今週、EUは議論を呼ぶ「アップロード・フィルタ」計画を前進させた。反対者たちは、この計画が「ミームを禁止」し、我々の知る「インターネットを破壊する」と警告する。もしそのレトリックが真実なのであれば、インターネットはとっくの昔に破壊されていて、その反発も生まれることもなかっただろう。
インターネット上の検閲は非常に重要な問題であり、EUが提案する「アップロード・フィルタ」についても多数の見出しを飾っている。
ソーシャルメディア上では、「ミーム」が共有できなくなると戦々恐々とする声が広がっている。また、多くのジャーナリストが、見出しに「検閲」との文字を掲げ、インターネットが危機に瀕していると煽る。
彼らに共通しているのは、この計画が実施されれば、巨大な企業がインターネット上で共有できるものを――フェアユースであろうとなかろうと――決定することができてしまう、という主張だ。こうした懸念には一定の根拠があるものの、さして新しいものではない。
我々が「検閲マシン」と呼ぶものは、すでに稼働しているのだ。
たとえば、YouTubeは定期的に動画を削除している。権利者からの申立を受けて手作業で削除されることもあるが、大半はYouTubeの自動化された著作権フィルタに引っかかって削除されている。
どれほどの「ミーム」がこのプロセスで殺されたのかは定かではないが、多くの人が「インターネットを破壊する」検閲だと表現しているものは、すでに世界最大のビデオ共有プラットフォームで運用されているのだ。
しかし、この問題はさらに深刻化している。著作権の問題に加え、YouTubeは広告掲載に適さないコンテンツを投稿するアカウントをデモナイズ(収益化を無効)している。ある程度の表現の自由はあるものの、そのすべての表現で収益化はできないのである。
ただし、このポリシーはEUに強制されたものではない。EUによる検閲を警告するビデオを投稿するまさにそのプラットフォームが、一般的なビジネス慣行として実施しているのである。それを念頭にこれを見てほしい。
もちろん、この問題はYouTubeに限定されるものではない。ほかの多くのサイトが、こうした自動化フィルタを使用している。
たとえば今週、Twitterは子どもが歓声を上げているビデオを削除した。その背景にワールドカップが流れるテレビが写り込んでいたためだ。また、著名なアカウントを含め、多数のアカウントが、フェアユースの可能性があるにもかかわらず、著作権侵害の疑いがあるとして凍結されている。
さらに、Facebookはネットワーク上に投稿される著作権侵害コンテンツを取り締まっていることでも知られている。YouTubeと同様、自動フィルタを使用して、著作権侵害の可能性のあるコンテンツを検出しているのだ。
以上のことから、YouTube、Facebook、Twitterなどのサイトが、EUの検閲マシンに抗議する人々の活動の場となっていることは実に皮肉だ。
もちろん、EUの計画は、小規模企業に対し、現在の活動規模を遥かに超える著作権侵害対策にコストを支払うよう強制することになる。スタートアップには重い責任が課され、不確実性は増すことになる。しかし、検閲マシンそのものは今に始まったことではないのだ。
「アップロード・フィルタ」への抗議が用いるレトリックを適用すると、インターネットはこの世界のTwitterやFacebook、YouTubeによって『破壊されて』いることになる。
現在の環境においては、多数の大手プラットフォームが、著作権侵害を防止するためにフィルタリングツールなどに頼っている。権利者を守るというその目的は理解できるものの、その結果、巻き込まれ被害が発生している。
朗報としては、YouTubeやFacebook、Twitterはインターネットではない、ということだ。インターネットから活気が失われることはないだろう。歴史が証明しているのは、検閲が試みられると、懸命な人々がそれを打ち負かす新たな手法を考え出す、ということだ。
奇妙に思われるかもしれないが、これらすべてのプラットフォームにオルタナティブが存在する。そのオルタナティブは、人々が自らホストし、コントロールできる場所だ。海賊版のためではなく、適法な作品を共有するための場だ。過剰な検閲マシンに怯える必要もない。
本当の問題は、ほとんどの人がこうしたツールを使うための準備が整っていないことだ。
20年前、インターネットは「生み出す場」であった。しかし、今日ではおおよそ「消費する場」となってしまった。もちろん、今でも多数のクリエイターやコントリビューターが存在しているが、そのほとんどが自らコントロールのできない巨大プラットフォームに依存している。
これらのプラットフォームは非常に便利で、多くのオーディエンスを抱え、さらに生計を立てられるほどに稼ぐことすらできる。しかし、そのプラットフォームはまた、そこで何をし、何を共有できるかを決める権力や権限を手にしている。EUに強制される以前から、多くのプラットフォームがその力を行使(濫用)しているのだ。
Twitterでの行動主義、YouTubeでの怒りの発露以外にも、自らの手で問題を解決することができる。ただし、それは労力を必要とする……。
さて、誰かそのキャンペーンを開始できるだろうか?
Censorship Machines are ‘Destroying The Internet’ As We Speak? – TorrentFreak
Publication Date: June 24, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Manuel Gonzalez Noriega / CC BY 2.0