以下の文章は、電子フロンティア財団の「Court Orders Google (a Monopolist) To Knock It Off With the Monopoly Stuff」という記事を翻訳したものである。
連邦裁判所は先日、Androidユーザが競合アプリストアに乗り換えやすくするようGoolgeに命令し、巨額資金を使った競合他社の排除禁止など、様々な禁止事項を課した。
そのひとつひとつの措置が、モバイルアプリストアでの競争促進という重要な目的の達成に向けて、精緻に設計され、的確に狙いを定めて作られている。
まさに待ち望んでいた判決だ。
背景を説明しよう。モバイル OS の世界は、Google(Android)と Apple(iOS)という2強による複占状態(duopoly)にある。両社は自社のアプリストア(Google の「Google Play」と Apple の「App Store」)を通じてソフトウェアを配信している。両社は市場支配力と法的圧力を巧みに操り、ユーザにすべてのアプリを自社ストアから入手させるよう仕向けている。
これがチョークポイントを作り出している。あなたがアプリを開発し、それを私が使いたいと思っても、まず Google(または Apple)の承認を得てストアに掲載してもらわなければならない。つまり、GoogleやAppleからの様々な要求を飲まなければ、開発者であるあなたは私というユーザにリーチできない。その最たるものがお金だ。それもべらぼうな額を要求される。両社はアプリが生み出すすべての収益から30パーセントを徴収する。アプリの購入代金だけでなく、その後のアプリ内取引のすべてにこの料率が適用されるのだ。さらに両社は、アプリ外のウェブサイトでの購入を促したり、その場合の割引を提供することを厳しく禁じるルールまで設けている。
念の為に言っておくと、30パーセントというのは法外な数字だ。「一般的な」決済手数料は2~5パーセント程度で、これですらコロナ禍以降に40パーセントも値上がりしたあとの数字だ。この値上げ自体がこの業界での独占力の表れなのだが、GoogleとAppleは Visa/Mastercardという巨大カルテルの10倍もの手数料を要求している(小規模企業向けの割引が適用されても、それでも5倍だ)。
大ヒットゲーム Fortniteを手がけるEpic Gamesは、この問題で何年もGoogleと Appleを追及し続け、昨年12月についに対Google訴訟で勝利を収めた。
今週の判決は、その勝利の延長線上にある。GoogleによるAndroid向けアプリ市場での違法な独占的地位の獲得と維持を認定した裁判所は、その是正措置を判断しなければならなかった。
これが実に素晴らしい判決だった。ぜひ判決文を読むか、The Vergeの優れた要約を見てほしい。
今後3年間、Google は以下の基準を満たさなければならない。
- Android向けサードパーティ製アプリストアを認め、Google Play で提供されているアプリと同じものを配信できるようにすること(開発者はこれをオプトアウトできる)
- サードパーティ製アプリストアをアプリとして配信し、通常のアプリと同じようにGoogle Playからダウンロードして切り替えられるようにすること
- Googleの30パーセントの収益マシンだけでなく、どの決済処理業者も利用できるようにすること
- アプリベンダーがアプリ内購入以外の代替決済手段をユーザに案内できるようにすること
- アプリベンダーが自由に価格設定できるようにすること
また、以下のような資金力を背景にした競合排除も禁じられた。
- アプリベンダーに対し、Google Playでの先行配信や独占配信を条件にインセンティブを提供すること
- アプリベンダーに競合アプリストアを避けるインセンティブを提供すること
- ハードウェアメーカーにGoogle Playのプリインストールを条件にインセンティブを提供すること
- ハードウェアメーカーに競合アプリストアをインストールしないようインセンティブを提供すること
これらの規定は、Googleのもうひとつの敗訴とも関連している。Google対司法省では、同社による検索エンジンの独占が認定された。この裁判では、Google が想像を絶する巨額の資金(年間250億ドル超)を携帯電話メーカー、ブラウザメーカー、通信事業者、そして Apple にまでばら撒き、Google 検索をデフォルトにしていた事実が焦点となった。その結果、ユーザが目にするすべての検索ボックスが Googleに誘導され、より優れた検索エンジンが登場しても、ユーザ獲得の余地すら残されていなかったのだ。
今回の是正措置が秀逸なのは、Googleのアプリ独占の本質に切り込んでいる点だ。Googleは何十億ものユーザを自社プラットフォームに縛り付け、ソフトウェア開発者を従わせてきた。ユーザが容易にアプリストアを切り替えられるようにし、Googleがその自由な選択を妨げることを禁じることで、裁判所は「33億の Android ユーザを人質に取るのではなく、最高のサービスを提供することでしか支配的地位は維持できない」と Googleに突きつけたのだ。
相互運用性、つまり既存のシステムに新しい機能やサービス、製品を接続できる仕組みは、デジタルテクノロジーの隠れた超能力だ。巧みに設計された相互運用性命令によって、複雑なテック問題を解決できることを裁判所が認識したのは喜ばしい。
Googleは控訴する姿勢を見せている。Appleが今年初めの同様の訴訟で勝訴したにもかかわらず、自社だけが標的にされていると主張する。確かに、別の裁判所は Appleの件で間違った判断を下した。
とはいえ、Appleも安泰とは言えない。今年施行された EUのデジタル市場法は、Googleに対する今回の差止命令とほぼ同じ内容を含んでいる。Appleは法令順守を事実上拒否するという対応で、新たな火種を作り出した。
その間にも、テクノロジーをユーザのために機能させる手段として、他の裁判所や立法者、規制当局が相互運用性の可能性を模索し続けることを期待したい。今回の命令は、Fortniteのようなゲームだけにとどまらない広範な影響を及ぼすはずだ。30パーセントものアプリ税は、Googleのマグロ網に掛かったイルカのような独立系ゲーム開発者から報道機関まで、あらゆる組織の首を締めているのだから。
Court Orders Google (a Monopolist) To Knock It Off With the Monopoly Stuff | Electronic Frontier Foundation
Author: Cory Doctorow / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: October 29, 2024
Translation: heatwave_p2p