以下の文章は、電子フロンティア財団の「The Battle For Online Speech Moved To U.S. Courts: 2022 in Review」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

EFFとその支持者たちは、昨年12月のものも含め、オンラインの言論を規制しようとする議会の数々の取り組みを撃退してきた。

議会から提出される悪質なインターネット規制案の数々は留まることを知らない。2022年、EARN IT法案が再び提出された。この悪しき法案は、州議会がその提案を児童虐待に結びつける限り、あらゆるウェブサイト、アプリ、プラットフォームの存続に不可欠な法的な保護を剥奪するものとなるだろう。もしEARN IT法が可決されるようなことがあれば、この法律は検閲を促し、企業の暗号化の使用を妨げるものとなるだろう。

この法案は、EFF支持者からの大規模な反対を招き、同法案を支持する委員会を通過したものの、上院で廃案となった。

一方、テキサスフロリダ州議会で昨年可決された2つの法律については、連邦裁判所で審理が行われているが、結論の一致を見てはいない。いずれも憲法修正第1条に違反し、施行されればインターネットユーザに害を及ぼすものとなるだろう。EFFが過去数年にわたって複数の法廷助言書で説明してきたように、いかなるサービスであろうと、他者の言論の伝達を強制することは、サービス側の憲法修正第1条の権利を侵害する。現在のところ、この主張への判断は保留されている。だが、いずれの訴訟も最高裁まで持ち込まれることになるだろう。

インターネットユーザの言論を脅かす裁判所と政治家

フロリダ州では、オンラインプラットフォームが政治家や候補者のアカウントを凍結したり、その発言をファクトチェックしたり、その投稿をモデレーションすることを禁じる法案が議会を通過し、ロン・デサンティス州知事に署名された。この法律は、1日あたり最高25万ドルの罰金を科すことを認めている。我々はこの法律が明白に違憲であることを主張し、今年、米国第11巡回区控訴裁判所も概ね同意した。フロリダ州当局も、この法律に異議を唱える業界団体も、最高裁にこの訴訟を審理するよう求めている。

テキサス州では、グレッグ・アボット州知事が、「保守的な視点や考えを黙らせ」用とするソーシャルメディア企業を阻止すると謳う法律に署名した。EFFはテキサス州の連邦裁判所に、この法案の違憲性を再び訴えた

連邦地裁はこれに同意したものの、米国第5巡回区控訴裁判所は、新聞社からパレードの主催者、オンラインプラットフォームに至るまで、私企業がどのような言論を掲載し、誰がそのサービスで発言できるかを決定できるという修正第1条の基本原則を覆す判決を出した。この判決はオンラインユーザの言論の自由を大きく脅かすものであり、プラットフォームとそのユーザの双方がオンラインコミュニティを形成し、どのような言論を受け入れ、どのようにそれをモデレーションするかの自己決定権を危うくする。

にもかからわず、第5巡回区控訴審は、私企業による検閲への懸念を理由に、テキサス州議会議員にオンライン上の言論を統制する巨大な権限を与えたのである。これは修正第1条の法理としても間違っているし、あまりに危険である。この判決の理屈は、あらゆるコミュニティフォーラムやオンラインサービスを、自らが好ましくないと考える言論の伝達を強制される事態を引き起こしかねない。またEFFは、オンラインサービスの私的な検閲が頻繁に間違いを犯し、有害であることは認めるものの、ユーザの発言のモデレーションに対して政府お墨付きの罰金を科すことがその解決策だとは言えない。むしろ、どのレベルの政治家であろうと、今日の最大規模のサービスの支配力を削ぐことに注力すべきである。

第5巡回区控訴審の判決は、議会が合衆国法典第47編第230条(「通信品位法230条)において、これら基本的な修正第1条の保護を強化したという事実を無視している。この連邦法は、その保護を妨げようとする州法を抑制し、多様なオンラインサービスの発展をもたらしてきた。そのおかげで生み出された大小様々なサービスによって、誰もが発言し、組織化し、変化を唱導することができるのである。コンテンツ・モデレーションは、とりわけ大規模に実施される場合、しばしば不適切に行われている。だが、230条を覆したところでインターネットがより良くなるわけではない。そして、連邦議会、州議会を新たなコンテンツモデレーターにしてはならないのである。

言論に迫りつつある新たな脅威

今秋、最高裁はオンラインプラットフォームがユーザによる多数の投稿を広く検閲することを助長しかねない2つの裁判を審理することに合意した。いずれの訴訟も、TwitterとYouTubeがテロリストのコンテンツをサイトに掲載してしまった場合、テロ組織を支援したことになるという主張に関連している。

1つ目の裁判(Twitter v. Taamneh)は、プラットフォームがサービス上にテロコンテンツが存在していることを一般に知っている場合、反テロ法の民事規定に基づいて請求を行えるかが問われている。EFFは法の拡大解釈に異を唱える団体の連合に参加し、憲法によって保護された言論を検閲する可能性があるとの法廷助言書を最高裁に提出した

2つ目のGonzalez v. Google事件は、オンラインのインターネット言論を保護する重要な法律、通信品位法230条によって、YouTubeへのテロコンテンツの配信を根拠とした請求を阻止できるかが問われている。

230条の保護を狭めれば、プラットフォームはユーザの言論をさらに削除しなくてはならなくなり、さらにユーザがオンラインで発言する多種多様な機会を提供しうる新たなプラットフォームの発展を阻害するおそれがあることを我々は懸念している。

最高裁は2023年の早い時期に両訴訟の弁論を予定している。

本稿は、「Year in Review」シリーズの一部である。2022年のデジタルライツの戦いに関する他の記事もご覧いただきたい。

Author: Joe Mullin and Aaron Mackey / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 26, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Claire Anderson