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日本にはサイトブロッキングの法的根拠はなく、憲法はいかなる検閲も禁じている。しかし、政府は今月下旬にも、国内ISPに海賊版サイトのブロッキングを要請する提案を発表するという。現地報道によると、日本の刑法は「現在の危険を避けるため」の緊急避難を認めている。

先月、日本の菅官房長官はマンガ、アニメ産業を保護するために海賊版へのアクセスを遮断する措置を検討していると記者会見で明らかにした

「被害は拡大している。サイトブロッキングを含むあらゆる方策の可能性を検討している」

しかし、これには大きな問題を抱えている。

日本には著作権侵害に限らず、いかなるサイトブロッキングも可能にする特別な法律は存在していない。実際、憲法は表現の自由を明示的に認め、検閲を明確に禁じている。

憲法第21条には「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と記されている

さらに「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とある。

にもかからわず、政府は著作権侵害への対策を講じることに決めたようだ。先月お伝えしたように、どうやらサイトブロッキング体制を構築するという。しかし、どのように実現しようというのだろうか。

毎日新聞によると、政府は刑法第37条の「現在の危険を避けるため」という記述を根拠にしているのだという。

「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない」と条文にはある。

この法律が、海賊版サイトに適用できるようデザインされていないことは明らかだ。また、行為――ここではブロッキング――が害の程度を超えてしまった場合には、「情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」という。

いつ、どうやって、あるいは実際に実施されるかも現時点では不明であるが、他のブロッキング導入国と同様、海賊版サイト運営者に異議申し立ての機会は与えられないようだ。

政府は法に基づいてISPにブロッキングを実施させるのではなく、アニメ・マンガ業界に被害が及んでいることを踏まえての「理解」を求めるのだという。すでにISPは児童ポルノサイトの検閲に協力しており、政府は著作権侵害でも同様の合意が得られることを期待している。

まずは3つのプラットフォーム――1つは国内、残る2つは海外――がブロッキング要請の対象になる。もちろん、これは氷山の一角に過ぎず、ISPがこの3つのサイトをブロッキングすれば、さらに多くのブロッキング要請に応じなくてはならなくなるだろう。

一方、政府は海賊版コンテンツをホストしていないおよそ200の国内リンクサイトを取り締まるための規制強化にも乗り出している。現在の法律では、リンクは違法ではないと考えられているが、近年のファイル共有、ストリーミングサイトの大半がそのようなやり方で運営されていることを考えれば大きな問題だ。

しかし、リンクを取り締まるための規制が、憲法上の権利として規定される表現の自由を侵す可能性があるとの懸念もある。すでに世界各国、特に欧州で議論されてきた問題だが、多くの場合、表現の自由が蝕まれる結果となっている。いずれにしても、政府は注意深く歩を進める必要があるだろう。

この提案は、今月末の犯罪対策閣僚会議で正式決定する見通しだという。
Japan Seeks to Outmaneuver Constitution With Piracy Blocking Proposals – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 6, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Scott Rubin / CC BY 2.0