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米テクノロジー業界団体「インターネット協会(Internet Association)」がハリウッドの主要ロビー団体「米映画協会(MPAA)」を強く批判している。インターネット協会は、MPAAが下院エネルギー・商業対策委員会に提出した書簡のなかで、Facebookのスキャンダルを利益誘導の「レントシーク」、「縁故政治」に利用していると批判している。

先月、MPAAの会長兼CEOのチャールズ・リブキンは、Facebookのプライバシー問題を利用して、インターネットの現状への懸念を表明した。

リブキンは複数の下院議員に送付した書簡のなかで、インターネットのプライバシー問題を規制や免責、セーフハーバーと結びつけ、「インターネットはもはや生まれたての赤ん坊ではなく、世界中の人たちにとってますます住みづらい環境になっています」という。

「まさに今、インターネットにおける説明責任を回復するための国民的議論が必要とされています。規制、セーフハーバーの再調整、あるいはオンラインプラットフォームに重い責任を負わせるなど、変革が必要なのです」

ハリウッドのロビーグループのボスがFacebookユーザを心配してくれるのはありがたいのだが、彼が善意から心配しているとは思えない人たちもいるようだ。彼らは、MPAAが自らの利益のために無関係なスキャンダルを利用しているのだという。

これはまさに、GoogleやTwitter、Amazon、Reddit、Yahoo、Facebookなど米国の大手インターネット企業で構成されるインターネット協会の立場だ。

MPAAが複数の加盟企業を名指し、あるいは暗に批判したことが、インターネット協会の反論を促すこととなった。

インターネット協会のマイケル・ベッカーマンCEOは、下院エネルギー・商業対策委員会のグレッグ・ウォルデン委員長に宛てた公開書簡のなかで、MPAAを始めとするロビー団体が、反インターネット・ロビーによって規制議論を乗っ取っていると批判した。

「米国映画協会のチャールズ・リブキン会長兼CEOが、先日のザッカーバーグ氏の公聴会の際にエネルギー・商業対策委員会に提出した書簡は、不当以外の何物でもありません」とベッカーマンは記している。

「この公聴会は映画産業とは無関係にもかかわらず、リブキン氏は単に顧客企業の『商業的利益』を確保したいがためにインターネット企業への規制を要求するという、恥知らずのレントシーキングを行っています」

さらにベッカーマンは、こうしたレントシーキングは「インターネット以前」の企業が旧来のビジネスモデルを保護するために行う「縁故政治」の一環として行われている、と指摘する。

「このような露骨な縁故政治のやり口は、大手ハリウッドスタジオに限らず、反消費者的なロビー活動を象徴するものです。通信事業者、レガシー・テクノロジー企業、ホテルといったインターネット以前の企業が、消費者を犠牲にし、新たに登場したライバル企業を規制することで、従来のビジネスモデルを守ろうとしています」

こうした辛辣な批判は、シリコンバレーとハリウッドの亀裂が依然広がったままだということを示唆している。

MPAAを始めとする著作権業界団体が、インターネット企業に責任を負わせるために厳しい規制を求めていることは明らかだ。当然ながら、彼らが懸念しているのはプライバシー問題視ではない。

彼らが望んでいるのが、GoogleやFacebookなどの企業が著作権侵害を抑止し、権利者に利益をもたらすことである。このメッセージを議論の最前線に持ち込むには、Facebookのスキャンダルを利用するのが都合が良かったということなのだろう。

インターネット協会はMPAAを激しく非難する一方で、濫用を抑止・阻止するためにできることはもっとあるはずだとの意見には理解を示している。

「テクノロジーとサービスがユーザのニーズに応じて進化していくなかで、悪人たちはそれを巧みに利用する方法を見出すでしょう。私たちの加盟社は常にこれを警戒し、阻止すべく懸命に取り組んでいます。このタスクに終わりはなく、私たちはこれからもより懸命に、そしてより効果的に取り組んでいくことを約束します」とベッカーマンは述べている。

インターネット協会の公開書簡全文(via Variety)はこちらから(pdf)
Internet Association Blasts MPAA’s ‘Crony Politics’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 15, 2018
Translation: heatwave_p2p