以下の文章は、TorrentFreakの「Facebook Sees Copyright Abuse as One of the Platform’s Main Challenges」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

Facebookによれば、同社の「Rights Manager」システムの悪用と誤用は極めて深刻なのだという。EU委員会が先日開催した「第17条」関係者会合で、 Facebookはこうした悪用への対策が主要課題となっており、適法なコンテンツがブロッキングされないようにするために多くの時間を費やしていると語った。

Facebookはこの数年、複数の著作権侵害対策を講じてきた。

通常の削除要請の処理に加え、著作権侵害コンテンツを自動検出して、権利者がコンテンツを削除・収益化できる「Rights Manager」ツールの提供も開始された。

先日、欧州委員会が開いた会合で、Facebookはこの自動システムの仕組みについて詳細な説明を行った。この会合は、EU著作権指令第17条のためのソリューションについて利害関係者間の対話を促すことを目的としている。

Facebookのプレゼンテーションでは、Rights Managerプロダクトマネージャーのデイブ・アクセルガードが、著作権保護コンテンツのマッチングがどのように自動化されているかを説明した。さらに、権利者がそれに応じてどのような選択肢をとれるのか、ユーザがシステムの悪用や誤用に対してどのように異議申立ができるのかについても詳しく説明された。

会合には、著作権者に加えてデジタル権利団体の代表者などさまざまな関係者が出席した。Facebookはすべての当事者の利益を念頭に置いているとしながらも、Right Managerの悪用が深刻な問題となっていることを特に強調した。

「私たちは、適法なコンテンツがブロッキングされないようにするシステムの構築に多くの時間を割いています」とアレックスガード。

「不適切なブロッキングが発生するのは、Rights Managerにアクセスした著作権者が、自らが権利を所有していないコンテンツをツールにアップロードするためです」

著作権者が自ら所有していないコンテンツをアップロードした場合にも、オーバーブロッキングが発生する。とりわけ、ビデオ編集などで自らが権利を有しないコンテンツが含まれる場合に誤ブロッキングが生じやすい。

Facebookは、この種の誤用や悪用を検出・防止するための対策を進め、自動検出システムによって正当なコンテンツを削除しないように努めているという。この点は、第17条の導入に伴う「アップロードフィルター」の実装においても留意すべき点だ。

「誤用は重大な問題です。複数年に渡ってRights Managerを運用してきましたが、バランスを考慮しなくてはならないセンシティブな問題であることがわかりました」とアレックスガードは言う。

Facebookはさまざまな方法で悪用を制限しようとしている。同社はRights Managerツールへのアクセスを認証された特定の著作権者グループにのみ認めている。また、再生可能な参照ファイルの提出が求められるため、すべての異議申立を適切に審査することもできる。

さらに、削除やブロッキングなどの自動化を実行できるのは、Rights Managerユーザの一部に限られる。これは、著作権をよく理解していない一部の小規模な権利者が、間違って削除・ブロッキングしてしまうことを避けるためだという。

最後に、FacebookはRights Managerツールの悪用は同社の利用規約違反であることを強調した。この規約により、間違いを繰り返す権利者を排除できる。

「Rights Managerが不正に利用されていることが判明した場合、Rights Managerの規約に従い、ツールへのアクセスを停止できます。私たちは、プラットフォームが機能とアクセスを調整し、これら強力なテクノロジーの誤用を回避する能力を持つことがいかに重要であるかを強調したいと思います」とアクセルガードは語った。

こうした誤用問題の強調はCommuniaを始めとするデジタル権利団体からは歓迎された。だが一方で、権利者たちは不快感をあらわにする。

Sports Rights Owner Coalitionを代表する英プレミアリーグのマテュー・モレイユは、Rights Managerの悪用が本当に同社の主要課題なのかとFacebookに尋ねた。

アレックスガードは「間違いなく、私たちの重要課題の1つだと考えます」と答えつつも、権利者の利益にも配慮していると述べた。

総じてFacebookはシステムの長所と短所を丹念に説明した。だが、これがEU諸国が第17条を導入するにあたって理想的な手段かどうかは別の問題である。現在の形式では、Rights Managerへのアクセスは一部の権利者に限定されており、すべての権利者が参加できるわけではない。

また、Rights Managerはオーディオとビデオには対応しているが、デジタル画像には対応していない。これも大きな制約となっている。

一方、消費者を落胆させる側面も明らかになった。自動化システムは著作物の検出には非常に優れていても、現在のところパロディやフェアユースのなどの著作権の例外を判断することはできないとFacebookが認めたのだ。

Communiaのポール・ケラーの質問に対し、アクセルガードは「私たちのマッチングシステムは文脈を考慮することはできません。単に2つのコンテンツが互いに一致しているかどうかを判定しようとしているだけです」と答えた。

この自動フィルタの欠点は、現在大手数十社が著作権侵害の検出に利用する音楽マッチングサービスAudible Magicも認めた。

「著作権の例外は、高度な知的判断・理解と文脈の評価を必要とします。少なくとも自動化という方法では、いかなるテクノロジーを用いてもこの問題は解決できません。最終的には人間の判断を経て決定されなくてはなりません」とAudible Magicのバンス・イケゾエCEOは述べた。

Communiciaが指摘するように、現時点での関係者会合でも、自動コンテンツ認識システムは非常に強力でありつつも、限界があることが示された。

これらの技術が欧州の第17条要件の基盤となるのであれば、こうした欠陥に留意しなくてはならない。あるいはFacebookが話したように、適法なコンテンツがブロッキングされるのを防ぐために、多くの時間と労力を費やさなくてはならないのだろう。

関係者会合の映像は欧州委員会のウェブサイトで全編閲覧できる。Facebookのスライドはこちらから(PDF)

Facebook Sees Copyright Abuse as One of the Platform’s Main Challenges – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: January 08, 2020
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Makenna Entrikin