以下の文章は、TorrentFreakの「Manga Publishers Sue Pirate Site “Hoshinoromi” in New York Court」という記事を翻訳したものである。
大手マンガ出版社4社が「海賊版」サイトの『星のロミ』をニューヨーク連邦地裁に提訴した。4社は同サイトが露骨な著作権侵害を行なっているとして損害賠償を求めている。出版社は、Cloudflareが同サイト運営者のす像を隠すために利用されていると主張している。
海賊版コミックの人気は、多くの出版社の悩みのタネとなっている。特にマンガ出版社にとっては、海賊版の蔓延は頭の痛い問題だ。
このジャンルに関しては、この1年にわたってさまざまな展開を見せている。
例えば、日本政府は昨年閉鎖された海賊版サイト『漫画村』を調査するための特別チームを立ち上げている。その後も、同サイトの複数の運営者やアップローダーが逮捕・起訴されている。
だが漫画村の閉鎖は、その座を狙う他の海賊版サイトを引きつけることにもなった。その1つが『星のロミ』であった。同サイトは特に日本で人気があるが、海外でも成功している。
星のロミは漫画村の後継サイトを自称し、わずか数ヶ月でかなりのコンテンツライブラリを構築した。7月下旬の時点で、同サイトは9万3千冊をアーカイブしており、そのページ数は数百万ページに及ぶ。
サイトの急速な成長に直面した日本の大手出版社グループは、現在法的措置を講じている。ニューヨーク連邦裁判所に提出された訴状では、集英社、角川、講談社、小学館が同サイトによる露骨な著作権侵害を訴えている。
「本件は出版社のマンガに対する意図的かつ大規模な侵害に関するものである」と訴状には記されている。「星のロミはwww.hoshinoromi.orgで運営される海賊版ウェブサイトであり、出版社のマンガの無許諾コピーを大規模に集約、宣伝、配布している」
いずれの出版社も日本の企業で、星のロミも日本語サイトであることを考えれば、ニューヨークで訴訟を起こすというのはいささか奇妙に感じるかもしれない。だが出版社は、星のロミが事業を行い、素性を隠すためにさまざまな米国企業を利用していることを指摘している。
「Cloudflareは、Hoshinoromi.orgおよびそのバックエンドサーバzakayloader.org(以前はworldjobproject.org)の双方の侵害コンテンツをキャッシュしている。Cloudflareはサーバのロケーションと運営者をマスクするリバースプロキシを提供している」と出版社側は主張している。
他にも同サイトは米国のTwitterとGab利用しており、同サイト自体も米国のユーザに自由に利用できるようになっているという。
星のロミはTwitterを利用して同サイトを宣伝し、正規販売に悪影響を及ぼす可能性を認識していたという。
同サイトは以前、すでに凍結されたTwitterアカウントで「旧漫画村が閉鎖した時に、漫画の売上が上がったから今回の新漫画村が復活してまた利益下がるクマクマクマクマ〜!!!!今度はどんな対策をしてくるクマクマ〜??」」と投稿していたとされる。
さらに出版社は、同サイトは公然と海賊行為を認める一方で、他のサイトによる『盗用(steal)』対策はしていたようだと付け加えている。訴状によると、同サイトは部外者による海賊版ファイルの『不正利用』を積極的に妨害していたという。
「星のロミは、競合する海賊版サイトや捜査員による画像の大量コピーを防ぐために、多大な労力を割いてきた。サイト運営者は出版社のマンガを盗み、利益を上げることをなんとも思っていないが、他者が同様の行為に及ぶのを防ぐための対策を講じている」と出版社は訴えている。
出版社はこの訴訟を通じて、サイト運営者の素性を明らかにし、損害賠償を請求しようとしている。被害にあった作品として41タイトルが掲載されているが、その法定損害賠償額は理論上は数百万ドルに達することを意味している。
具体的に言及はされていないものの、この訴訟のもう1つのねらいは、外部の仲介事業者の行動を促すか、何からの対処を強制することにあるのかもしれない。特にCloudflareはキャッシングサービスとして言及されており、出版社は自らの作品の海賊版コピーをすべて同社サーバから削除するよう求めるとしている。
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集英社、角川、講談社、小学館の訴状の写しはこちらから(pdf)。
Manga Publishers Sue Pirate Site “Hoshinoromi” in New York Court – TorrentFreak
Publication Date: September 14, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Manouchehr Hejazi
この件についてはすでに各所で報じられているが、上記のTorrentFreakの記事の公開後に『星のロミ』はダウンしている。現在もその状態は続いており、ねとらぼが報じているように「恐らく閉鎖した」のかもしれない。
また、訴状で星のロミが運営しているとされたTwitterアカウントについて、@cheenanetがいろいろ突っ込んでいるのでこちらの記事も参考までに。
最後にTorrentFreakがこの訴訟の狙いを推測しているが、被告の特定はおそらく難しいだろうし、直接的な効果はさほど期待しておらず、Cloudflareに何らかのアクションを期待しつつ(現にRIAAを始め、国際的にも権利者からCloudflareへの圧力は高まり続けている)、『星のロミ』に対しても間接的に圧力をかけていきたいという訴訟なんじゃないだろうか。それに加えて、ブロッキング騒動の際に各所から「出版社は何もしていない」との猛烈な批判を浴びたので、やれることをやっておこうというのもあるのかもしれない。
それにしても、第一報がTorrentFreakだったというのも、なんだかお粗末な感じもするけれど。