以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「The Fagin figure leading Elon Musk’s merry band of pubescent sovereignty pickpockets」という記事を翻訳したものである。
![](https://i0.wp.com/p2ptk.org/wp-content/uploads/2022/09/cory_fv.png?resize=12%2C12&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/p2ptk.org/wp-content/uploads/2025/02/krause-fagin.webp?resize=750%2C817&ssl=1)
怪物たちが我々の国家と経済を乗っ取り、想像力までも支配しようとしている時代にあって、一筋の光明がある。それは、怪物たちの正体を見抜き、その実態を我々に明かしてくれる、優れたライターたちの存在だ。モーリーン・トカシクもその一人である。
https://prospect.org/topics/maureen-tkacik
Wiredのヴィットリア・エリオット、リア・フェイガー、ティム・マーチマンも、マスクのDOGEクーデターについて目覚ましい報道を展開している。
https://wired.com/author/vittoria-elliott
ネイサン・タンカスも独自の調査で次々とスクープを打ち出している。
だが、マスクの破壊工作員による混沌とした電撃戦を認識可能なプレイブックへと変換し、すべてを腑に落ちる形で描き出したのは、やはりThe American Prospect誌のトカシクだった。
マスクの破壊工作員に関する報道の多くが、政府機関のサーバールームを荒らし回るブロッコリーヘアのZ世代ブラウンシャツたちに注目する中、トカシクは彼らのボス、トム・クラウスに照準を合わせた。彼女は印象的な表現で、クラウスを「イーロン・マスクの青二才主権泥棒メリーバンドを率いるフェイギン[悪党の親玉]的人物」と評した(な、素晴らしいライターだって言ったろ?)。
https://prospect.org/power/2025-02-06-private-equity-hatchet-man-leading-lost-boys-of-doge
クラウスはプライベートエクイティ[PE]の略奪者だ。BroadcomからCitrix、VMWareに至るまで、大手テック企業のPE買収のプレイブックを事実上発明した男である。ビジネスモデルを物品販売[所有モデル]からレンタル[定期アクセスモデル]へと転換し、不当な手数料を課し、品質を引き下げ、価格を何度も引き上げ、有能な従業員を片っ端から解雇する。彼は卓越した優れたメタクソ化の達人、メタクソ化忍者なのだ。
クラウスには、金儲けをしながら人々を不幸にする確かな嗅覚がある。彼はCitrixとVMWareの合併を指揮し、The Cloud Software Groupという恐るべき会社を生み出した。リモートワークツールを売る会社でありながら、最初に打ち出した方針の一つが全従業員のリモートワーク禁止だった。しかし、従業員たちに職場への出勤を強制し、引っ越しまでさせておきながら、オフィススペースを売却すれば利益が出ることに気付くと、手のひらを返したように方針を転換した。
クラウスは従業員の福利厚生を次々と打ち切った。大量の残業をこなした管理職への感謝デーも、資格を取得した従業員へのボーナスも廃止した。従業員への贈り物として配布していた記念品制度も打ち切り、その上、437,574.97ドルに上る記念品の請求書の支払いまで拒否した。支払い拒否はこれだけではない。3年契約を結んでいたフィンテック企業のFinLyncも、未払訴訟に踏み切らざるを得なかった。
クラウスは無駄を省く賢明な経営者などではない。すべての機能を引き剥がし、機械を最低限動かすために必要なものだけを渋々と復旧する人物だ(マスクが彼を気に入るのも当然だ。まさにTwitterのプレイブックそのものである)。トカシクが報じているように、クラウスはCitrixの巨大法人顧客向けのサービスと信頼性システムを壊滅させた。毎月巨額の支払いを行い、競合他社から毎日のように営業の電話を受けていた大企業のCIOたちのシステムである。
