以下の文章は、TorrentFreakの記事「NBA and UFC Urge U.S. Lawmakers to Criminalize Streaming Piracy」を翻訳したものである。

TorrentFreak

米国スポーツ業界の2大プレイヤーであるNBAとUFCは、違法なオンラインストリーミングがビジネスに損害を与えていると政治家に訴えている。いずれも、海賊版ストリーミングを現在の軽犯罪ではなく重罪として処罰するよう議会に求めている。両団体ともカジュアルユーザの処罰は求めていないと強調する一方、「ゲーム・オブ・スローンズ」をこよなく愛する上院議員がユーザへの罰則が必要だと考えているようだ。

米国の法律では、海賊版ストリーミングと海賊版ダウンロードは、それぞれ別の犯罪とみなされている。単に技術的な差異にとどまらず、罰則も異なっているのだ。

無許諾のストリーミングは、配信ではなく実演に分類され、重罪ではなく軽犯罪として扱われている。

政治家たちは、2011年の海賊版ストリーミング重罪化法案や、その後のSOPA/PIPA法案で、この状況を変えようとした。しかし、これらの法律は国民の怒りを買い、可決することはなかった。

その結果、ストリーミングと伝統的なファイル共有との間にはギャップが残されてきた。しかし、ファイル共有や違法ダウンロードよりも、ストリーミングによる海賊行為のほうがはるかに多く発生している昨今、この状況を変えようとする動きが再び現れている。

先週の上院司法委員会の公聴会では、米国の主要スポーツ2団体が、ストリーミングを重罪化するよう改めて要請した。

NBAのバイスプレジデントで知的財産権顧問のマイケル・ポテンザ氏や、UFC親会社「Endeavor」のグローバル法務責任者のリシェ・マックナイト氏が証人として出席。両者とも、海賊版ストリーミング、特にライブストリーミングについて警鐘を鳴らした。

知的財産小委員会に出席したポテンザ氏は、NBAはストリーミングに頼っており、この数年間の技術的進展の恩恵を受けていると述べた。しかし、その技術が海賊版にも悪用されていると訴える。

NBAは海賊版ストリーミングに対抗するため複数のアプローチを進め、なかでも削除通知に重点を置いているという。人間のレビュー担当者とテクノロジーを組み合わせて違法配信を発見し、可能な限り迅速に停止させるべく取り組んでいる。だが残念なことに、そうした配信の多くは、すぐさま再開されてしまうのだという。

「NBAが違法ストリーミングウェブサイトやソーシャルメディアアカウントの停止に成功しても、新たなドメインやソーシャルメディアアカウントで違法ストリーミングが再開されることが多く、全試合のプレイ中に継続的な警戒を強いられている」とポテンザ氏は述べた。

NBA’s Mr. Michael Potenza

こうした違法ストリーミングは、犯罪企業によって運営されていることもあるという。専用の海賊版ストリーミングボックスや不正なサブスクリプション販売、ウェブベースのストリーミングポータルの提供などを行っている。彼らは(訳註:外部のサービスに頼らず)自前でストリーミングしているため、運営企業が削除通知を無視すれば、ストリーミングを停止させるのは不可能だという。

「こうした悪党のなかには、『DMCA無視ホスティング』サービスと称し、DMCA通知に応じないことを謳い文句にするところもある。海賊版ストリーミングプラットフォームは、これらのサービスを利用し、意図的に削除通知に適時対応しないようにしているのです」とポテンザ氏はいう(訳註:「適時」性が重要なのは、スポーツのライブストリーミングの場合、その試合の中継中に配信が停止しなくてはならないため)。

マックナイト氏も同様の懸念を口にした。彼はUFCのイベントが、海賊版によって深刻な影響を受けていると主張し、ソーシャルメディアをはじめとするデジタルプラットフォームの対策強化を訴えた。ここには侵害を繰り返すアカウントの停止も含まれるが、両団体ともそれ以上の対応を求めている。

「加えて、デジタルプラットフォームはライブイベントの直前に――それができない場合には少なくとも定期的に、海賊行為が違法行為であることをユーザに通知することを検討すべきです。こうした警告は映画冒頭の著作権表示と同様に、法令遵守意識を持った視聴者に無許諾ストリーミングが違法であることを思い出させる」とマックナイト氏。

Endeavor’s (UFC) Mr. Riché McKnight

両者の主張でもう1つ共通していたのは、オンラインストリーミングを重罰化するという要請である。重罰化は海賊版ストリーミングビジネスを抑止することにつながるという。

「海賊たちは刑事訴追を恐れることなく、ISD(違法ストリーミングデバイス; Illigal Streaming Device)を製造・販売したり、違法ストリーミングサービスを運営するなど、スポーツコンテンツの違法配信を続けている」とNBAのポテンザ氏は言う。

「著作権で保護されたコンテンツの違法ストリーミングを重罪とする刑法改正は、違法ストリーミングを防止する有効な手段を提供することになるでしょう」と彼は付け加えた。

Endeavorのグローバル法務責任者もこの主張を支持した。

「罰則を強化することで、違法ストリーミングを抑止し、検察がこうした事件を起訴する可能性を高めることになります。加えて、米国がこの問題を深刻に捉えているというメッセージを世界に発信し、他の国々も同様の行動を取るよう促すことにもなるでしょう」とマックナイト氏は言う。

NBAとUFC親会社は共に、無許諾ストリーミングに対する罰則を他の海賊行為と同様にすべきだという点で一致しているが、いずれも重罪化は組織的活動を対象とすべきで、一般ユーザを対象とすべきではないと強調した。

「はっきりさせておきたいのは、単に海賊版ストリーミングを視聴しただけの一般ユーザにも重罰を求めているわけではないということです。また、1度や2度、海賊版ストリーミングをソーシャルメディアプラットフォームにアップロードした程度の人も同様です」とマックナイト氏は話す。

「自宅で試合をストリーミングしているカジュアルな視聴者は、重罪・軽犯罪問わず、責任を問われるべきではないと考えています」

興味深いことに、小委員会の委員長であるトム・ティリス上院議員は、ユーザに対する罰則も妥当なのではないかとの考えを明かしている。彼はつい先日、ゲーム・オブ・スローンズの海賊版を探し出す誘惑に駆られたとして、犯罪化すればユーザたちは正規コンテンツを探そうと動機づけられるのではないかと言う。

「私はゲーム・オブ・スローンズのファンなのですが、日曜夜のエピソードを見逃してしまいました。幸いHBOオンデマンドを利用しているので、なんとか昨日追いつけましたが、インターネットで手に入れる方法はないものかという誘惑に駆られたのも事実です。もちろん、そんなことはしませんでしたが、たとえそうしていたにしても、何らかの罰則を設けてもよいのではないかと思います」とティリス議員はいう。

「そうすれば、少なくとも一般市民は、捕まったら罰金を支払うことになる、ということを意識するようになるかもしれない。こうした認識があればこそ、正規版のサイトに誘導できるのではないでしょうか」

この反応を見る限り、議会は無許諾のストリーミングの犯罪化をある程度は支持しているようだ。しかし現時点では、具体的な提案はなされていない。

NBA and UFC Urge U.S. Lawmakers to Criminalize Streaming Piracy – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 10, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: tommy bebo / ICOOON-MONO