以下の文章は、Bit of Freedomの「Propaganda cannot be silenced with censorship, freedom of expression can」という記事(英語版)を翻訳したものである。

欧州連合各国政府は、インターネットプロバイダやプラットフォームに対し、ロシア国営メディアへのアクセスをブロッキングするよう命じている。だが、各国政府はロシアとウクライナの独立系メディアをこそ後押しすべきである。

ロシア国営メディアへのアクセス禁止

ロシアの蛮行は容認しえない。ウクライナ侵攻は、大規模かつ悲劇的な人道危機だ。両国の市民、そして世界中の市民がその矢面に立たされている。世界のほぼすべての国が、ロシアの軍事侵攻に制裁などの対応をとっている。その1つが、2週間前に発表されたロシア国営メディアの完全封鎖だった。RT(かつてのRussia Today)はそれ以降、欧州全土で遮断されている。インターネット接続プロバイダのみならず、ソーシャルメディアも同様の遮断措置を講じなければならない。RTのTwitterアカウントは凍結され、Googleの検索結果に表示されることもない(ただし、GoogleはWikipediaを参照していて、そこにはまだリンクが残されている)。たとえリンクがあったとしても、オランダ、ベルギー、ポーランドのインターネット接続プロバイダは現在、RTのウェブサイトをブロッキングしている。

欧州連合加盟国の説明では、ロシアが「組織的にメディア操作と事実の歪曲の国際キャンペーン」を展開しているため、やむを得ない措置なのだという。「(加盟各国の)レジリエンスをさらに強化し、偽情報などのハイブリッドは脅威に対抗する能力を高める」ことが必要なのだと。

ロシアを模倣する欧州

自国のプロバイダやプラットフォームにロシア国営メディアへのアクセスを遮断するよう強制する法律が、あたかも行政命令のように持ち出されてきた。アクセスできる情報、できない情報を政府当局が判断するなど、民主主義国家にふさわしくない。そのようなやり方は、独裁政権、まさにロシアのような国において見られてきたことだ。それは検閲であり、最重要の人権の1つ「表現の自由」を侵害する。自由な国であれば、市民がどのウェブサイトを見てよいか、見てはいけないかなどを政府が判断することはない。

また別の側面として、民主的統制の欠如も問題である。これらの法律は欧州委員会ではなく加盟国政府が承認したものであるため、欧州議会は関わってはいないのである。民主的統制はきわめて重要だ。それがあればこそ、政府の権力濫用を抑止できるし、法の質を向上させるのである。危機的状況に直面すると、突如として影響範囲の広い措置を講じなければならないこともある。だが、そのような措置が必要かどうかは民主的に決定されねばならない。さらに、そのような措置が必要になる状況は、概して緊張とストレス下で行われるものであるため、よりいっそう民主的統制が重要なのである。

検閲は嫌い? ならば支援を!

EUはロシア国営メディアへのアクセスを遮断するのではなく、独立系メディアへの後押しに注力すべきだ。そのための方法はいくつもある。独立系ジャーナリストに政府から独立したニュースを制作するために必要なリソースを支援してもよいし、彼ら自身や情報源の安全を守ることも支援できる。だが、欧州域内でもできることはたくさんある。政府は、ロシアとウクライナで奮闘する信頼できる情報ソースをまとめることもできるだろう。そうすれば、ロシア関連のニュースやロシアからのニュースを探す人が、簡単に見つけられるようになる。RTがプーチンの拡声器であることを読者が知らないのであれば、それを明らかにすることも有効だろう。いずれも、民主立憲主義国家を損なわないための措置である。

オランダ語から英語への翻訳は、Robert-Jan MakkingaとAmber Balhuizenの好意により提供されたものである。

Propaganda cannot be silenced with censorship, freedom of expression can – Bits of Freedom

Author: / Lotje Beek and Rejo Zenger / Bits of Freedom (CC BY-NC-SA 4.0)
Publication Date: March 17, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: George Kedenburg III