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今週、米上下両院に提出された新たな法案は、「少額賠償」を裁定する著作権委員会の設置を提案している。さまざまな著作権者たちがこの法案を称賛し、小規模なクリエイターであっても高額な訴訟を起こすことなく自らの権利を守れると歓迎している。しかし、デジタル権利活動家や弁護士たちは、このCASE法が著作権トロールにも恩恵を授けるのではないかと懸念している。

今週、米国上下両院で、著作権侵害に対する「少額賠償」手続きの導入する新たな法案が提出された。

このCASE法(「少額賠償における著作権代替執行:Copyright Alternative in Small-Claims Enforcement」の略称)は、米国著作権局内に著作権申立て委員会を設置することを提案している。

もしこれが可決すれば、この新たな委員会は連邦裁判所の外で著作権紛争を解決する選択肢を提供することになり、関連するコストが大幅に軽芸されることになる。この提案は、各種利害関係者との長きに渡る議論に基づいており、超党派の支持を得ている。

下院版の法案(HR 2426)は、ハキーム・ジェフリーズ議員(D-NY)、ダグ・コリンズ議員(R-GA)が提出、上院版となるCASE法(S. 1273)はジョン・ケネディ議員(R-LA)、トム・ティルス議員(R-NC)、ディック・ダービン議員(D-IL)、メイジー・ヒロノ議員(D-HI)が提出した。

この法案の背景にある考え方は、通常は訴訟を起こすことを余儀なくされている、限られた資産しか持たない小規模な著作権者のハードルを低くすることだ。それなりの弁護士を雇って裁判を起こすのは非常に費用がかかる上、必ずしも勝利できるとは限らない。

新たに提案された著作権申立て委員会は、より安価な選択肢となる。全国の紛争を処理するために3人の裁判官を置き、著作権侵害1件につき最高1万5000ドル、申立て1件につき最高3万ドルの損害賠償を裁定する。

今週の法案提出を受け、各種著作権団体から幅広い支持の声が上がっている。たとえばコピーライト・アライアンスは、より少ないコストでクリエイターの権利を保護できるようになるという。

「CASE法は、数十万の写真家、イラストレーター、グラフィックアーティスト、ソングライター、作家、さらにはブロガーやユーチューバーら新世代のクリエイターにとっても、立法上の再優先事項である」と昨日、コピーライト・アライアンスのキース・クッファーシュミットCEOは述べている。

「今日、彼らには権利はあるが、救済手段がない。CASE法は著作権制度の信頼回復い大いに役立つだろう」

米国メディア写真家協会(ASMP)もCASE法の導入を歓迎。多くの写真家が、作品を無断使用する人々や企業に対応しなくてはならないが、訴訟を起こしたとしても、訴訟費用が賠償金を上回ることもありうる。

ASMPエグゼクティブディレクターのトム・ケネディ氏は、新たな法案は著作権法における「歴史的不平等」を是正すると述べている。

「この法律のもとでは、こうしたアーティストはしばしば法外な費用がかかる裁判制度に代わる現実的な選択肢を手に入れることになり、彼らの創造的な努力は、人々の世界観を変えるような作品を作り続けるためのインセンティブが与えられるよう適切に保護されることになるだろう」とケネディ氏は言う。

しかしその一方で、懸念の声も上がっている。デジタル著作権団体のパブリック・ナレッジと電子フロンティア財団(EFF)は、この法案は有益さよりも有害さのほうが上回っていると警告する。主な懸念は、著作権トロールがファイル共有を行っていると見られる人物を簡単に追跡できるようになるということだ。

EFFや弁護士、専門家らは先週、議員に送付した書簡の中で複数の懸念を伝えた。

書簡で強調されている問題の1つは、CASE法によって、著作権侵害ダウンロードに用いられたと見られるアカウント所有者の個人情報を取得するために、著作権局が召喚状を発行できるようになることだ。現在、こうした要請は連邦裁判官から承認されなければならない。

書簡ではさらに、CASE法は確実な証拠がなくても、著作権侵害が疑われる人物を追跡することが用意になる可能性があることを指摘している。

「連邦裁判所は、侵害者とされる人物の身元を明らかにする召喚状を発行するに際して、定型的な申立て以上の具体的かつ信頼できる侵害の証拠を要求することで、こうした悪用を抑制している」と書簡にはある。

「連邦裁判所の中には、恐喝や脅迫を防止するために、原告たる著作権トロールのターゲットとのコミュニケーションについて審査を引き受けているところもある。こうした取り組みにより、著作権トロールという濫用的ビジネスモデルに対する経済的インセンティブを減少させている」

「CASE法は、こうした慎重に形成された保護が適用されない別のフォーラムを作り出すことで、この進歩を阻害する恐れがある」という。

なお、この少額賠償委員会への参加は任意であり、被告側はオプトアプトできる。しかし、被告がそうしなかった場合、彼らに対する命令は連邦裁判所を通じて拘束力と執行力を持つことになる。

オプトアウトは選択肢の1つではあるが、被告人の知識が乏しい場合、その選択に伴うリスクとセーフガードについて認識できない可能性がある。そのため、著作権トロールの標的となった人々が、少額賠償委員会をより安全な選択肢を考えてしまうかもしれないが、必ずしもそうは限らない。

上下両院の法案は、条文案の修正や却下が加えられる立法プロセスを経てはいない。反対派は、市民を守るために修正を要求することになるだろう。

New “Small Claims” Bill Welcomed by Rightsholders, Feared by Copyright Troll Fighters – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 01, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Mediamodifier
カテゴリー: Anti-PiracyCopyright