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今週、マット・ハンコック英デジタル・文化・メディア・スポーツ大臣は、インターネットの「無法(Wild West)」環境を浄化するための新たな立法措置に関する意見の募集を開始した。英国レコード産業協会はそれに応じ、より迅速なサイトブロッキング、侵害を繰り返すユーザの取締まりポリシー、サービスプロバイダに対する責任の強化などの海賊版対策を講じるよう政府に求めている。

この数年、英国政府はインターネットの「浄化」に向けた強い意志を表明している。

子どもたちにとってインターネットを安全な場所にすることに重点を置いているが、それはあくまでも氷山の一角に過ぎない。

今週、政府はインターネット・セーフティ戦略緑書(政策提案書)への回答を公表し、「インターネット上の危害」を抑止するためには、更なる努力が必要であるとはっきりと述べている。

政府は10人中6人がインターネットで不適切・有害なコンテンツを閲覧しているという報告を指摘する。ソーシャルメディア企業によるユーザ保護の取り組みがすでに成果を上げているものの、業界全体としての努力はまだ十分ではないという。

そのため、政府は、テクノロジー企業、児童支援団体を始めとするステークホルダーの助けを借りてでも、立法措置により状況の改善を目指している。

「デジタルテクノロジーは世界中で圧倒的な力を発揮している。私たちは常にイノベーションを推進し、より良いものに変えていかなければならない」とマット・ハンコック英デジタル・文化・メディア・スポーツ相は言う。

「同時に、インターネットの『無法』環境を立法によって解決しなければならないことも明白である。テクノロジー企業の立ち上げ、成長を力強く支援するとともに、市民の安全を守るために協力していきたい」

ネットいじめやネット児童虐待といった重大な問題に重点を置いているものの、政府は明らかに「あらゆる」インターネット上の危害に取り組んでいく姿勢を示している。そのような姿勢を受けて、英国レコード産業協会(BPI)は、ネット上の海賊版への新たな対策を導入するよう政府に要請している。

BPIのジェフ・テイラーCEOは、今週発表された声明のなかで、立法に向けた取り組みを歓迎し、音楽業界を始めとするコンテンツ産業への保護を訴えた。

「これは、消費者を保護し、英国の音楽とクリエイティブ産業を後押しする重要な機会となる。BPIは、インターネットの仲介事業者やオンラインプラットフォームが、ユーザに提供するコンテンツに対し、もっと責任を負うべきだと訴えてきた」とテイラーは言う。

「政府はいまこそ、大手インターネット企業に対し、サイトやサービス上の違法コンテンツを浄化するための効果的かつ積極的な対策を講じさせる法制化を進めなければならない。それにより、違法コンテンツがあふれるいかがわしいサイトから消費者を保護し、雇用を創出するクリエイティブ産業に被害をもたらす犯罪を防ぐことができる」

BPIは4つの要求を提示している。それぞれの要求が、BPIの思惑を探るヒントになるだろう。

まずは、「違法サイトを迅速にブロッキングするための新たな手続きを確立する」という要求だ。高等裁判所の差し止め命令を獲得するために高額な費用がかかることを考えると、これは予想の範囲内である。

「BPIは多数のウェブサイトに対して個別に訴訟を起こしている。すべて、あるいはほぼ著作権侵害コンテンツで占められ、犯罪活動による利益のみを目的とする63のウェブサイトに対して差止命令を獲得している」とBPIは言う。

こうした差止命令は、同一の運営者が設立した新たなサイトや、すでにブロッキングされているサイトへのアクセスを促すサイトにも容易に拡張可能であるが、BPIはさらに効率的にブロッキングを実施させたいと考えている。ポルトガルで行われているような、民間企業による自発的な取り組みも選択肢に入っているのだろうが、ISPの負担を考えると応じてくれるかは不明だ。しかし、立法されるとなればそのジレンマも解決されるだろう。

第二に、BPIのような権利者団体にとってのもう1つの頭痛の種は、海賊版コンテンツを投稿する個人や組織だ。BPIはサイトや検索エンジンから海賊版コンテンツを削除させるのが大変にお上手(現時点で6億件を超える要請を送付している)のだが、こうしたイタチごっこはもう続けたくないというのが本音のようだ。

そのため、BPIは侵害を繰り返すアカウントの凍結や、削除されたコンテンツの再投稿を防止するための措置をオンラインプラットフォームに義務づける新たな規則を導入するよう政府に要請している。

第三に、BPIは「明確な連絡先および所有者情報」を提供しない「オンライン事業者」に対する罰則の導入を求めてもいる。それ以上の具体的な説明はないが、この提案は、一部のサイト運営者が身元を隠しているために権利行使ができない苛立ちを反映したものなのだろう。

最後に、そしてもっとも興味深いのが、BPIは政府に対し、インターネットの仲介事業者とプラットフォームに対する新たな「注意義務」を立法する求める要請だ。具体的には、インターネットを利用して「消費者を違法なコンテンツにアクセスさせる」ビジネスに対する「有効な措置」を講じることを求めている。

当然、ここには海賊版サイトやサービスが含まれるのだが、この提案には、海賊版を扱ったチュートリアルビデオをYouTubeに投稿して広告収入を得ている人や、「全部載せ」KodiデバイスをeBayやソーシャルメディアを通じて販売する人など幅広く網がかけられている。

全体として、BPIはあきらかに、かつて協力に消極的だった仲介事業者に対して、海賊版に対する対策を講じるよう圧力をかけようとしている。

「この法案の立法は、協力的でない事業者への介入権限を与えることで、円卓会議のプロセスに焦点を当て、仲介事業者が自らの責任を真剣に負うようになるだろう」とBPIは言う。

デジタル・文化・メディア・スポーツ省と内務省は、今年後半に公表を予定する白書で、「インターネットの危害」対策法を策定することになっている。BPIを始めとする権利者団体は、政府が彼らの懸念に乗ってくれるのを期待しているのだろう。

BPI Wants Piracy Dealt With Under New UK Internet ‘Clean-Up’ Laws – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 23, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header image: Brandon O’ Connor / CC BY-SA 2.0