以下の文章は、電子フロンティア財団の「How to Make a Mastodon Account and Join the Fediverse」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

最近のTwitterの混乱は、特定のソーシャルメディアプラットフォームに依存してしまうと、そのシステムの運営者の手にあなたの声、プライバシー、安全性を委ねることになるということを改めて突きつけている。その結果、多くの人々がMastodonをTwitterのバックアップやオルタナティブとして認識し始めている。そこで、本稿ではMastodonへの移行方法についてのガイドを提供したい。このガイドは2022年12月現在のものであり、説明されているソフトウェアやサービスは急速に変化していることに留意いただきたい。

そもそもフェディバースとは何なのか。以前にその詳細と技術的な解説記事を書いたが、フェディバースをざっくり説明すると、それぞれに独立したソーシャルメディア同士が共通言語で相互対話可能な大きなネットワークである。フェディバースのソーシャルメディア・アカウントは電子メールのようなもので、自分が好きなサービスを選択しつつ、別のサービスを選択したユーザともコミュニケーションできるようにしてくれる。

EFFはこの新たな可能性に期待しているし、楽観的に見てもいる。とはいえ、フェディバースは発展途上にあり、従来のソーシャルメディアの完全な代替品とまでは言えない。だが、Twitterなどへの依存を心配するようになったのなら、今こそ自分のソーシャルメディア・プレゼンスをフェディバースに「バックアップ」するいい機会だ。

1. アカウントの作成

フェディバースに参加する前に、いくつかの重要な選択がある。とはいえ、フェディバース上ではアカウント情報をインスタンス間で簡単に移行できることは覚えておくといいだろう。重要な選択ではあるが、永久に変えられないものではない。

まず、あなたをフェディバースに接続するソーシャルメディアサイト(「インスタンス」と呼ばれる)は、従来のソーシャルメディアサイトの仕組みを踏襲したさまざまなアプリケーションを実行している。このガイドでは、その中でも最も人気のあるMastodonを取り上げる。MastodonはTwitterによく似たマイクロブログアプリであるが、Twitterとはまったく別のソーシャルメディア体験がいいなら、Mastodon以外のフェディバースアプリを検討するといいだろう。

次に、joinmastodon.orgなどのサイトで、どのMastodonインスタンスに参加するかを選択する。たくさんの選択肢があるが、選択にあたっては以下の3つのことを考慮するといい。

  • 運営者:インスタンスを所有しているのは誰で、どのように管理されているか? プライバシーやセキュリティの保護だけでなく、責任あるコンテンツ・モデレーションを期待できるか。インスタンスのAboutページを閲覧して、そのインスタンスのルールに納得できるかを確認するといいだろう。また、モデレータが法律的、または法律以外の圧力をかけられるリスクについても、インスタンスが運営されている地域の司法権を考慮したほうがよい。
  • コミュニティ:Mastodonには、共通の価値観やニッチな関心を核とした小規模なインスタンスから、誰にでも開かれた大規模な一般向けプラットフォームまで、さまざまなインスタンスがある。インスタンスを選ぶ際には、そのインスタンスにいるローカル・ピア(訳注:隣人)が、あなたが閲覧するコンテンツに直接的・間接的に影響することをお忘れなく。その選択によって、Facebookグループのように密なコミュニティになることもあれば、Twitterのような広範囲に及ぶ露出の場にもなる。
  • 所属:所属するインスタンスはユーザ名の一部に含まれる。たとえばEFFのアカウント名は「@eff@mastodon.social」で、「mastodon.social」の部分がインスタンスになる。この所属は、特定のテーマ・トピックを扱うインスタンスに参加しているという情報として見られることもある。所属するインスタンスが極端だったり、管理が不十分だったりすると、他のインスタンスから「切断(defederate)」されたり、ブロックされたりする。つまり、あなたのメッセージはそれらのインスタンスとは共有されなくなる。とはいえ、一般的な人気インスタンスであれば、そのような心配はほとんど不要である。

新規参入者、とりわけTwitterを使っていたユーザなら、大規模な一般向けインスタンスが望ましいかもしれない。繰り返しになるが、Mastodonでは、フォロワーや設定を失うことなく、あとから簡単にインスタンス間でアカウントを移行できる。つまり、登録したいインスタンスが新規登録を受け付けていなかったとしても、別のインスタンスでアカウントを作って、あとから移行することもできる。いずれは自分のインスタンスを立ち上げたいと考えている人もいるかもしれないが、それについてはこちらで学習するといいだろう。

