以下の文章は、EDRiの「Why EDRi is leaving X and where to find us」という記事を翻訳したものである。
2022年10月のマスクによるX買収以降、我々は段階的な撤退に向けた準備を進めてきた。最近の展開として、マスクが第2期トランプ政権に参画したことで、これまでにない形でプラットフォームの権力乱用が加速している。そのため、我々は退出時期を前倒しすることにした。EDRiは他の多くの組織や個人と足並みを揃え、2025年1月末までにXを去ることを決定した。なお、1月20日には、フォロワーの皆様にMastodonへの移行を呼びかける重要なXスペースを開催する予定である。
これまでの経緯
2025年はEDRiがTwitterに参加して16年目となる。当時、TwitterもEDRiも現在とは異なる存在だった。我々のネットワークは小規模ながら活気に満ちた集団で、世界にメッセージを発信するためのプラットフォームを必要としていた。Twitterは設立から3年目で、共同創業者のジャック・ドーシーが経営を担っており、その年の最も重要な出来事はリツイート機能の実装だった。
2022年10月のマスクによる買収以降、我々はXからの撤退戦略の策定に取り組んできたそして今、マスクの第2期トランプ政権入りという事態を受け、プラットフォームの権力乱用は新たな局面を迎えている。
こうした状況を踏まえ、EDRiは2025年2月1日までに、多くの組織とともにXを去ることを決意した。
1月20日には、Mastodonへのスムーズな移行をサポートするためのXスペースを開催する。
なぜXを去ることにしたのか?
第一に、2022年のマスク買収以降、コンテンツモデレーションのポリシーと運用が大きく変更された。その結果、虚偽情報や極右の陰謀論、憎悪表現が野放しになり、シリアやパレスチナなどEU域外にも深刻な影響が及んでいる。さらに、プラットフォームのポリシーも改定され、ユーザの生体認証データの収集や暗号化メッセージへのアクセスまでもが許可されるようになった。
第二に、マスクの米国政権に参画したことで、テック企業と国家の境界線が曖昧になりつつあり、これは民主主義の根幹を揺るがす危険な攻撃となりかねない。したがって「立法者」の定義そのものを問い直す必要に迫られており、マスクのトランプ政権入りは、法の支配への挑戦であると同時に、ビッグテックの暴走を抑制するために必要な法整備を行う国家の権限と責務をも脅かす。
第三に、マスクによる世界各国への内政干渉は、濫用的で不安定化を招くものである。マスクはすでに、英国、オーストラリア、カナダ、ルーマニア、イタリア、ドイツ、グリーンランド、ブラジル、ベネズエラ、米国など、各国の政治論争や選挙に介入してきた。自身の意に沿わない指導者を中傷し、極右的な見解や政治家を後押しするなど、政府への圧力行使において底辺への競争を引き起こしている。
最近のMetaの方針転換や、同社CEOがトランプやマスクの非合理的な主張に同調する姿勢を見れば、マーク・ザッカーバーグもこの底辺への競争に参入したことは明白である。マスクとザッカーバーグは、自社のプラットフォーム機能やポリシー、そして莫大な社会的影響力を公然と利用して、ビッグテックの有害なビジネスモデルや権力乱用に対する新たな規制の阻止を図っている。
我々がこれまでXにとどまってきたのは、このプラットフォームが市民社会組織や草の根活動家にとって、既存メディアでは報じられにくい問題に声を上げ、人々を動員し、啓発活動を行うための重要な触媒として機能していたからである。しかし、今やその弊害が利点を上回るようになった。
EDRiは常に、すべての人が安全に、そして尊厳を持って自己表現できる、公正でオープンかつ分散型のインターネットというビジョンに資するソーシャルメディアネットワークやプラットフォームを支援し強化することを目指してきた。Xからの撤退は、このビジョンに向けた一歩である。
今後の活動拠点
ここ数年で、EDRiを含む何百万のユーザがXをを離脱してMastodonへと活動の場を移してきた。Mastodonはオープンソースのプロトコルに基づく分散型ネットワークである。今後、EDRiはMastodonでの活動を本格化させるとともに、同様のプラットフォームが必要な公的支援を受けて発展することを期待している。
あなたもXを離脱できる!HelloQuitXキャンペーンがその方法を紹介している。移行のタイミングを探っている方には、1月20日をお勧めしたい。この日は、Xのオーナーであるイーロン・マスクが、ドナルド・トランプ大統領就任と同時に米国政府の要職に就く日である。
この1月20日に、我々は多くの仲間とともにMastodonへの移行を呼びかけるXスペースを開催する。この機会に、個人でも組織でも、Mastodonを最大限活用する方法を学んでいただきたい。
- Mastodonでのフォローに加え、LinkedInでも情報を発信している。また、以下のニュースレターも配信しているので、ぜひ購読を検討していただきたい。
- EDRi-gramは2週間ごとの配信で、デジタルライツに関する最新動向を専門家が分析。EDRiのメンバーやスタッフが定期的に発信する旬な情報に触れるには、最適な手段である。
- サポーター向けメーリングリストでは、キャンペーン情報を共有し、EUの政策決定に参画する機会を提供している。欧州議会議員へのメール送付や請願書への署名、各地でのデモンストレーションへの参加など、集団行動の呼びかけに活用。配信は2ヶ月に1回程度である。
- プレスリリースリストでは、重要な案件について4-5ヶ月に1回程度、プレスリリースを配信している。
Author: EDRi (CC BY-SA 4.0)
Publication Date: January 20, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Christian Lue