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Tumblrは2018年12月17日から「乳首を露出した女性」などのコンテンツを禁止する。写真家でライターのネイト・’イゴール’・スミスは、長年にわたってTumblrを利用し、アート、編集、さらにアダルトとさまざまなジャンルの作品をと投稿してきた。そのネイトはTumblrによる検閲の決断が長年のTumblrユーザ、そしてそれ以外の人々に壊滅的な理由を説明してくれた。――XJ

かつてTumblrは写真を投稿するお気に入りの場所だった。Tumblrはいろんなカスタマイズが可能なソーシャルメディアで、ブログにも、ムードボードにも、パスワード保護をかけた秘密のプロジェクトにもすることができた。たくさんの人たちが自分の好きなように使っていた。GIFだってTwitterがサポートする前からTumblrに投稿できたし、コードなんか知らなくても無圧縮で画像を投稿できた。おかげでデスクトップでもスマートフォンでも美麗な画像を見ることができた。

当時、Twitterにも画像は投稿できたけれど、圧縮の酷さと流れ続けるフィードのせわしなさが嫌で、やっぱりTumblrがお気に入りだった。Tumblrのタグシステムはすばらしくて、自分の画像を整理するために使っていた。おかげで、人や対象を探すこともできたし、特定のタグだけにリンクを貼ることもできた。お気に入りのジャガロの写真をまとめて送ったりもしたっけ。Instagramが爆発的に広がり出すまで、Tumblrは僕にとって最高のソーシャルメディアだった。

僕の写真家としてのキャリアは、Twitter、Tumblrとほぼ同時期に始まった。Tumblrは僕の個人的な写真も、仕事として撮った作品も、一緒に投稿できる最高な場所だと感じていた。クライアント向けにはデジタルで撮影していたけど、Tumblrのフィルム写真コミュニティのために、35mmで撮影した個人的な作品も投稿した。旅行の写真がヌード作品と同じ場所にあってもおかしな感じはしなかった。それがTumblrだった。ローリングストーン誌に撮ったバンドの写真が、ハスラー誌やプレイボーイ誌の撮影でアウトテイクになった作品と並んでても、違和感はなかった。ヴィレッジ・ヴォイス紙に撮ったナイトライフの作品と、友達のスナップショットもそう。ヴァイス誌に撮った報道写真も、同じくヴァイス誌に撮ったひどいDos and Don’tsと一緒に。

写真家のコーウェン・プレスコットはTumblrを完璧に言い表している。「残念なのは、自分の作品を全てならべて表示できる場所がTumblrしかないことだ」

彼のツイートは、霧に浮かぶバッファロー、凍りついた池に反射する山岳の豪奢な2枚の写真とともに、それに見劣りしない美しい2枚のエロティックな写真をフィーチャーしていた。商業的な作品とアダルトな作品の境界を行ったり来たりする僕らのような写真家にとって、Tumblrは完璧な場所だった。

もちろん、Tumblrはいくつか問題を抱えていた。ソースを表示しないコンテンツが絶え間なく投稿、リブログされていたし、「#thinspiration(訳注:ダイエットの意思を鼓舞するために使われるタグ)」みたいなウンザリするタグが人気だったり、いたるところにポルノが投稿されていた。若者が利用するソーシャルメディアとしては明らかに問題があった。でも、それは同時に、セクシュアリティやジェンダーを掘り下げ、非難されることなくアダルトコンテンツを探し、自らが抱える問題を共有するコミュニティを見つけるための場でもあった。「フェイクニュース」を抱えたFacebookや、ナチを抱えたTwitterのように、Tumblrも歪な問題を抱えることになった。

2013年にTumblrは10億ドル超でYahoo!に買収された。Yaoo!はTumblrをなんとかしようとしたが、結局はダメにしてしまった。それからのTumblrの転落の歴史は語りたくもない。知りたい方はこちらを読んでもらうことにして、僕がTumblrを離れた2017年に話を進めることにしよう。

