以下の文章は、Fight for the Futureの「If the Supreme Court undermines Section 230, marginalized people will pay the price」という記事を翻訳したものである。

Fight for the Future

通信品位法230条は広く誤解されているが、オンラインの人権と表現の自由にとって基盤となる法律である。とりわけ、Dobbs判決後の世界においては、230条を弱める試みは災難としか言いようのない結果をもたらすことになる。

米最高裁は、通信品位法230条に関連する2件の訴訟を審理することを発表した。彼らがどのような判断を下すことになっても、オンラインの言論と人権の未来に深刻な影響をおよぼすことになるだろう。

デジタルライツ団体「Fight for the Future」はこれまで、230条の改正は悲惨な結果をもたらすとして、政治家たちに警告を発してきた。以下は、ディレクターのエヴァン・グリア(she/her)による声明である。

通信品位法230条は広く誤解を受けているが、オンラインにおける人権と表現の自由を保護する基盤となる法律である。市民権と市民的自由がかつてないほどに攻撃を受けている現在、230条の弱体化は壊滅的な結果をもたらし、LGBTQ+の人々、有色人種、セックスワーカー、ジャーナリスト、世界中の人権活動家など、社会から周縁化されがちなコミュニティを不当に黙らせ、危うくするものである。

最高裁がロー対ウェイド判決を覆し、数百万の米国人から身体の自律性を奪う判断を下したことで、230条の縮小という見通しは、さらに悪夢のようなものになっている。Wiredで説明したように、Dobbs判決を受けて230条の保護に干渉すれば、中絶アクセスの情報、組織化や資金調達の取り組みなど、中絶に関連したオンライン言論が広く排除・削除されることになるだろう。生まれる権利を守る全米委員会などの極右組織は、中絶の提供者のみならず、中絶の議論をオンラインでホストすることを犯罪化する法律まで起草している。230条が提供する法的免責こそが、テキサス州・ミシシッピ州の検事総長によるインターネット全体の言論統制を阻んでいる唯一の障壁なのである。

左派の中には、230条を攻撃することこそが、ビッグテックに監視資本主義のビジネスモデルや、エンゲージメントを最大化するアルゴリズムの被害に責任を取らせる唯一の方法だと信じてやまない者もいる。だがそれは全くの見当違いであるし、そもそも事実ではない。230条の保護を弱めることは、プラットフォームによる有害・ヘイトコンテンツの削除を容易にするどころか、むしろ困難にする。いったんモデレーションを実施してしまえば、(230条がなかった時代のように)削除しなかったすべてのコンテンツに責任を負わされることになるのだから。さらに、230条の修正は、中小プラットフォームの訴訟リスクを高め、結果的にFacebookやGoogleをはじめとする大企業の独占的支配力をより強固にしてしまう

保守派と共和党は、230条がソーシャルメディアにおける右派の視点を「検閲」するための武器として用いられていると主張している。だが、この主張には何ら根拠がない。むしろ、主要プラットフォームで最も頻繁に排除や過剰削除の被害を受けているのは、有色人種やLGBTQ+の人々だという調査研究もある。いずれにせよ、230条の保護を弱めたところで、ソーシャルメディア企業が政治的見解に基づく投稿の削除を妨げることはできず、プラットフォームに慎重かつ透明性の高い、説明責任を伴ったモデレーションを実施するインセンティブにはならない。むしろ、弁護士に言われるがままに、訴訟の回避を最優先にしたモデレーションにインセンティブを与えることになるだろう。たとえそれが、社会から阻害された人々のオンラインでの自己表現能力を踏みにじることになったとしても。

最高裁が審理に同意した2つのケースは、いずれもテロに関連した恐ろしい犯罪である。一つは、Youtubeが採用しているようなオンライン・レコメンド・アルゴリズムに関する責任を具体的に扱ったケースである。我々は以前、230条の改正でアルゴリズムによるレコメンドを規制しようとすることの危険性を説明した。これを実現しようとする立法は、プラットフォームの編集権を保護する憲法修正第1条に突き当たることになる。

最高裁は230条をそのままにしておくべきだ。当然、議会もだ。政治家は強力なプライバシー法の制定に注力し、その法律によってFacebookを始めとするテック企業の有害な監視型ビジネスモデルに引導を渡すべきだ。アルゴリズム操作の有害性をこれ以上悪化させることなく対処させるには、言論ではなく監視をこそ規制べきなのである。バイデン政権の連邦取引委員会(FTC)は企業によるデータ収集や、有害かつ差別的なアルゴリズムに投入される個人データの利用を取り締まるべく、あらゆる措置を講じるべきである。

我々は、表現の自由と人権を保護しつつ、ビッグテック企業の責任を追及することができる。とりわけ、ロー判決の撤回という災難を引き起こし、さらに230条を弄び、周縁化された人々や表現の自由を危機に陥れている最高裁もまた非難されるべきである。

Fight for the Future – If the Supreme Court undermines Section 230, marginalized people will pay the price

Author: Evan Greer / Fight for the Fiture
Publication Date: October 3, 2022
Translation: heatwave_p2p
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