以下の文章は、Fight for the Futureに掲載された、90超の人権・LGBTQ+団体が署名する「Letter: 90+ LGBTQ and human rights organizations oppose KOSA」というオープンレターを翻訳したものである。
2022年11月28日
Re: S.3663の未成年者のプライバシーとオンライン上の安全への脅威に対する反対意見
シューマー院内総務、キャントウェル委員長、ウィッカー委員長各位
我々、以下に署名する団体は、子どものプライバシー、オンライン・セーフティ、デジタル・ウェルビーイングが保護されるべきだと考える。だが、S.3663「子どもオンライン安全法」(KOSA)は、プロバイダに侵入的フィルタリングや監視ツールの使用を事実上強制し、プライベートで安全なコミュニケーションを危険にさらし、子どもや成人のデータ収集を促し、学校などの公的機関による未成年者への重要なサービスの提供を阻害し、すべての人々、とりわけ子どもたちを害するものである。我々はこの法案に反対する。
KOSAは、17歳未満の者が利用する可能性のある幅広いオンラインサービスに、未成年者への危害を防止するとして、負担が大きく、曖昧な「注意義務」を課している。未成年者に対するハラスメントや搾取、精神的トラウマを防ぐというKOSAの目的は称賛に値するが、残念ながらこの法律は若者に有害な結果をもたらすだろう。KOSAはオンラインサービスに対し、未成年者への一連の危害を「防止」するよう求めているが、これは事実上、未成年者が特定のコンテンツにアクセスすることを防ぐためのコンテンツフィルタリングを採用することを求めるものである。コンテンツフィルタリングの不正確性は広く知られており、児童インターネット保護法に対応して実施されている学校や図書館のフィルタリングは、性教育やLGBTQ+の青少年のためのリソースなど、重要な情報へのアクセスを制限している。オンラインサービスは、州検事総長の「どのような情報が青少年に適切か」という政治的主張に基づく過剰なモデレーション圧力にさらされることになる。LGBTQ+をテーマにした書籍が学校図書館で禁止され、トランスジェンダーの子どもたちに医療を提供する人々が「グルーミング」の罪で不当に起訴されている今、KOSAは弱い立場の若者勝ちが情報にアクセスするための重要な手段を、またひとつ断ち切るものとなる。
KOSAはまた、未成年者が誰と通信できるかを管理したり、特定のコンテンツへのアクセスを制限するなど、未成年者のサービス利用を保護者が監視できるようにすることをプラットフォームに要求している。保護者による管理ツールは、幼い子どもたちがインターネットの利用を学ぶための重要な保護手段となり得るが、KOSAは年長の未成年者も対象としており、実質的に保護者が15歳、16歳の子どもたちの監視を可能にすることも可能にする。年長の未成年者は、プライバシーや情報アクセスに自らの権利を有しており、すべての親子関係が健全で建設的であるわけではない。KOSAは、家庭内暴力や親から虐待されている10代の若者をデジタル監視や管理の対象にする危険性をはらんでおり、脆弱な若者が助けや支援を求めることを阻むおそれがある。また、未成年者がアクセスできるコンテンツをフィルタリング氏、保護者による管理を可能にする強い動機を作り出すことによって、KOSAは、若者がメンタルヘルスに関するリソースにアクセスし、バッドアクターからデータを保護するエンドツーエンド暗号化技術へのアクセスを危険に晒す恐れすらある。
さらにKOSAは、プラットフォームがすべてのユーザについて、より多くの個人情報を収集するよう逆に促進することにもなる。KOSAは、17歳未満が「合理的に利用する可能性のある」プラットフォーム(事実上、すべてのオンラインサービスが当てはまる)に対し、未成年者のアカウント検索の制限や、通知機能などの未成年者のサービス利用を促進する機能の制限など、未成年者のサービス利用に厳格な制限を設けるよう求めている。こうした機能は、幼児にはありがたいかもしれないが、成人が利用するメッセージアプリ、ソーシャルメディア、デートアプリ、その他コミュニケーションサービスの有用性を根本的に損なうことになる。したがって、サービスプロバイダは、こうした厳しい制限を若者のアカウントにのみ適用するために、成人ユーザと未成年ユーザを区別する年齢確認技術を採用せざるをえなくなる。年齢確認は、生年月日や政府発行の身分証明書など、個人を特定できる情報をプラットフォームに提供するようユーザに要求することになるため、データ漏洩のリスクを始めとするユーザのプライバシーを脅かし、匿名でアクセスできなくなることでオンラインでセンシティブな情報へのアクセスが萎縮するおそれがある。議会はプライバシー設定や安全ツールを未成年者だけの適用する年齢制限を設けるのではなく、包括的なプライバシー法の制定によって、年齢の別なくすべてのユーザが強力なプライバシー保護の恩恵を受けられるようにすることに注力しなければならない。
最後に、KOSAの規定は、学校を始めとする未成年者にサービス提供する主要機関に過剰な負担を強い、その業務を損なう恐れさえある。学習プラットフォーム、学生情報システム、オンライン成績表、保護者用ポータル、受給資格確認のために政府機関と学生データを共有するためのツールなど、学校環境において学生がさまざまなテクノロジーを利用するようになってきている。だが、KOSAの規定は、この種の教育テクノロジーを含む幅広いオンラインサービスから、親や子どもがアルゴリズムシステムからオプトアウト氏、未成年者の個人データを削除することを広く認めている。これは学校や交通機関の割当といった中核的なサービスを提供するアルゴリズムシステムを制限し、不利な成績や懲戒処分などの恒久的な記録の削除をも可能にするおそれがある。この2つの条項だけでも、本法案が未成年者への中核的な教育サービスの提供に意図せぬ結果をもたらすことがわかる。学校向けに調整されていない幅広い規定は、生徒への教育やその他サービスの提供に意図せぬ負担を強いるおそれがある。
