メタリカがNapsterを始めとするインターネットの著作権侵害に戦いを挑んでから20年が経過した。メタリカのギタリストのカーク・ハメットは、この判断によりバンドは多くの批判を受けてきたが、海賊版が音楽ビジネスを破壊したと訴えている。しかし、ハメットが音楽業界の現状を憂う一方で、新時代のNapsterのおかげで音楽業界の収益は再び上昇に転じている。
2000年、メタリカが革新的なファイル共有プラットフォーム「Napster」を訴えた時、賛否両論が巻き起こった。
音楽業界関係者やミュージシャンたちがこの決断を支持する一方で、一般ユーザたちは新たな共有ツールが破壊されていく様を喜ぶことはなかった。
それに続く激しい法廷闘争の勝者はメタリカだったが、同時に深い傷を負うことにもなった。後年、ドラマーのラーズ・ウルリッヒは、Napsterの経営陣がメタリカは強欲なロックスターだ、テクノロジーを理解できないラッダイトだと非難してきたと回想している。
あれから約20年後の現在、世界は変わった。かつてのNapsterは遠い昔に死に絶えてしまったが、インターネット上の著作権侵害はいまだに続いている。おそらく2000年代初期よりもひどくなっているだろう。
ローリングストーン誌(邦訳記事)によると、メタリカのリードギタリスト、カーク・ハメットは、スウェーデンのテレビ番組「ニーヘッツモーゴン」のインタビューに、Napsterを訴えたことは正しいことだったと語ったという。また、訴訟がバンドにネガティブな影響を与えた一方で、Napsterの驚異は本物だったとも語った。
「Napsterのすべてが、俺たちに何一つ恩恵をもたらすことはなかった」とハメットは言う。「わかるか? いくら『メタリカが悪い』って言われようが、俺たちは正しいことをした。Napsterを訴えたのは正しかった」
「音楽業界の現状をよく見れば、今の全体の状況が見えてくるはずだ」
ハメットは海賊版のせいで音楽業界が崩壊しつつあると言いたいようだ。しかし面白いことに、音楽業界の統計を見るとむしろ上昇に転じている。
2017年、世界のレコード音楽市場は8.1%成長した。これは3年連続の成長で、1997年にIFPIが調査を開始して以来、最高の成長率であった。
もちろん、海賊版の影響がまったくないことを意味しているわけではない。それでも、利益性の高いCDというフォーマットがほぼ絶滅したにもかかわらず、市場には成長の余地が十分に残されている。時代は変われども、人びとは音楽にお金を出しているのだ。
その成長の大部分がストリーミングサービスによるものであり、現在、米国のレコード音楽収益の50%以上を占めていることも注目に値する。それはまさに、メタリカがこれまで長きに渡って無視し続けてきたプラットフォームで起こっているのだ。
メタリカは 2016年の『ハードワイアード…トゥ・セルフディストラクト』のリリースに際して、ようやくストリーミングサービスを受け入れている。
メタリカは現在、たとえ理想的な媒体ではないと考えているとしても、自身の作品を合法的にアクセスできるようにしたいと考えている。皮肉なことに、現在は正規ストリーミングサービスに転身したNapsterに、彼らの作品が再び登場することになるのだろう。
「俺たちは、アクセスできるようにしたい。現代的なやり方でアクセスできるようにしなくちゃいけない」とハメットは言う。本当に海賊版を止めたいなら、それが賢明だ。
Metallica Was Right About Suing Napster, Guitarist Says – TorrentFreak
Publication Date: May 15, 2018
Translation: heatwave_p2p