以下の文章は、電子フロンティア財団の「Bad Amendments to Section 702 Have Failed (For Now)—What Happens Next?」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

昨日、下院は大問題のある法案の審議を否決した。その法案は、外国情報監視法(Foreign Intelligence Surveillance Act)702条の権限を危険なレベルまで拡大する一方、その延長といくつかの小手先の修正を盛り込んだものだった。EFFは、ビッグブラザーのお気に入りの大規模監視法702条と、その制定以来ずっと戦い続けている。この法律は現在、4月19日に失効する予定となっている。

決定を先延ばしにした昨日の判断は、少なくとも一時的には良いニュースだ。超党派の議員チーム(ジム・ジョーダン下院議員、ジェロルド・ナドラー下院議員ら)による「改革」を装った最悪の結末、つまり702条の大規模監視拡大を阻止したのだ。とはいえ、戦いは続く。まだまだ声を上げ続けなければならない。

昨日の投票によって、下院司法委員会(HJC)と下院情報特別委員会(HPSCI)のメンバーが出した702条改正案も審議しないことになった。以下で議論するように、HJCの修正案は、第702条の令状なしの監視に対する必要最小限の保護を含んでいるが、HPSCIの修正案は、702条に意味のあるセーフガードを課さず、むしろ702条が米国人の市民的自由にもたらす脅威を増大させるものとなっている。

第702条は、国家安全保障と情報収集という大義名分のもと、政府が米国内の外国通信を収集することを、幅広い目的のために明示的に許可している。多くの米国人には穏当に聞こえるかもしれないが、国外との通信には、米国人が米国国外の人々(あるいはサービス)とやりとりする膨大な量の通信が含まれる。政府の見解では、情報機関や国内の法執行機関でさえも、702条データベースの特定の米国人の通信を照会する理由があることを裁判官に示さなくても、これらの「付随的に収集された」通信にバックドアから令状なしでアクセスできることになっている。

最近、第702条に対する多くの修正案が提出された。一般的に、HJCのメンバーによる修正案は、実際の改革を目指している(ただし、我々を十分に満足させるものではない)。対照的に、HPSCIのメンバーは、第702条を拡大し、監督を弱体化させるような悪質な修正案を提案している。ここでは、HJCのまともな改革案とHPSCIの悪質な修正案の両方について、また後者が復活した場合に生じうる問題について分析する。

HJCの改正案は必要な改革へと導く

HJCメンバーが出した最重要の改正案は、緊急時や本人同意があるとき、マルウェア関連の特定の場合を除き、政府が米国人の通信記録を求めて702条データベースを検索する際に、裁判所の事前承認を義務づけるものだった。別の702条法案に関する最近の考察でも触れたように、プライバシーや表現の自由を守る相当な理由と特定性が702条の令状なし監視には決定的に欠けているため、米国人の通信記録の検索という「個別の修正第4条事案」に正当な理由があるかを裁判官を納得させる必要があるのだ。これは絶対に必要な最低限の防護策であり、今後の702条延長の試みには必ず盛り込まれなければならない。

もう1つの重要な改正案は、NSAの”abouts”収集の再開を禁じるものだった。Abouts収集とは、特定の監視対象者との通信でも、対象者から発信された通信でもなく、単にその対象者に言及した通信をかき集めることを指す。NSAは 外国情報監視裁判所(FISC)一連の判断を受けて自主的にabouts収集を中止したが、この判断は監視の合法性に疑問を投げかけるものだった。しかしNSAは、「技術的な解決策でより信頼性の高い方法が見つかれば」abouts収集を再開する余地を残していたのだ。現行法の下では、NSAが収集を再開する際、議会に通知さえすればよいことになっている。この改正案は、abouts収集再開には議会の明示的な承認を得るよう求めるもので、この監視権限の過去の乱用を考えれば、注目に値する。

議会が採択すべきもう1つのHJC改正案は、FBIに対し、702条データベースでの米国人の通信記録検索の件数を議会に四半期ごとに報告するよう求め、議会の有力メンバーに秘密主義で悪名高い FISC(外国情報監視裁判所)の手続きへの出席を認めるものだ。FBIによる米国人の通信検索とFISC手続きをもっと議会が監視できるようになるのは良いことだ。しかし、議会がこの改正案を可決したからといって(まあ、可決すべきなのだが)、議会と米国民には、702条監視についてはるかに大きな透明性を求める権利がある。

HPSCIの改正案は 702条 をさらに拡大する

HPSCIの改正案は必要な改革とは正反対に、702条監視の範囲をさらに広げるものだ。

あるHPSCI改正案は、FISAの「外国情報」の定義に「麻薬対策」を追加するもので、多くの米国人がFISAに期待する対テロ目的から大規模監視の範囲をさらにずらしてしまう。実のところ、FISAの「外国情報」の定義はもともとテロリズムに限定されてはいない。この改正はさらにそれを拡大し、FISAで「過剰死亡の原因となる合成薬物、オピオイド、コカイン、その他の薬物の国際的な製造、流通、資金源」だけでなく、それらの原料に関する情報まで集められるようにしようというのだ。すでに702条の下、米国人の通信が大量に収集され、政府がその検索によって市民の自由を踏みにじってきた経緯を考えれば、この改正案が許容する収集範囲の拡大は容認できない。

別の改正案は、移民・亡命希望者の審査を702条で行うことを認めるものだ。昨年公開されたFISC意見書によれば、政府は何年もこの種の権限を求めてきたが、FISCは繰り返しそれを却下し、ようやく2023年になって初めて認めたという。FISC意見書は大幅に編集されているため、現在の702条での移民・ビザ関連監視の範囲やこれまでの情報機関の要求を知ることはできない。いずれにせよ、HPSCIが移民・亡命希望者への702条の保護を法的に弱めようとしているのは深く憂慮される。すでに、政府が政治的見解を理由に人々のビザを取り消した事例もある。この改正案は、そんな動きを加速させるものとなるだろう。

最後のHPSCI改正案は、より多くの事業者に、より多くの状況で702条に基づく顧客情報の引き渡しを義務づけようとしている。2023年、外国情報監視再審裁判所は、ある企業がある状況下で702条の対象になるという政府の主張を退けた。外国情報監視再審裁判所の意見書は大幅に編集されているため、この秘密のプロセスの詳細までは分からないが、702条の対象事業者の範囲を広げる不吉な試みであることはわかる。HPSCIはこの改正案で、すでに政府に友好的であることで知られる裁判所の判断を法律で覆そうとしているのだ。今週初めの下院規則委員会公聴会でHPSCI委員長マイク・ターナーも、この改正案は外国情報監視再審裁判所の決定への対抗措置だと認めていた。

今後はどうなる?

昨日の公聴会が、4月19日の期限までに議会が702条について検討する最後の機会になるとは考えにくい。今後数日中に、この監視権限の延長をめぐる攻防がまた繰り広げられるはずだ。私たちの主張ははっきりしている。プライバシーを守り、透明性を高め、プログラムを法の枠内に収めるために不可欠な改革なしに、702条を延長するべきではない。

Bad Amendments to Section 702 Have Failed (For Now)—What Happens Next? | Electronic Frontier Foundation

Author: Brendan Gilligan, Matthew Guariglia, and Cindy Cohn / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: April 11, 2024
Translation: heatwave_p2p