以下の文章は、電子フロンティア財団の「For Would-Be Censors and the Thin-Skinned, Copyright Law Offers Powerful Tools」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

我々は、著作権政策の指針となるべき重要な原則を指示する行動・議論のための「著作権ウィーク」に参加している。今週は連日、さまざまなグループは著作権法や著作権政策のさまざまな課題を取り上げ、何が問題となっているのか、そして著作権がクリエイティビティとイノベーションの促進のためにどのような役割を果たすべきかを取り上げる。

昨日、我々は表現の自由のセーフガードとしてのフェアユースの重要性について記した。だが、フェアユースをはじめとする著作権に関する法的権限は、批評家を黙らせる口実としての著作権行使を止めるには十分ではないことがあまりに多い。

教科書的なフェアユースが、とりわけデジタルミレニアム著作権法(DMCA)のテイクダウン制度を悪用した著作権クレームによってインターネットから抹消されるのを、我々は何度も何度も目にしてきた。No Evil Foods(実に皮肉の効いた名前のビーガンミート会社)は、組合潰しの内部告発を報道したジャーナリストやポッドキャスターに圧力をかけ、組合側が録音した経営陣の組合つぶしのプレゼンテーションに著作権があると主張した。

そのプレゼンテーションが著作権で保護されるのかさえ疑わしい。仮に著作権があるにしても、報道を検証し、内容を保証するために資料を引用することは、フェアユースの教科書的事例である。市民の知る権利を充足させるのみならず、そのソースを提示することで、報道の妥当性を市民自らが判断できるようになる。No Evil Foodsは、著作権を持ち出して批判者を黙らせようとしたことにより、テイクダウン・システムの悪用に対する訴訟というリスクを冒すことになった。そこで我々は書簡を送り、テイクダウンシステム悪用を止めるよう求めた。その後、テイクダウンは無くなった。

テイクダウンの対象が著作権で保護された素材を使用していないにもかからわず、唐突に著作権クレームを受けることもある。2020年、ネブラスカ州ドーン大学は大学カリキュラムの大幅削減に抗議する講師らのウェブサイトを削除するために、大学の写真の著作権を主張するDMCA通知を送付した。だがその写真は、削減反対派がウェブサイトに掲載するために新たに撮影したものだったのである。ウェブサイトを立ち上げた大学教授は反対通知を送ったが、大学理事会側は法が定める反対通知の応答期限の前にカリキュラム削減について議決しようとしていた。EFFが介入し、ドーン大学に著作権クレームを撤回するよう要求したところ、それが功を奏し、理事会の議決前にウェブサイトは復活した。

その数ヶ月前には、自称Twitterトロールが、自分をインタビューした記事の内容が気に入らないからと(訳注:不当な)DMCA著作権クレームによってツイートを削除させるという事件もあった。標的となったユーザが削除についてツイートすると、彼はDMCAを使って削除通知の画像まで削除させた。

とりわけ酷いケースもあった。米国・ナイジェリアの調査報道機関Sahara Repotersが、そのジャーナリズム活動をくじくことを目的とした監視、サイバー攻撃、DMCAテイクダウンキャンペーンのターゲットにされたのだ。攻撃者はSahara Reportersの記事をコピーし、古い日付を設定したブログ記事に転載した上で、ウェブサイトに削除要請を送付した。EFFの弁護士がSahara Reportersの代理人として反対通知を提出することはできたが、言論の自由と政治活動への組織的な攻撃において、著作権がどれほど容易に悪用されうるかを示す事例である。

偽のDMCA削除以外にも、悪意あるアクターは匿名の批判者への報復や脅迫、あるいは批判者を黙らせるために、著作権訴訟によって匿名性を暴こうとすることもある。DMCAはプラットフォームが訴訟を回避するためにユーザを売り渡すインセンティブを与えているので、匿名の批判の仮面を剥がす格好のツールとなってしまっている。例えば以前、エホバの証人の教義を出版するWatchtower Bible and Tract Societyが、著作権侵害訴訟を通じてReddit投稿者の素性を暴こうとしたこともある

なぜ著作権が検閲メカニズムとしてこれほど悪党を引き付けるのか疑問に思われるかもしれない。その最大の理由は、著作権法があまりにも容易に悪用できるためだ。通常、米国の法律は言論の制限には非常に高いハードルを置いている。だが、著作権法だけは例外なのである。DMCAのノーティス・アンド・テイクダウンの枠組みは、権利者(および権利者を名乗る者)に、メールやウェブフォームの送信だけでコンテンツを削除できる強力な影響力を与えている(著作権フィルターの拡大により、さらに削除は容易になった)。著作権者が裁判所に足を踏み入れることなくインターネットから言論を削除できる法的手段を有していることは、我々の法体系におけるアノマリー(異常)であり、特権的ですらある。他の法律分野では、原告側が法廷外でこのような手段を用いて解決することは許されていない。

たしかにDMCAは、反対通知の手続きや悪意ある削除要請への訴訟など、インターネットユーザが不当な削除要請に反撃する手段を提供してはいる。だが、そのためには、応答期間、高い立証責任、訴訟費用の負担といった難点があり、いぜんとしてDMCAの悪用に多数のインセンティブが残され続けているのである。EFFはこの状況を変えるべく活動を続けている。もしあなたが濫用的著作権クレームの標的にされた際には、info@eff.orgまで連絡してほしい。

For Would-Be Censors and the Thin-Skinned, Copyright Law Offers Powerful Tools | Electronic Frontier Foundation

Author: Cara Gagliano / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 20, 2022
Translation: heatwave_p2p
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