以下の文章は、電子フロンティア財団の「Protecting “Free Speech” Can’t Just Be About Targeting Political Opponents」という記事を翻訳したものである。
ホワイトハウスが月曜日に公表した大統領令「言論の自由の回復と連邦政府による検閲の終結」は、米国民の憲法修正第1条の権利を真に保護するという観点からは的外れなものである。
この大統領令は、バイデン政権下における特にソーシャルメディア企業での「モデレーション、プラットフォームからの排除、その他の言論抑制」の取り組みについて調査を命じている。さらに、司法長官に対して「過去4年間」の憲法修正第1条に反する政府活動の調査を指示している。大統領令の一部は以下のように述べている。
「誤情報」「偽情報」「悪意ある情報」との戦いを口実に、連邦政府は重要な公共の議論において政府の望む物語を推し進めるような形で、米国全土の市民の憲法で保護された言論の権利を侵害した。
しかし、この大統領令には政府の透明性に対するコミットメントが明らかに欠如している。EFFをはじめとする市民社会グループが策定したオンラインコンテンツのモデレーションに関するガイドラインであるサンタクララ原則では、「政府およびその他の国家主体は、自らのモデレーション決定への関与について、要求の法的根拠ごとに分類し、コンテンツ措置やアカウント停止への要求に関するデータを報告すべきである」と述べている。この大統領令はそのような原則を受け入れるには至っていない。
また、特定の期間のみを調査対象とする、標的を絞った手法にも大いに問題がある。民間メディアプラットフォームへの説得、懇願、あるいは強要といった政府による非公式の働きかけ(いわゆる「jawboning」)は、少なくとも2011年以降、歴代の米国政府が行ってきた。そうした圧力の実態を誠実に調査するのであれば、単一の政権期間だけに限定すべきではない。前政権だけがそうした圧力をかけていた、あるいは主要な発信源だったと示唆するのは、事実を歪めることになる。この期間設定からは、不適切な政府の行為を是正しようという意図よりも、政治的報復の意図が透けて見える。
過去のオンラインコンテンツのモデレーションにおける政府の関与を検証すること自体は重要である。しかし、誠実な調査であれば、政敵の行動だけを対象にしたり、過去の行為だけに限定すべきではない。また、調査の結果も、大統領府にのみ報告するのではなく、明確な期限内に一般に公開する方が、市民にとって有意義である。さらに調査主体も、起訴の可能性を示唆する司法長官ではなく、監察総監に委ねる方が適切だろう。
オンラインコンテンツのモデレーションにおける過去の政府の関与を振り返ることは、確かに良いことである。しかし、誠実な調査であれば、政敵の行動に時間を限定するのではなく、過去の行動だけに限定すべきではない。また、結果を大統領府にのみ送付するのではなく、デッドラインを設け公表を義務づけた報告書の方が、国民にとって有益であろう。最後に、この調査は、起訴の可能性を示唆する司法長官ではなく、監察総監に委ねるべきである。
我々がこれまで、繰り返し、述べてきたように、憲法修正第1条は、政府が民間企業に言論の検閲を強要することを明確に禁じている。この原則は、書店やクレジットカード処理業者などの仲介者に圧力をかけて他者の言論を制限しようとする試みを阻止してきた。だが、ユーザの言論に関するすべてのコミュニケーションが違憲というわけではない。プラットフォームが信頼できる情報源として政府機関にコンタクトするような場合には、むしろ有益であることもある。
言論の自由を真に重視した就任初日の大統領令を期待していた人々にとって、トランプ大統領の1月20日の大統領令は、良く言っても失望を招くものである。
Protecting “Free Speech” Can’t Just Be About Targeting Political Opponents | Electronic Frontier Foundation
Author: Joe Mullin / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 22, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Aaron Burson