ウラジーミル・プーチン大統領に提出された報告書によると、インターネット・オンブズマンのドミトリー・マリニチェフは、連邦通信局が先月行ったTelegramのブロッキング措置に関する調査が必要だと述べている。数百万の無関係なIPアドレスを巻き込んでしまったにもかかわらず、連邦通信局は生じうる被害の評価を行っていなかったとマリニチェフは指摘している。
先月、モスクワ法廷は、ロシアにおけるTelegramの禁止を許可したことで、インターネットは戦場と化した。
ロシア連邦通信局の指示により、ロシア全土のISPはTelegramをブロッキングすべく数百万のIPアドレスに網をかけた。その効果は劇的で、同時に悲劇的でもあった。Telegramが頑としてオンラインに残り続ける一方、連邦通信局の先走りにより無数の無関係なサービスが巻き込まれ、停止に追い込まれてしまった。
それから数週間、連邦通信局は、無関係なGoogleやAmazonのIPアドレスを除外することで、混乱を収拾しようとしてきた。しかし、巻き添え被害は広範囲に及び、連邦通信局が実施したウェブ・ブロッキングというアプローチに問題はなかったのか、これほどのコストをかけてまでやるべきだったのか、が疑問視されはじめている。
今週、ビジネス・オンブズマン(訳註:ロシアの「オンブズマン制度」)のボリス・チトスが、ウラジーミル・プーチン大統領に提出した年次報告によって、この問題はさらに掘り下げられることになりそうだ。『ロシア企業の陳情および提言書』のなかで、インターネット・オンブズマンのドミトリー・マリニチェフは、連邦通信局が実施した措置については検察庁による捜査が必要だとのコメントを寄せている。
タス通信によると、マリニチェフは、連邦通信局が積極的な技術的手段を用いたTelegramの強制的停止を試みた際、「判決を独自に解釈」することでその指針を決定していたと指摘している。
「連邦通信局は情報リソースのブロッキングを実施するにあたり、生じうる関連被害の推定を行っていなかった」とマリニチェフは述べている。
1500万を超えるIPアドレスがブロックされたが、その大半はTelegramとは無関係のものであった。マリニチェフは、多くの人たちが巻き込まれ被害を被ったと指摘する。
「(ブロッキングの結果)銀行や政府、そして多数のロシア企業のインターネット・リソースが一時的にアクセス不能状態に陥った」と彼は報告する。
マリニチェフは大統領に対し、「営利企業の情報リソースの利用可能性を侵害」し、「ロシア連邦の一元化された通信ネットワークおよび情報インフラストラクチャの品位、持続可能性、機能を脅か」した「連邦通信局の措置の適法性や妥当性」について、検察庁による捜査を実施するよう提言している。
5月はじめ、Telegramへのアクセスを可能にしているとして 、50のVPN、プロキシ、匿名化プラットフォームがブロックされていると報じられた。5月22日の報道では、その数は80以上に膨れ上がっている。一方で、10のサービスがTelegramへのアクセスを遮断したことで、ブロックを解除されたという。
また、連邦通信局は今週、トレントサイトやストリーミングプラットフォームへのブロッキングの取り組みを強化。この新たな動きのなかで、連邦通信局はすでにブロッキングされているサイトへのアクセスを可能にする、少なくとも47のミラー、プロキシをブロックするようISPに命じている。
Putin Asked to Investigate Damage Caused By Telegram Web-Blocking – TorrentFreak
Publication Date: May 26, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: brunoricardosantosaraujo
“Apple didn’t side with us.”
ロシア政府のTelegramに対する圧力は未だに続いており、5月28日には連邦通信局がAppleに対し、App StoreでのTelegramアプリの提供を中止するよう法的拘束力のある要請を行っている。
ロシア連邦通信局は2018年5月28日付けでAppleに「ロシアのユーザーに対してTelegramを提供しないこと」「ロシアのユーザーにプッシュ通知を送らないこと」という内容を要求しました。
ロシア連邦通信局のAlexander Zharov氏によると、ロシアはAppleに対して法的拘束力のある文書を送っており、返答を待っているところとのこと。「Appleのような多国籍企業はお役所仕事なので、1カ月以内に返答が来るものと考えています」とZharov氏は語っており、1カ月以内に返答が得られなかった場合は制裁行為を考えているようです。
ロシアがAppleに高セキュリティのメッセンジャーアプリ「Telegram」をApp Storeから削除するよう要求 – GIGAZINE
この要請に対するアクションかは不明だが、Telegramのパヴェル・デュロフCEOによると、AppleはTelegramアプリのアップデートを拒否しているという。デュロフCEOは、Telegramユーザ全体に占めるロシア地域のシェアは7%であるにもかかわらず、Appleは全世界の(2億人を超える)Telegramユーザすべてのアップデートを拒否していると批判。アップデートが承認されないために、GDPR対応のアップデートもできないと嘆いている。
これを報じるニューヨーク・タイムズ紙は、サンバーナーディーノ銃乱射事件でのロック解除をめぐるFBIへの対応とはえらい違いだと皮肉っているが、ごもっともである。