空軍の障害退役軍人で大規模公共機関を担当していたデビッド・モーガンのような顧客サービス担当者は、ストックオプションの権利確定直前に1時間前の通告で解雇された。後に、モーガンが担当していた公共機関から苦情が相次いだ。問題を解決する知識も権限も持たないインドのコールセンターのオペレーターとしか連絡が取れなくなったのだから。
先月、Citrixはすべてのカスタマーサポートエンジニアを一掃した。軍事関連の顧客は、米軍との業務を法的に禁じられているオフショアのサポートチームに回されている。
Citrix/VMWareに限った話ではない。これと同じような破壊的惨状は、Broadcomでもクラウスによって引き起こされている。いずれのケースでも、プライベートエクイティの上層部が送り込んだクラウスは、有用な事業を破壊して一時的な巨額の利益を搾り取り、顧客にも従業員にも価値のない抜け殻を残していった。
これがDOGE[効率化省]のプレイブックだ。すべては略奪のためにある。世代を超えて忍耐強く築き上げられたものを地に落とし、その炎で身を温め、灰だけを残していく。これこそがレーガン時代以降、プライベートエクイティの略奪者たちが「先進」経済に仕掛けてきたことだ。航空会社、ファミリーレストラン、葬儀場、ドッグトリマー、おもちゃ屋、製薬会社、緩和ケア、透析、病院のベッド、食料品店、自動車、そしてインターネット――彼らはこれらすべてを食い物にしてきた。
トランプは略奪者だ。彼をはクリプロブロのような略奪者階級から選ばれた。クリプトブロたちは、労働者が慎重に積み立てた退職金を無価値なシットコインに変換しながら、自分たちは完璧に正当な「法定」通貨を持って逃げ出すことを夢見ている。マスクはこのマインドセットの究極形だ。他人が作り上げた生産的な事業の功績を我が物とし、実際のエンジニアリングを金融工学に置き換える男である。マスクとクラウスは、まさにそら豆の鞘の中の二つの豆のようだ。
トカシクが引用する匿名のDOGE職員によれば、DOGEの管理職は残虐性を基準に採用されているという。「DOGEの基準は、何人解雇したか、解雇をどれだけ楽しんでいるか、人々の幸福への影響をどれだけ無視できるか、だ……トム・クラウスが抜擢されたのも無理はない。彼らの理想の従業員なのだから!」
クラウスが略奪者サークル以外で知名度が低いのは、彼にとって利点であって欠点ではない。クラウスのような詐欺師は上流社会への参入を切望している。これは、サックラー家――オキシ・パンデミックを引き起こし、これまでに80万人以上の米国人を死に追いやったオピオイド犯罪一族――が、自分たちの家族企業パーデュー・ファーマとの関係を隠蔽することに躍起になっていた理由と同じだ。彼らは自分たちの名前が美術館や博物館の看板にだけ結びつくことを望み、億万長者の麻薬密売人としての素顔を報じたジャーナリストたちを弁護士を使って脅迫した(私もその脅迫を受けた一人だ)。
匿名であることには正当な理由もある――内部告発者は当然匿名性を必要とする。しかし、匿名性にこだわる企業幹部がいたら、それは極めて危険な兆候と心得るべきだ。Pixsyを例に取ろう。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの初期バージョンを使用する際のささいなミスを誘発させ、数百から数千ドルを支払わなければ訴訟を起こすと脅す、詐欺的な「コピーレフト・トロール」ビジネスを展開する会社である。
Pixsyの最高経営責任者ケイン・ジョーンズは、私に法的脅迫を送りつけた詐欺師の給与所得者と、その詐欺を運営していた幹部の名前を暴露したとして、EUのGDPRを持ち出して私を脅そうとした(「脅そうとした」と言うのは、私自身がGDPRのロビー活動に関わっており、これがGDPR違反に当たらないことを熟知しているからだ)。
こうした連中は、自分たちが人々から金を巻き上げ、不当な損害を与えるビジネスに従事していることを十分承知している。彼らが秘密主義を貫くのは、見知らぬ人々の正当な怒りを買うビジネスを展開しており、その誰かがいつか姿を現して、不正を追及するかもしれないことを知っているからだ。