2. プライバシーとセキュリティの設定

アカウント登録が完了したら、いくつかの重要な設定をしよう。Mastodonにはたくさんのプライバシーやセキュリティ上のメリットがあるが、このガイドでは、ビルトインのアカウント設定のみを取り上げる。

ただし、最適な設定は個々人で異なることに留意してもらいたい。また、セキュリティプランの作成に関する一般的なアドバイスも参考にするといいだろう。

プロフィール設定(Profile Settings)

  • フォローリクエストを要求する(Require follow requests):この設定をオンにすると、他のユーザがあなたをフォローする際にあなたの承認が必要になる。ただし、この設定は、あなたの公開投稿の閲覧できるかどうかには影響しない(次のセクションを参照のこと)。
  • 他のユーザにアカウントをお勧めする(Suggest Account to others):フォロワーをあまり増やしたくないなら、このオプションをオフにすることで、Mastodonインスタンスが他のユーザにあなたのアカウントをアルゴリズムで推薦するのを止めることができる。
  • ソーシャルグラフを隠す(Hide your social graph):これを選択すると、あなたが誰をフォローしているか、誰があなたをフォローしているかを隠すことができる。

プリファレンス – その他(Preference – Other)

  • 検索エンジンのオプトアウト(Opt-out of search engine):これをチェックすると、知らない人があなたのプロフィールを発見しにくくなる。ただ、別の場所(例えば他のソーシャルメディアサイトや別のフェディバースアカウント)にあなたのアカウントが掲載されている場合には、プロフィールへのアクセスは可能であることに注意。
  • 投稿のプライバシー(Posting Privacy)
    • 公開(Public):あなたの投稿はプロフィール上に公開され、フォロワー以外にも共有される。
    • 非リスト化(Unlisted):あなたの投稿はプロフィール上に公開されるが、フォロワー以外には公開されない。投稿が自動的に連合に共有されることはないが、あなたのページを直接訪問すれば、あなたの投稿を閲覧できる。
    • フォロワーのみ(Followers-only):あなたのアカウントのフォロワーだけが、あなたの投稿を閲覧できる。

投稿の自動削除(Automated post deletion)

Twitterにはない機能として、Mastodonには古い投稿を簡単かつ自動的に削除する機能が備わっている。

この機能によって、公開情報の量や期間を制限することができるようになり、と肉オンラインハラスメントやストーキングを懸念する人たちにとっては有効な機能だ。だが、公人や組織であれば、説明責任を果たす上で、投稿を残すことを選択することができる。

いかなる場合であれ、従来のソーシャルメディアと同様に、他のユーザがあなたの投稿をダウンロード/スクリーンショットすることは防げないことには注意が必要である。投稿を消したからといって、なかったことにはできない。また、投稿の削除は、あなたの投稿が共有されたすべてのインスタンスが対応しなければならず、一部のインスタンスでは削除要請が大幅に遅れたり、まったく取り合ってもらえないこともある(とはいえ、めったにないことだが)。

アカウント設定 – 2FAを有効化(Account settings – Enable 2FA)

ここの設定では、パスワードの変更二要素認証の設定、特定ブラウザ・アプリからのアカウントへのアクセス取り消しができる。アカウントにおかしな兆候が見られた場合、このセクションからアカウントへのアクセスをロックできる。

  1. 2FA(Two-factor Auth)を選択
  1. セットアップをクリックし、パスワードを確認
  1. 表示されたQRコードを2FAアプリでスキャン、またはシークレットテキストを指導で入力
  2. 2要素コード(two-factor code)を入力
  3. 有効化をクリック
  1. 設定した2FAデバイスにアクセスできなくなった場合に備えて、10のリカバリーコードを受け取ることができる。

2FAデバイスリカバリーコードは、パスワードマネージャーや暗号化ファイル、手書きの場合には錠付きで保管するなど、安全な場所に注意深く保存する。これらのコードを紛失したり、誰かに見られたりした可能性があるなら、このセクションから新しいコードを生成して、以前のコードと置き換えることができる。

データのエクスポート

最後に、情報をセキュアに保存できるのであれば、定期的にアカウントをバックアップすることをおすすめしたい。Mastodonでは、オンラインでの活動を簡単に保存できるため、あなたが所属するインスタンスが暇を持て余した億万長者に買収されたとしても、あなたのアカウント情報の大部分を新しいインスタンスに簡単に上げ直すことができる。また、古いアカウントから新しいアカウントに誘導することで、あなたのフォロワーを新しい家に招くこともできる。

インスタンスは管理者がコントロールしている。つまり、インスタンスの存続は管理者次第なのである。ウェブサイトと同様に、管理者の継続的な作業と、それが続けられる健康を信頼しなければならない。とはいえ、あなたのインスタンスがある日突然押収されたり、検閲されたり、炎上したりしても、バックアップを取ってあればゼロからやり直す必要はなくなる。

