以下の文章は、2022年7月21日に公開された電子フロンティア財団の「New Amendments to Intermediary Rules threaten Free Speech in India」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation


EFFは先進通信協会(APC: Association of Progressive Communications)や国際デジタルライツ団体とともに、インド政府に対して、仲介事業者ガイドラインおよびデジタルメディア倫理規定(2021年IT規則)の改定を撤回するよう要請した。

EFFはすでに、このIT規則がインターネットユーザの表現の自由とプライバシーにもたらす萎縮効果への懸念表明してきた。2021年 IT規則は、大規模ソーシャルメディア事業者(インドで500万人以上の登録ユーザを抱えるサービス)に対し、一度でも2021年IT規則違反が認定された特定コンテンツを積極的に監視する「技術的手段」の導入を義務づけている。児童性的虐待資料や、過去に規則違反で削除されたコンテンツがその対象になる。積極的な監視を義務づければ、企業は「自動化ツール」でユーザの投稿・共有するコンテンツを監視しなければならなくなる。つまり、合法的なオンライン表現を頻繁に誤削除してしまう不完全なフィルターに頼らざるを得なくなる、ということだ。

オンライン仲介事業者は、極めて短い期限――禁止コンテンツの削除には36時間以内に、政府命令や開示請求に72時間以内――で対応しなければならず、プロバイダに要請の適法性、必要性、比例性を評価する時間的猶予は与えられてはいない。

新たな義務、新たな役割

2021年IT規則の改定は、人権を脅威にさらす3つの問題を抱えている。過剰な負担を負わせるデューデリジェンス義務の追加、苦情処理担当者への新たな権限付与、政府主導の新たな苦情処理上訴委員会の設置である。

新たなデューデリジェンス義務では、オンライン仲介業者はIT規則を「確実に遵守」しなければならない。仲介事業者はユーザに規則を知らせるとともに、ユーザに禁止コンテンツを「ホスト、表示、アップロード、修正、公表、送信、保存、更新、共有」させないようにすることが求められる。このような規定は、オンラインコンテンツの積極的な監視を促し、表現の自由の状況をさらに悪化させることに繋がる。

2021年IT規則では、ユーザの苦情や政府・裁判所の命令に対応するために、仲介事業者に常駐の苦情処理担当者を任命するよう義務づけている。今回の改正によって苦情処理担当者の権限がさらに拡大され、ユーザアカウントの停止、削除、遮断などの問題や、禁止コンテンツに関するユーザからの苦情に対応できるようになった。この規則では、ユーザからの苦情対応の期限が短く設定されているため、苦情の対象となったユーザが有効な救済を受ける機会が奪われることになる。

さらに、今回の改定には、苦情処理担当者の決定への異議申立を扱う、政府主導の苦情処理上訴委員会の設置も盛り込まれている。この委員会は事実上、プラットフォームのコンテンツモデレーションの決定を覆す権限を持つことになる。これは、司法の判断のみに基づいてコンテンツを削除するよう求めるマニラ原則に反している。

このような過剰で、制限的で、侵入的な改定は、仲介事業者の責任規則を更に強化し、インドにおける表現の自由への偏った介入をさらに悪化させるだろう。積極的な監視はユーザのプライバシーを制限し、正当な表現の排除につながる。また、司法による直接的な監視ではなく、コンテンツモデレーションに対する政府の関与が更に強化されることにもなる。このことは、Twitterのような企業がIT規則に従わなかったために「仲介事業者としての地位を失う」という強い圧力にさらされているさなかに生じたのである。

EFFとパートナー団体は、インド政府に対し、2021年IT規則の施行を停止・撤回し、包括的なパブリックコメントを実施するよう求めている。

世界中のオンライン仲介事業者に影響をおよぼす法的なトレンドについての詳細は、先日公表した4部構成のシリーズ(訳注:翻訳記事)をご覧いただきたい。

インド政府に対するEFFの提出書類の全文および署名リストはこちら。

joint_submission_it_rules_amendments_29_june_2022.pdf

New Amendments to Intermediary Rules threaten Free Speech in India | Electronic Frontier Foundation

Author: Meri Baghdasaryan / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: July 21, 2022
Translation: heatwave_p2p