つまり、KOSAは称賛に値する目標を掲げてはいるが、未成年者に対しても、成人に対しても、プライバシー、安全性、情報アクセスの権利を脅かす、予期せぬ重大な結果をもたらすものである。我々は議員らに対し、KOSAを他の緊急法案に付随させて本会期中に強行するのではなく、単独法案として審議するよう要請する。そして、若者のプライバシーと情報アクセスの権利、安全で信頼できるオンラインコミュニケーションの場を保護するソリューションを生み出すことに注力するよう求めるものである。
署名:
The 6:52 Project Foundation, Inc.
Access Now
Advocacy For Principled Action In Government
Advocates for Youth
Advocating Opportunity
American Association of School Librarians
American Atheists
American Civil Liberties Union
American Humanist Association
American Library Association
Arkansas Black Gay Men’s Forum
ARTICLE 19
Assembly Four
Black and Pink National
Center for Democracy & Technology
CenterLink: The Community of LGBT Centers
COLAGE
Copia Institute
Defending Rights & Dissent
EducateUS: SIECUS In Action
Electronic Frontier Foundation
Equality Arizona
Equality California
Equality Federation
Equality Michigan
Equality New Mexico
Equality Ohio
Equality Texas
Equality Utah
Equality Virginia
Erotic Service Provider Legal Education & Research Project
EveryLibrary Institute
Fair Michigan Justice Project
Fair Wisconsin
Fairness Campaign
Fight for the Future
FORGE, Inc.
Freedom From Religion Foundation
Freedom Network USA
Freedom Oklahoma
Freedom to Learn Advocates
Georgia Equality
GLAAD
GLSEN
The Human Trafficking Prevention Project
Indivisible Bainbridge Island
Indivisible Bellingham
Indivisible Eastside
Indivisible Plus Washington
Indivisible Whidbey Island
Internet Society
Jews for a Secular Democracy
Lexington Pride Center
LGBT Technology Partnership
Los Angeles LGBT Center
Louisiana Trans Advocates
Lower Columbia Indivisible
Loyola University Chicago School of Law NLG chapter
Massachusetts Transgender Political Coalition
National Center for Lesbian Rights (NCLR)
National Center for Transgender Equality (NCTE)
National Health Care for the Homeless Council
New America’s Open Technology Institute
Old Pros
One Iowa
Organization for Identity and Cultural Development (OICD)
OutNebraska
PDX Privacy
Presente.org
PROMO – Missouri
Ranking Digital Rights
Reframe Health and Justice
Restore the Fourth
Right To Be
Secular Student Alliance
The Sex Workers Project of the Urban Justice Center
Silver State Equality-Nevada
Snohomish County Indivisible
Superbloom (previously known as Simply Secure)
SWOP Behind Bars
TAKE
TechFreedom
TransAthlete.com
Transgender Education Network of Texas (TENT)
TransOhio
The Tor Project
University of Iowa College of Law NLG Chapter
University of Michigan Dearborn – Muslim Student Association
WA People’s Privacy
Wallingford Indivisible
Whitman-Walker Institute
Wikimedia Foundation
Woodhull Freedom Foundation
Wyoming Equality
Yale Privacy Lab
Publication Date: December 28, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Ben Wicks