以下の文章は、TorrentFreakの「ISPs: Pirate Site Blocking Threatens Freedom of Expression」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

南アフリカインターネットサービスプロバイダ協会は、海賊版対策としてのサイトブロッキングへの懸念を表明した。彼らはこの措置について「(効果は)限定的で」「効き目が薄い」と指摘し、表現の自由や情報アクセスの自由を脅かす恐れがあると訴えている。

インターネット上の海賊版は、世界中のコンテンツ業界が直面する喫緊の問題だ。

彼らは海賊版対策としてサイトブロッキングを好んでおり、この数年で数十カ国が実施している。

業界の報告書や学術研究では、海賊版サイトブロッキングの有効性が指摘されているが、一方で特効薬はないことも確認されている。

他に良い選択肢がないこともあり、権利者はサイトブロッキングの有効性を信じる他ないというところでもある。そのため、ブロッキングを実施する根拠となる法律のない国では、コンテンツ業界が盛んに政治家に働きかけることもしばしばである。

現在、南アフリカでも政府が新たな「サイバー犯罪対策法案」の成立に向けて取り組んでいることもあり、この問題が注目されている。法案にはブロッキングを義務づける規定は含まれてはいないものの、業界団体からISPに対し、著作権侵害が疑われるサイトのブロッキングを求める声があがっている。

世界的なトレンドを考えると驚くべきことでもないのだが、同国のインターネットサービスプロバイダは強制的な海賊版対策に強く反発している。南アフリカインターネットサービスプロバイダ協会(ISPA)はMyBroadbandとのインタビューで、サイトブロッキングの有効性には疑問があり、憂慮すべきものだと述べている。

「ブロッキングは技術的に複雑で、偽陽性(false positive)の可能性がある。さらに消費者や(海賊版)コンテンツ提供者がブロッキングを回避するのは比較的容易ですし、有効性には疑問があります」とISPAは主張する。

さらにISPAは「表現の自由に及ぼす影響も複雑で、ISPや著作権団体が解決できるものではありません。裁判所が適切に判断すべきものでしょう」という。

また、暗号化DNSなどの新しい技術を用いれば、プロキシやVPNを使わなくてもウェブサイトブロッキングをほとんど無効化できる可能性がある指摘する。

同団体は、サイトブロッキングが海賊版対策として多少の効果がありうることは否定していないが、「限定的で、効き目の薄い」措置によるポジティブな効果が、起こりうる悪影響を上回るとは考えにくいという。

「このアプローチにより、権利者団体とそのメンバーに大きな利益がもたらされるかどうかも不確かですし、先ほどお話した表現の自由と情報アクセスへのリスク、さらには実施コストを上回るプラスの効果が期待できるかも不透明です」とISPAは指摘する。

現在のところ、政府がブロッキングに関連した法制化を真剣に検討しているという兆候は見られていない。だが、権利者が司法からのアプローチでブロッキング措置を実施しようとする可能性は常にはらんでいる。

ISPAはその可能性については具体的にコメントしていないが、少なくとも司法が判断する以上、一般市民の利益が慎重に考慮されることにはなるだろう。

最後に、新たなサイバー犯罪対策法がISPに海賊ユーザの当局への通報義務を定めているとのデマについてもISPAはコメントしている。

ISPAによると、このデマは法案を間違って解釈しているのだという。現在の法案では、ISPに加入者の監視義務がないことははっきりしていると強調し、それは違法行為になりうるとも言及している。

ISPs: Pirate Site Blocking Threatens Freedom of Expression – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: September 07, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Andrew Buchanan