以下の文章は、TorrentFreakの「YouTube Sues Alleged Scammer Over DMCA Extortion Scheme」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

YouTubeの「スリー・ストライク」凍結スキームを悪用してユーチューバーからカネをゆすりとろうとした詐欺師が、ついに年貢の納め時を迎えたようだ。YouTubeは米国在住のクリストファー・ブレディ氏を相手取って米連邦裁判所に訴訟を提起し、DMCAの悪用、嫌がらせ、強要、さらには「スワッティング(Swatting)」事件に関連した損害賠償と差し止め命令を求めている。

YouTubeアカウントに未解決の著作権侵害紛争のクレームを複数回受け取ることは、特にこのプラットフォームに依存して生計を立てている者には致命傷となりうる。

「スリーストライク」が宣告(訳註:3度目の著作権侵害警告のこと。コンテンツIDによる検出は含まれない)されれば、チャンネル全体を閉鎖させられ、これまで収益を上げてきたたくさんのビデオも失うことになるためだ。

今年1月、Minecraftビデオを投稿するユーチューバーの『Obbyraidz』が、このシステムの悪用について声を上げた

彼は自身のアカウントに2度にわたり虚偽のストライクを受けた後、『Vengeful Flame(復讐の炎)』と名乗る詐欺師にゆすられていたことをTwitterで明らかにした。詐欺師は、Paypalかビットコインで金を支払わなければ、3度目の、そしてアカウント凍結を招きかねないストライクが宣告されるぞと脅した。

さらに『Kenzo』というユーチューバーも同様の脅迫を受けていた。彼も詐欺師からクレームでアカウント凍結されたくなければ金銭を支払えと脅迫されていた。

しかし現在、YouTube自身がObbyraidzとKenzoの両名に対する詐取を企てたとしてネブラスカ州在住のクリストファー・ブレディ氏を連邦裁判所に提訴したことで、風向きは大きく変わりつつある。

月曜に提出された訴状は、「被告、クリストファー・L・ブレディ(『Brady』)は、虚偽の著作権侵害の申立を通じて、YouTubeコンテンツクリエイターに嫌がらせをし、金銭をゆすりとろうとした」という書き出しで始まっている。

「この訴訟は、この不正行為及びYouTubeに与えた損害について同氏の責任を問うものである」

YouTubeはDMCA削除プロセス全般について詳細に説明し、その通知が「不当な侵害の主張によって、コンテンツの削除に悪用」されうることを指摘した上で、同社は虚偽の通知の送信者に損害賠償を請求する立場にあると述べている。

「この訴訟はまさにそれである」と訴状には記されている。

YouTubeによると、ブレディ氏は同プラットフォームに対し、YouTubeユーザが投稿したコンテンツが同氏の著作権を侵害していると主張する虚偽の通知を数十回にわたって送信したという。YouTubeはこれを、無実のユーザにアカウントの凍結を回避するために金銭の支払いを強要する「嫌がらせ及びゆすり」の計画の一環として行われたと主張している。

YouTubeはObbyraidz、Kenzo、Cxlvxnの3氏のYouTubeユーザとしての活動にも触れ、彼らがビデオゲームに関連したビデオ約1,000本をアップロードしていることに触れ、彼ら全員がYouTubeパートナープログラムの参加者であり、自身の作品から収益を得ているとした。

ブレディ氏は「偽証罪に問われうることを承知の上で」YouTubeにビデオのオリジナルクリエイターを偽って虚偽のDMCA通知を送付することにより、Kenzo、Obbyraidz、「その他」のユーザを標的にしたという。YouTubeはこれら虚偽の主張に基づいてビデオを削除していた。

だが、KenzoとObbyraidzがこの強要の企てを明らかにしたことで、YouTubeは調査に乗り出したという。同時に削除されたビデオを復旧し、彼らのアカウントに宣告されたストライクも撤回された。

訴状によると、ブレディ氏は2019年6月と7月にも、Cxlvxnを標的とする詐欺的な通知を4回に渡って送付していた。だがこれはCxlvxnにDMCA反論通知を提出させることで彼の自宅住所を取得することが狙いだったようだ。

反論通知が提出されてから6日後の2019年7月10日、Cxlvxnは「スワット」されたことを報告した。スワッティングとは、YouTubeの説明にならえば「多数の武装警官を特定の住所に派遣させるために虚偽の緊急通報を行うこと」である。YouTubeはこの一件はブレディが仕組んだと考えている。

ブレディ氏は上記の行為により、合衆国法典第17編第512条(f)(訳註:不実の表示)の違反に責任を負うとYoutTubeは主張している。同社によると、同士の特定のために少なくとも15のオンラインIDの追跡を必要とし、「相当な金額」を費やしたという。

同社は、ブレディに対する仮差止命令と恒久的差止命令、裁判で裁定された賠償額、訴訟費用、弁護士費用、および裁判所が適切と判断する追加の救済措置を要求している。

ネブラスカ州で提起されたYouTubeの訴状はこちらから(pdf)

YouTube Sues Alleged Scammer Over DMCA Extortion Scheme – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: August 20, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Aline de Nadai