろう。

これらのプラットフォームは私企業として、米国法の下で適法コンテンツを検閲する権利(訳注:何を許可して何を許可しないかを決定する権利)を有しており、政府はプラットフォームに公表を強制することはできない。だが、自らを表現の自由の導き手と標榜しながら、一方で適法な性的要素を含むコンテンツを欺瞞的に制限し、言論と表現の自由への完全なアクセスを確保することの重要性をなぜ無視するのだろうか?

たとえばGETTERは、自らを「表現の自由、独立した思想、政治的検閲と『キャンセルカルチャー』の拒絶という原則に基づく全く新しいソーシャルメディアプラットフォーム」と呼んでいるが、その利用規約(TOS)を見ると、「性的描写、ポルノ」コンテンツの投稿を禁止している。同様に、Frank Speechの利用規約でも「性的に露骨な、またはポルノ的なコンテンツ」の投稿を禁止している。Parlerなどは全面的には禁止していないものの、性的コンテンツにはNSFW(Not Safe for Work)というタグを付けなくてはならず、ユーザのアクセスや自由なエンゲージメントを制限している。

大抵の性的表現は、いわゆる「ポルノ」や「性的に露骨」などと分類されるものであっても、憲法修正第1条の下で保護される。もちろん、多くのプラットフォームが、この憲法修正第1条を表現の自由へのコミットメントの根拠として掲げている。オルタナティブ・ソーシャルメディア・プラットフォームのGabは、「合衆国憲法修正第1条の下で保護される政治的、宗教的、象徴的、あるいは商業的表現であるあらゆる文章表現はウェブサイト上で許可される」と明記している。ソーシャルネットワークのMindsの原則のページでの、そのコンテンツポリシーは「偏見や検閲を最小限に抑えるため、修正第1条に基づき、コミュニティ陪審によってガバナンスされる」としている。だが、GabもMindsも、適法な性的コンテンツの投稿・共有を排除している。もちろん、そうしているのは彼らだけではない。

性的コンテンツが制限されても、ほとんどの人は無関心だ。違法かもしれない(だから無視すべき)、望ましくない(だから合法だろうが関係ない)、いつも検閲されてるんだから文句言うな、と考えるだけだ。だが、セックスワーカー、性的自由を求める活動家、アーティストは、オンラインで適法な表現を何度も何度も検閲されてきた。表現の自由を掲げる一方で性的コンテンツを事実上検閲するという欺瞞は、とりわけ表現の自由の純粋主義者を自称するMeWeRumbleといった極右サイトで顕著に見られている。だが、そこに集うマジョリティたちは、周縁化された人びとが味わってきた検閲を見ることも、経験することもめったにない。

昔からそうだったのだろうか? まぁ、そうだったと言える。実際、こうした「表現の自由」プラットフォームのTOSは、FacebookやInstagramなどの大手ソーシャルメディアプラットフォームのモデレーションのロールバック版に過ぎない。つまり、102歳の人魚像の写真から、乳首アート作品までを検閲してきたポリシーを引き継いでいるのだ。米国でも世界的にも、性的表現やヌード表現は広く保護されているにも関わらず、大手プラットフォームの多くは積極的にヌードを禁止している。とはいえ、OnlyFansがユーザからの反発を受けて、アダルトコンテンツ禁止の方針を撤回したように、プラットフォームが圧力に抗してユーザの利益を優先することもある。TwitterやRedditのユーザたちも、合法的な性的コンテンツを気軽に関わり、表現の自由を享受している。同様に、PEEP.meやセックスワーカーが運営する一部のMastodonサーバ、サイトも、リスクを冒して性的表現を守り、憲法修正第1条の表現の自由の権利を擁護しているのである。

だが、主要プラットフォームのほとんどはヌードコンテンツを禁止している。そして自称「表現の自由の擁護者」たちは何とかして性的コンテンツを規制・検閲しようとしている。

我々が何度も何度も何度も言ってきたように、コンテンツ・モデレーション・システムは破綻している。モデレーション・ポリシーは不透明で、しばしば恣意的で、その適用は不平等だ。適法な性表現を検閲する「表現の自由」プラットフォームは、デジタル空間を消毒(sanitizing)しているだけではない。表現の自由の意味について根本的な無知を晒してもいるのだ。

Self-Proclaimed Free Speech Platforms Are Censoring Nude Content. Here’s Why You Should Care | Electronic Frontier Foundation

Author: Paige Collins / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: July 20, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: j bCC BY-NC-SA 2.0