以下の文章は、Article 19の「Jordan: Marking a year of oppression, fresh calls to scrap Cybercrime Law」という記事を翻訳したものである。

ARTICLE 19

ヨルダンの新サイバー犯罪法施行から1年が経過した。この法律は、国家による抑圧の道具として振るわれ、オンライン上の表現の自由や情報アクセス、プライバシーといった基本的人権を制限している。その結果、自己検閲と恐怖の空気が蔓延し、ヨルダン国民が公の場で議論を交わし、政策や当局を批判できる数少ない場が閉ざされてしまった。

我々、署名する国内外の人権団体は、新たに選出されたヨルダン議会に、新サイバー犯罪法を撤廃するか、大幅に改正すること、そして、サイバー犯罪に対処するすべての法律が、表現の自由、プライバシー、適正手続きに関する国際人権法および基準を完全に遵守する要請する。さらに、ヨルダン当局に対しても、表現の自由を行使しただけで逮捕・起訴されたジャーナリストや人権擁護者、一般市民に対する容疑をすべて取り下げ、即刻釈放するよう求める。

このサイバー犯罪法は2023年7月27日、市民社会やジャーナリスト、政党との十分な協議もないまま、ヨルダン議会で慌ただしく採択され、人権団体から激しい批判を受けたにもかかわらず、2023年9月12日に施行された。新法は2015年のサイバー犯罪法を改悪したもので、とりわけ「フェイクニュースの拡散」「不道徳の煽動」「オンライン上での人格攻撃」「騒乱教唆」「社会平和への脅威」「宗教に対する侮辱」といった新たな規定を設け、刑事罰の対象を大幅に拡大した。これらの規定は、極めて広範かつ曖昧で、表現の自由への制限は合法性、正当性、比例性、均衡性の原則に従うべきとする市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)第19条に明らかに反している。それどころか、表現の自由を行使する個人を処罰する広範な権限を当局に与えてさえいる。

人権団体の調査によると、この1年間、当局は新サイバー犯罪法を盾に、批判的意見を表明するジャーナリストや人権擁護者、一般市民を次々と標的にしてきた。アムネスティ・インターナショナルの報告では、2023年8月から2024年8月にかけて、ヨルダン当局は数百名をサイバー犯罪法違反で起訴している。その中には、パレスチナ連帯を表明したり、ガザに対する当局の政策を批判したり、平和的抗議を呼びかけるソーシャルメディアへの投稿を理由に起訴されたジャーナリストも含まれる。

  • 2024年2月、弁護士で人権擁護活動家のムータズ・アワドは、アラブ諸国のイスラエルとの貿易協定を批判するX(旧Twitter)への投稿を理由に身柄を拘束された。2024年7月には、サイバー犯罪法第17条「騒乱煽動」の罪で起訴され、5000ヨルダン・ディナール(約7000米ドル)の罰金を科された。
  • 2024年3月には、あるジャーナリストがオンライン活動とパレスチナ支持デモの報道に関して、厳しい取り調べを受けた。幸い、このジャーナリストは後に裁判所で無罪となった。
  • 2024年6月、ジャーナリストのヒバ・アブ・タハは、2024年4月に発表した記事で「敵対勢力に加勢したヨルダンの役割」を批判したとして、アンマンの刑事裁判所からサイバー犯罪法に基づき1年の実刑判決を言い渡された。問題の記事は、イスラエルを標的としたイランのロケットがヨルダンの領空で迎撃された事件を取り上げた。裁判所は、「フェイクニュースの拡散、または政府機関や公的機関への侮辱もしくは名誉毀損」および「騒乱煽動、社会平和への脅威、または憎悪や暴力の煽動」の罪でアブ・タハに有罪判決を下した。
  • 2024年7月には、ジャーナリストのアフマド・ハッサン・アル・ゾウビが、2022年末の燃料価格高騰抗議デモへの当局の対応を批判するFacebook投稿を理由に逮捕された。これは2023年8月の控訴裁判所が「騒乱煽動」で下した有罪判決に基づくものだった。

サイバー犯罪法の施行から1年。この法律がヨルダンの人権状況を著しく悪化させていることは明白である。

我々は、ヨルダン当局に対し、サイバー犯罪法を濫用して反対意見を封じ込め、処罰することを直ちにやめ、表現の自由への弾圧をやめるよう強く求める。同時に、新たに選出された議会に対しても、サイバー犯罪法をはじめとする表現の自由を侵害する法律の撤廃、または国際人権法に準拠するよう大幅に改正することを要求する。

署名:

  • Ahel(Jordan)
  • Access Now
  • American Center for Justice (ACJ)
  • Amnesty International
  • ARTICLE 19
  • Center for Defending Freedom of Journalists (Jordan)
  • Electronic Frontier Foundation
  • European Saudi Organisation for Human Rights (ESOHR)
  • Front Line Defenders
  • Gulf Centre for Human Rights (GCHR)
  • Jordan Open Source Association (Jordan)
  • Justice Center for Legal Aid (JCLA–Jordan)
  • SMEX
  • Tamkeen for Legal Aid and Human Rights (Jordan)
Jordan: Marking a year of oppression, fresh calls to scrap Cybercrime Law – ARTICLE 19

Author: ARTICLE 19 (CC BY-NC-SA 2.5)
Publication Date: September 13, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Makeandtoss / Markus Spiske