これこそが、UnitedHealthcareがルイジ・マンジョーネによるブライアン・トンプソンCEO暗殺で大パニックに陥った理由だ。これはゲームのルールを根底から覆すものだった。幹部たちは、人々の人生をどれほど破壊しようと、その結果から完全に隔離されていなければならなかった。自分たちが何者であるかは知られるべきでないし、ましてや誰かに見つけられることなどあってはならない――これが大原則だった。
しかし、さらに重要なのは、人々が彼らに怒りを向けることを許してはならないということだ。彼らは、株主至上主義の鉄則に縛られた有限責任会社という不死の群体生物における、単なるソフトウェアエージェントとして振る舞う。人々の人生を破壊しながら大金持ちになっても、それは個人的な問題にはなりえないということにしたい。だからこそUnitedHealthcareは、がん患者の手術中に呼び出され、UHCの担当者から患者の入院指示について叱責を受けた医師を訴えると脅しているのだ。
UHCは、オースティンの医師エリザベス・ポッターが、UHCの真実――その混沌、堕落、無関心さ――についてTikTokで告発し、バイラルしたことに怒り心頭だ。UHCの幹部たちは、マンジョーネがこれを個人の問題に変え、企業という責任逃れの隠れ蓑を引き裂いて、非難の矛先を正しく向けたことを恐れている。つまり、上層部の(主に)男たちに、である。
これは、アダム・コノーバーが最新のFactuallyポッドキャストでPropublicaのT・クリスチャン・ミラーとパトリック・ラッカーにインタビューした際に指摘した点でもある。
https://youtube.com/watch?v=Y_5tDXRw8kg
ミラーとラッカーは、米国最大の健康保険会社向けに請求拒否サービスを提供する、CignaのEvocoreについての衝撃的な調査報道を行った。
健康保険会社のCEOがMRIやがん治療への支払いを減らしたいと考えたとき、Evocore(すべての請求承認を処理する会社)に伝えれば、顧客に許可されるMRIの数を減らすバーチャルダイヤルを回してくれる。このダイヤルは請求や事前承認が拒否される確率を上げ、その結果、医師たちは医学的に必要な検査さえ躊躇するようになり、患者たちは自己負担を強いられることになる。
会話の終盤、ミラーとラッカーは、保険会社の一般従業員たちは、株主を潤すために人を殺そうと思ってこの業界に入ったわけではないはずだと語った。彼らは心から人々を助けたいと考えている。しかし、幹部連中はそうではない。この極めて裕福な人々は、コスト削減と自己の利益のために人々を殺すことが自分たちの仕事だと信じている。システムの問題について個人的に責任を負うべきなのは、まさにこれらの人々だ。システムを設計し、運営しているのは、彼らなのだから。
だからこそ、こうした非道で卑劣な行為の責任者の名前を挙げることが重要なのだ。WiredとPropublicaが、クラウスの指揮下で連邦政府を荒らし回る「青二才主権泥棒団」の正体を暴くことにも、同じ意味がある。
https://projects.propublica.org/elon-musk-doge-tracker
彼らは国家と国民に対して重大な罪を犯している。この事実は永遠に記録され、生涯にわたって彼らに付きまとうべきだ。これは彼らの訃報の見出しとなり、パーティーで紹介された人々は、名前を聞いた途端に表情を変え、慌てて握手を切り上げ、踵を返してトイレに駆け込み、手を洗い流すべきなのだ。彼らの人生の残りすべてにわたって。
こうした人々の名前を挙げることだけでは略奪を止められないが、確かな一歩にはなる。昨日、「優生主義者」を自称し、「インド人への憎悪を正常化」しようとし、「民族外との結婚には金で釣られても応じない」と公言していた25歳のマルコ・エレズが解雇された。彼は職を失い、生涯、愚かな人種差別的な暴言で解雇されたブロッコリー頭のブラウンシャツとして記憶されることになる。
https://npr.org/2025/02/06/nx-s1-5289337/elon-musk-doge-treasury
