こんなにひどいDMCA削除の濫用が許されてよいのかと憤慨していると、さらにひどい事例が舞い込んでくる。今週、極めつけともいえる事例をFOXが提供してくれた。
先週日曜に放送された『ファミリーガイ』の最新話「Run, Chris, Run」のなかで、ピーターとクリーブランドは1980年代のファミリーコンピュータのゲーム『ダブルドリブル』をプレイしていた。ピーターは毎回3ポイントシュートを決めるバグを悪用し、クリーブランドをフルボッコにする。その場面は、YouTubeにもアップされている。
驚かれるかもしれないが、実際にこのバグは存在する。2009年2月に『sw1tched』というユーザがアップロードしたビデオの説明文にはこのようにある。
「僕ら兄弟は、80年代にリリースされた『ダブルドリブル』というファミコンのソフトをプレイしていて、自動シュートバグを発見した。既知のバグ技かもしれないけど、特定の場所でリリースすると自動的にシュートまで持っていく。ハーフコートショットの成功率も80%まで上げることができた。けど、これ以上上げるのはもう簡便だな……」とSw1tchedは記している。
興味深いことに、sw1tchedがアップロードしたこの動画は、日曜に放送された『ファミリーガイ』で使われた動画とまったく同一のものであった。つまり、Foxがそのゲーム動画と寸分違わずにプレイをして録画したのでなければ、FoxはYouTubeからその動画を入手したということになる。
Foxはsw1tchedの動画を合法的に使えるのかという問題については専門家にお任せするが、この事件はそれにとどまらず、さらにトンデモない不条理を引き起こす。『ファミリーガイ』の放送直後、FoxはYouTubeにクレームを入れ、ダブルドリブルのバグ動画を著作権侵害を理由に削除させたのだ(Daily Motionのミラー)。
この極めつけに不当な著作権削除について、TorrentFreakはFight for the FutureのCEOジェフ・リオンに話を聞いた。偶然にも、彼は問題のエピソードを見たばかりだという。
「この件はおそらく、YouTubeのコンテンツIDシステムが、著作権の所有者やフェアユースを考慮せずに自動的に削除してしまう事例の1つということになるでしょう。FOXのファミリーガイの最新回が放送されると同時に、彼らのロボットはその番組が使われた映像の削除を開始します。今回のケースでは、彼らがインディペンデント・クリエイターから盗んだ映像を削除したということになります」
「自動化されたDMCA削除システムの問題は、ロボットがフェアユースと著作権侵害を区別することができないということです。誇張でも何でもなく、これは大規模な検閲なのです」と彼は続ける。
「著作権者は(消そうとしている)動画が本当に著作権侵害かどうかを証明する必要はなく、彼らのスキャンソフトは自動的にその動画を削除できます。動画を削除された場合、削除されたクリエイターの側が、自身にその動画を投稿する権利をがあることを証明しなくてはなりません。クリエイターが作品を守るために反論通知を出すことをためらえば、彼らの収入は失われ、オンラインプラットフォームから永遠に追放されることになります。そうしてフェアユースと、インターネットにおける言論の自由が蝕まれていくのです」
全体の俯瞰してみると、実にめまぐるしく、とてつもなく滅茶苦茶である。もともとの『ダブルドリブル』というゲームは1987年に発売され、ファミリーガイが初めて放送された1999年の12年前である。sw1tchedがこのバグ動画をアップロードしたのは7年以上前のことである。そこにFoxがやってきて、その動画をコピーし、番組に使用し、著作権を主張し、そのバグ動画をインターネットから消し去ってしまった。
不条理この上ない。
アップデート1:Takedownabuse.orgがこの一件を取り上げ、署名を開始した。
アップデート2:バグ動画がYouTube上に復活した。
アップデート3:Foxのスポークスマンはこの件について、TorrentFreakに以下のコメント:「問題の動画は、弊社テレビ番組ファミリーガイを海賊行為から守るための継続的な取り組みの結果、削除されました。この状況に気付き次第、コンテンツは復旧されました」
アップデート4:YouTubeユーザのHamzaによると、ゲーム『テクモボウル』 を録画した動画もファミリーガイのエピソードで使われたことがあり、その動画も同様に削除され、その後復旧されたという。
“Fox ‘Stole’ a Game Clip, Used it in Family Guy & DMCA’d the Original – TorrentFreak”