3. アイデンティティの移行と認証

あなたが本当にあなたであることをフォロワーに知らせることは、単にあなたの自尊心を満たすだけでなく、偽情報やなりすましに対抗するためにも重要な機能となる。だが、Twitterの本来のブルーチェック認証システムに相当するものは、Mastodonには(現在のTwitterにも)存在しない。ただ、Mastodonにはいくつかのオプションが提供されている。

新規アカウントの共有

最も簡単な方法は、他のソーシャルメディア・アカウントに新しいMastodonアカウントへのリンクを張ることだ。あなたのユーザ名、bio、ピン留めされたメッセージに新しいアカウントを追加すれば、さまざまな方法でフォロワーがあなたのMastodonアカウントを発見しやすくなる。

この方法は、Mastodonをバックアップアカウントにしようとしている場合でも、良いアイデアだ。ユーザはあなたがどこにいるのかをわからなくなる前に知っておきたいし、早めに共有することで、あなたがフォロワーを維持することを可能にする。

同時に、古いアカウントを削除したくない理由でもある。とりわけ認証済みアカウントにこのメッセージを残しておけば、フォロワーが移行する際にあなたを発見しやすくなるだろう。

ウェブサイト認証

Mastodonにも認証システムが組み込まれているが、中央集権型プラットフォームのそれとはいささか異なる。ブルーチェックや類似のシステムでは、ユーザが身分証などをソーシャルメディア企業に提出し、オンライン上の身元と法的な身元との一致を確認しており、それゆえアカウントを実名で登録しなければならないこともある。要するに、ユーザがその企業のお役所仕事の勤勉さを信頼しなければならないシステムと言える。

一方、Mastodonインスタンスは、あなたのアカウントが外部のウェブサイトを編集する能力を持っていることだけを確認する。これを設定するには、「プロフィール > アピアランス」(Profile > Appearance)に、自分が管理するウェブサイトのURLを追加する。URLのラベルはそれほど重要ではない。

次に、プロフィールのHTMLの行をコピーする。これはあなたのアカウントへのハイパーリンクで、特別なメッセージ (rel="me") が付与されている。このリンクをサイトのHTMLを直接編集して追加する(ユーザ投稿型サイトに貼り付けても、特別なメッセージは除去される)。例えば、雇用主のウェブサイトにこのリンクを追加したり、追加するようお願いすることで、雇用主はそのアカウントが本当にあなたのものであることを保証できる。この認証が行われると、以下の画像のようになる。

こうしたシステムは、従来の侵入的・不透明・恣意的な官僚的認証システムからの顎脚を可能にする。一方で、外部のウェブサイトと、そのユーザをホストするMastodonインスタンスの2つのエンティティを信頼しなければならない、ということにもなる。また、電子メールと同様に、紛らわしいURLがリストされていないかにユーザは注意が必要になる。

そのため、この認証を設定する際には、最もセキュアに管理され、かつ最も認知されている名称のウェブサイトを登録するのが良いだろう。個人ブログは雇用主や学校のサイトよりも確実とはいえないが、複数登録することで確実性は増すだろう。

Mastodon – フェディバースの中へ

さて、これでフェディバースに飛び込む準備が整った。「ホーム」フィードは、あなたがフォローする全員の投稿を表示し、「ローカル」フィードはあなたのインスタンスにいる隣人の投稿を一覧表示し、「連合(フェデレーション:Federation)」フィードは、あなたのインスタンスが取得したすべての投稿を表示する(つまり、あなたのインスタンスの全メンバーとの共有フォローリストみたいな感じ)。これを念頭に置いて、アカウントをフォローしたり、「ブースト」(Twitterで言うところのリツイートみたいなもの)するといいだろう。

Mastodonでは、何を見るかを決めるアルゴリズムは存在しない。むしろキュレーションのプロセスを共有し、個々人のアクションが特定の投稿やユーザのオーディエンスを増やすことになる。

フェディバース、とりわけMastodonは急速に発展しており、機能や設定の変更を定期的に確認することが重要だ。あなた自身のセキュリティプランもいずれ変わるかもしれないため、定期的に設定を確認するリマインダがあれば、必要に応じて設定を見直しできる。

我々は従来のソーシャルメディアプラットフォームよりも優れたものを構築するチャンスを得ている。それは現在進行中のプロセスではあるが、この設定ガイドを参考にして、その変化の一部となるための良いスタートをきることができるはずだ。

Author: Rory Mir / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 1, 2022
Translation: heatwave_p2p