昨年、Tumblrは「アダルト」ブログのフィルタリングを開始した。彼らは特定のコンテンツがアダルトかどうかを判定するのではなく、アダルト作品としてヌードを扱うTumblrアカウントにマークをつけただけだった。アダルトマークがつけられたTumblrを見るためには、Tumblrアカウントにログインして「セーフサーチ」をオフにしなくちゃならない。Tumblrアカウントを持たない人、ログインしていない人に、僕の投稿を見てもらうことができなくなったということを意味していた。つまり、Twitterで共有できるとしても、Tumblrに投稿した作品のリンクを伝えることができなくなったってことだ。ショックだった。そうして僕のTumblrが終わった

それから1年が経ち、Tumblrに戻ってみることにした。もうTwitterにリンクを貼るつもりはなかったけど、僕のTumblrアカウントには2万人のフォロワーがいたし、たまになら投稿してもいいかなと思えるようになった。そんなに頻繁に投稿したわけじゃないけど、Tumblrでのフィードバックを見るのは楽しかった。Tumblrに居残っていた少数のユーザたちは、僕のコンテンツに積極的に関わってくれたから。本当は、Tumblrから離れてずっと寂しかったんだ。

2018年3月、FOSTA-SESTAという法案が可決された。下院法案のFOSTA(オンライン性的人身売買撲滅法)と上院法案のSESTA(人身売買防止法案)。超党派の幅広い支持を集めたこの法案は、性的人身売買を阻止するための大きな成果として賞賛された。しかし、その法律がもたらしたものは、僕らの知るインターネットの破壊だった

この法案は、ウェブサイトに性的人身売買や児童ポルノへの責任を負わせる。そのため、Tumblrに誰かが児童ポルノをアップロードすると、Tumblrがその責任を負うことになる(これは合意の上でのセックスワークにも大きな影響を及ぼし、たとえばCraiglistなどのプラットフォームはサイトに掲載されるエスコート広告にも責任を負うことになった。これについてもたくさん伝えたいことがあるが、いまはTumblrの話だけにとどめておく)。

Tumblrは11月、児童ポルノ対策が不十分だとしてApp Storeから追放された。それから1か月もたたないうちに、Tumblrは「乳首を露出する女性」をはじめ、すべてのアダルトコンテンツの排除を決定した(Twitterにはいまもナチがウヨウヨしているというのに)。ハエを殺すのにロケットランチャーを持ち出してきたようなものだ。

今日、僕はTumlblrに行ってみた。この2年間の投稿のほとんどにフラグが立てられていた。いくつか見逃されたのもあったけど、それ以上に、成人向けではない投稿にまでたくさんのフラグが立てられていた。下着姿の女性、乳首を露出する「男性」、さらにはお酒やタバコの写真にまで。なかには、アイスクリームを食べる友人の写真のように、完全に見当違いのものにもフラグが立てられていた。Tumblrは異議申し立て手続きを用意しているけれど、その「詳細」ボタンをクリックしても、ブランクウィンドウがポップアップするだけだった。震えた。

Tumblr自体が終わりを迎えたということなんだろう。プラットフォームをよくしていくどころか、自分の棺桶に最後の釘を打ち込んでいる。まさかTumlblrがMySpaceの仲間入りするだなんて思いもしなかった。

Tumlbrにアダルトコンテンツ(あるいはそれ以外のコンテンツ)を投稿しているなら、12月17日までにTumblrからダウンロード、エクスポートしておくことをお勧めしたい。

信じがたいほどに愚かしいTumblrのフラグを楽しみたいなら、このTwitterスレッドをご覧いただきたい。少なくともTwitterがこのスレッドを消し去るまでの間は。

The Death of Tumblr / Boing Boing

Author: Nate ‘Igor’ Smith / BoingBoing / CC BY-NC-SA 3.0 US
Publication Date: December 03, 2018
Translation: heatwave_p2p
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