以下の文章は、Article 19の「EU: Foreign Interference Directive poses risks to freedom of expression」という記事を翻訳したものである。

ARTICLE 19

ARTICLE 19Civil Society Europe欧州ジャーナリスト連盟は、民主主義防衛パッケージの一環として提案された第三国利益代表サービスに関する指令案に対し、深刻な懸念を表明し、即時撤回を求めている。

上記団体は、指令案の曖昧さと不明確さが適用範囲を不当に広げ、EUのメディア業界に悪影響を及ぼし、報道の自由を制限する可能性があると警鐘を鳴らしている。EUは指令案を撤回し、メディアや結社・表現の自由に悪影響を及ぼすおそれのある今後の同様の提案について、徹底的な人権影響評価を行うべきだとしている。

Civil Society Europeの政策概要で分析されているように、この指令案は非政府組織(NGO)に煩雑な報告・登録・情報公開義務を課すだけでなく、EU域外からの資金調達を躊躇させることで、必然的にEU市民社会の活動領域を狭めるものとなる。外国から資金援助を受けるNGOに過剰な義務を課すことは、EUにおける外国の影響力という正当な懸念に対処する有効な方法とは言えない。外国からの干渉との戦いは、結社の自由、プライバシーの権利、表現の自由といった人権を犠牲にして行われるべきではない。

また、EUでメディア機能を果たす主体の規制に関する指令案の文言の曖昧さも、EUのメディアの自由を脅かす懸念材料となっている。指令案の前文25では、欧州メディア自由法および視聴覚メディアサービス指令に基づくメディアおよび視聴覚サービスの提供は対象外とされる一方で、「本指令の意味における第三国の主体のために行われる利益代表活動がメディアサービス提供者によって行われる場合は対象となる」と述べている。

しかし、このような規定は法案の条文には明記されていない。第三国のために利益代表活動を行う主体の広告を配信する場合、そのメディアサービス提供者は当該主体の登録に名前を記載し、関連コストは利益代表サービス提供者が申告する報酬額に含めなければならない。「利益代表活動」の定義が非常に広範で、「第三国のために行動する」ことの定義も欠如しているため、第三国(例えば公共放送)から資金提供を受けたメディアの情報提供や取材活動のすべてが、この指令案の対象となり、登録が必要になる可能性がある。

同様に、利益代表サービスの定義における境界線の不明確さは、第三国当局やそれに関連する団体が後援するプログラムや記事について、その制作者に登録を義務付けるかどうかという深刻な疑問を投げかけている。また、メディア広告を管理する企業が下請け業者とみなされ、公的機関とやり取りする際に外国利益サービス提供者登録番号(EIRN)の提示が必要になるかどうかも明らかではない。

さらに、実際にはEU全域の多くのNGOが、環境問題、社会正義、経済格差など、公共の利益に関する問題について情報を提供する際に、メディアとしての機能を果たしている。現代の人権アプローチでは、ジャーナリズムを市民的機能と捉え、多様な市民社会主体 [1]が担いうるものと解釈している。これは人権委員会 [2]やヨーロッパ人権裁判所 [3]も共有する見解であり、後者は、かつては主に報道機関と結び付けられていた公共の番犬機能が、他の市民社会主体によっても果たされていることを徐々に認めてきた。別の観点からは、多くのプロのメディアが、各加盟国の様々な規制上・実務上の理由から、NGOとして登録することを選択する場合もある。そのため、この指令案は必然的に、メディア機能を果たす市民社会主体にも登録や情報公開を求めることになり、結果としてジャーナリズム全体に萎縮効果をもたらすことが懸念される。

メディア機関が利益代表サービスとして登録することになれば、ジャーナリストは公的機関とのやり取りの際にEIRNを提示しなければならなくなる。これは実質的に、政策立案者や選出された政治家、政府関係者に対し、「外国資金提供メディア」との関わりを避けたいという理由で、取材認定やインタビュー、問い合わせなどを拒否する強力な口実を与えることになりかねない。これは報道の自由とジャーナリストの取材権に対する重大な脅威となる。

我々は、曖昧な専門法を通じて民主主義を悪意ある干渉から守ろうとすることは、効果の面からも、他の民主主義システムへの内部からの干渉の試みを見逃す可能性があるという点からも、適切なアプローチではないと考える。むしろ、一般的な法律こそが、メディアの自由に対する国家の干渉に効果的に対処できる。実際、欧州メディア自由法は、特に公共メディアの編集の独立性を保証し、ニュースおよび時事問題関連メディアの所有権の完全な透明性を確保するための措置を盛り込むことで、この問題に取り組んでいる。

我々は政策立案者に対し、この指令案への支持を再考し、基本的人権を尊重・促進しつつ、民主主義を守るためのより包括的なアプローチへと議論をシフトさせることを強く求める。

[1] ARTICLE 19, International standards: Regulation of media workers. https://www.article19.org/resources/international-standards-regulation-media-workers/

[2] HRC, General Comment 34, Article 19: Freedoms of opinion and expression, para. 44. https://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/docs/gc34.pdf

[3] ECtHR, Animal Defenders International v. the United Kingdom [GC] – 48876/08. Judgment 22.4.2013 [GC]. https://hudoc.echr.coe.int/eng#{%22itemid%22:[%22002-7454%22]}

EU: Foreign Interference Directive poses risks to freedom of expression – ARTICLE 19

Author: ARTICLE 19 (CC BY-NC-SA 2.5)
Publication Date: September 04, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Christian Lue