ハリウッドを代表するMPAAは、著作権侵害に関連する学術研究に、この数年間で数百万ドルを提供している。納税記録を見ると、その資金の大半を受け取っているのはカーネギーメロン大学であった。同大学は話題となった研究を複数生み出している。最新の記録によると、カーネギーメロン大学が2014年だけで受け取った金額は100万ドルにのぼるという。
世界中で多数の研究者が、海賊行為や著作権法制の影響について研究をしている。
こうした研究は、学術的観点から興味深いものであるが、同時に、政治家に法改正をもとめてロビー活動を行う利害関係者にも非常に重要視されている。
ハリウッドを代表するMPAAは、既得権益団体の1つである。彼らはしばしば自らの主張の根拠として調査研究を用い、彼らのアジェンダに反する研究であればこてんぱんに非難する。
また、MPAAは積極的にこの領域の研究に助成をしてもいる。中でも特筆すべきは、カーネギーメロン大学の「デジタル・エンターテイメント分析イニシアチブ(IDEA)」への複数回にわたる資金提供である。IDEAは、海賊行為に関連したトピックを研究している。
MPAAはこのプログラムに2012年には10万ドル、その翌年には92.1万ドルを助成していた。どうやらそれで終わりではなかったようだ。
今週インターネット上に公開されたMPAAの納税申告書によると、彼らは2014年にも100万ドルもの助成を行っていた。MPAAによる寄贈のなかではもっとも高額のものである。MPAAの年間収益が7200万ドルであることを考えると、かなりの金額といえるだろう。
この継続的な支援は、IDEAがこれまでに成し遂げてきた成果に映画産業が満足していることを示しているのだろう。この研究プログラムは、この数年での複数の査読論文を生み出し、その内容はおおよそ映画産業のアジェンダに沿ったものとなっている。
たとえば、IDEAの最近の論文では、海賊版サイトへのブロッキングはNetflixなどの合法サービスの利用を後押しするとされており、その前の論文では、検索エンジンはインターネット上の著作権侵害を減らすことができるとしている。
しかしIDEAの研究者は、MPAAからの助成金は研究結果に何ら影響するものではないと強調する。
IDEAの共同代表ラウル・テーラングはTorrentFreakに対し、助成は研究者の雇用や研究経費として使われており、特定のプロジェクトとは無関係であると言う。
「助成金によって、研究員やポスドク、博士・修士課程の大学院生を私たちのプロジェクトに雇い入れることができています。多くのプロジェクトがデータ・インテンシブなので、高額のデータを購入するか、時間を費やしてデータを収集するかしなければなりません」
テーラングはIDEAの全体の予算の額や、2014年以降にMPAAからどのような助成を受けたのかについては言及を避けた。
「大学が助成を受け、そのなかから私たちに予算としておりてくるので、厳密な助成額をお伝えするのには慎重を要します。また、ほかの助成も増減していますので」
IDEAへの助成以外にも、小規模ではあるが学術研究者への支援を行っている。MPAAは2年前に、彼らの提案を受け入れてくれる研究者のための助成プログラムを開始した。
このプログラムでは、著作権侵害関連のさまざまなトピック――著作権法の影響や、ノーティス・アンド・テイクダウンシステムの有効性など――を扱うプロジェクトへの参加が、2万ドルでオファーされた。
これらのことから、ハリウッドは学術研究を価値のあるツールとして認識していることは明白である。実際、近年のMPAAのロビー活動においてこうした研究がたびたび引用されている。
もちろん、研究に資金提供をしているの産業団体はMPAAだけではない。その反対側では、Googleなど複数の企業が、まさに同様のことをしているのである。
“MPAA ‘Invests’ Millions in Academic Piracy Research – TorrentFreak”
Publication Date: May 14, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Vlasta Juricek / CC BY-NC-SA