以下の文章はTorrentFreakの「Fake MPAA Asks Google to Remove Thousands of URLs, Including MPAA.org」という記事の翻訳である。

TorrentFreak今週、奇妙な削除要請が確認された。ハリウッド業界団体のMPAAが、Googleの検索結果から自身のURL(MPAA.org)を削除するよう要請していたのだ。実際にはホンモノのMPAAではなく、海賊版ストリーミングサイトを標的としたなりすましの仕業だった。

Googleは2012年から検索に関連する著作権削除通知に関する透明性レポートを公表している。

このデータベースのおかげで、著作権者がどのURLを検索エンジンから削除するよう要請しているのかを第三者が確認できる。

Googleはこれまで40億を超えるURLを処理してきた。こうした削除要請の大半は正当な主張ではあるが、手違いや間違いも少なくなく、なかには明白な悪用も見受けられる。

これまで我々が取り上げてきたケースの多くは、ニュース記事オープンソースソフトウェア、さらにはFacebookのホームページに至るまで、完全に適法なコンテンツをターゲットにした事例だ。しかしこの1年、これとは別の、憂慮すべきトレンドが広がっている。

Googleは週に数百万の通知を受け取っており、そのなかにはかなりの数の「フェイク」が含まれている。ここでいうフェイクとは、送信者が他者あるいはその代理人になりすましていることを意味している。つまり、本来著作権者を主張し得ない者が権利を主張しているということだ。

我々が異変に気づいたのは昨年末のことだった。なりすましが多数の海賊版サイトを標的に疑わしい削除要請を乱発していたのだ。その送信者はおそらく海賊版サイトで、ライバルの海賊版サイトをGoogle検索結果から排除しようとしたのだろう。さらに最近では、なりすましたちはNetflixまで削除しようとし出している。

本日お伝えするのは、新たな、そしてさらに露骨な事例だ。彼らはついにハリウッドの強力な海賊版対策団体「MPAA」になりすますようになった。

この数週間、GoogleはMPAAを自称する者から大量の通知を受け取っている。MPAAは米国の団体であるが、問題の通知は「MPAA UK」と「MPAA Member Studios DE」の代理者から送信されていた。

だが、以下のリストのいずれも適法な申し立てではない(「MPAA Member Studios US」もフェイクである)。何者かがMPAAになりすまして、数万のURLに対する削除要請を送信しているようだ。

フェイクMPAA

削除要請をさらに詳しく見てみると、あるパターンが確認できる。この要請は、ごく少数の「海賊版」サイトを標的にしているのだ。たとえば、トルコの映画ストリーミングサイト「Filmifullizle.tv」は、わずか1週間のうちに1万を超えるURLに削除要請を送信されている。その大半はフェイクMPAAから提出されたものだった。

ほかにもFilmmodu.com、Yabancidizi.org、Fullhdfilmizleten.org、Filmionlineizle.tvといったトルコのストリーミングポータルも、フェイクMPAAや別のなりすましによって同様の攻撃を受けている。

興味深いことに、こうしたなりすましは随所に雑さが見受けられる。下記の画像のように、侵害コンテンツの掲載サイトにMPAAのホームページを、「元作品」の欄に侵害URLを入力したりしている。幸いにも、GoogleはホンモノのMPAAを削除していない。

海賊版サイトはMPAA?

上述したように、こうしたなりすましは、競争に勝ち残るために競合する海賊版サイトをGoogle検索結果から消し去ることをねらったもので、明らかな悪用である。

本稿執筆時点で、Googleはいくつかのフェイク削除要請を鵜呑みにし、「侵害」が主張されたURLを削除している。だが、同社はこの問題に気づいていないわけでもないらしく、複数の申し立てを「フェイク」と判断している。

こうしたなりすましの横行は、削除プロセスの信頼性を損ねる。Googleは対応に手一杯で、MPAAもなりすましを快くは思っていないだろう。

とはいえ、なりすましの被害にあっているのはMPAAだけではない。 MarvelWarner Bros.MarkMonitorDigiGuardiansMarketlら権利者や著作権対策団体を騙るなりすましも確認されている。

Fake MPAA Asks Google to Remove Thousands of URLs, Including MPAA.org – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: July 14, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Simon Ray