DOGEの首席破壊者としてのクラウスの正体が暴かれた後、(陰謀論に関する最高の著作『Republic of Lies[嘘の共和国]』の著者である)アンナ・メルランは、「今や国中が、プライベートエクイティに買収された職場の経験を味わうことになる」と書いた。
https://bsky.app/profile/annamerlan.bsky.social/post/3lhepjkudcs2t
まさにその通りだ。我々はいま、米国政府全体――米国そのもの――に対するプライベートエクイティ式の略奪を目の当たりにしている。トカシク以上にこれを描き出すのに相応しい人物はいない。彼女ほどプライベートエクイティの正体を見抜いている者はないからだ。
https://pluralistic.net/2023/06/02/plunderers/#farben
皮肉なことに、この一連の出来事は、トランプがついにプライベートエクイティの最も詐欺的なトリックである「キャリードインタレスト」の抜け穴をふさぐと宣言した時期と重なった。この抜け穴のおかげで、PE幹部たち(そしてより小規模ながらヘッジファンドマネージャーたち)は、数十億ドルもの個人所得税を回避できていたのだ。
「キャリードインタレスト」は金利とは無関係だ――これは16世紀の船長たちのために作られた法律で、彼らが「運んだ」貨物への「利害関係」に由来する。
https://pluralistic.net/2021/04/29/writers-must-be-paid/#carried-interest
トランプは2017年の選挙戦でもこの抜け穴の廃止を約束したが、略奪者産業の猛烈なロビー活動を受けて、議会が阻止した。今回は本気で廃止に乗り出す可能性もある――グリーンランドの住民が身をもって知ったように、彼の行動は何より予測不能なのだから。
https://prospect.org/world/2025-02-07-letter-between-friendly-nations
仮にトランプが成し遂げたとしても、略奪者たちと「投資家階級」は、さらなる減税と労働・環境規制の緩和という形で、トランプ政権から巨額の贈り物を受け取ることになる。しかし、トランプがそうする可能性は極めて薄い。イヴ・スミスがNaked Capitalismで指摘するように、カナダとメキシコの関税で行ったのと同じように、重要でない些細な変更を加えただけで革命的な何かを成し遂げたと嘘をつくことになるのだろう。
最悪の月になりそうだ。しばらくは好転しないだろう。暗い気持ちになると、私の生きている間には良くならないのではないかと思ってしまう。だが、少なくともトカシクのような人物がいて、これらの出来事を記録し、説明し、文脈の中に位置づけてくれている。彼女は本当に素晴らしい。クラウスに関する報道を発表したその同じ日に、Prospectは彼女によるもう一つの必読の記事を掲載した。アレックス・ジョーンズの複雑な破産工作を掘り下げたものである。
https://prospect.org/justice/2025-02-06-crisis-actors-alex-jones-bankruptcy
その記事は、不道徳な金持ちたちを被害者から守るもう一つの重要な抜け道、エリート破産裁判所の奇妙な世界を明らかにしている。クラウスとエリート破産システムという二つの複雑な題材を同じ日に解き明かすなんて、彼女の筆力にはただただ感嘆するばかりだ。
我々には長い戦いが待っている。このシステムを支配している人々――その名前を覚え、決して忘れてはならない人々――は、簡単には退場しないだろう。しかし、少なくとも我々は彼らの正体を知り、その目論見を理解し、手口の全容を把握している。混沌とした暴挙の連続に見えたものの正体は、Red Lobster、Toys R Us、Searsを殺したのと同じプレイブックだった。そして我々には、このプレイブックに従う義務などない。
Pluralistic: “The Fagin figure leading イーロン・マスク’s merry band of pubescent sovereignty pickpockets” (07 Feb 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: February 7, 2025
tTranslation: heatwave_p2p