以下の文章は、電子フロンティア財団の「EFF, International Allies Warn That Proposed UN Cybercrime Treaty, Rather Than Making Us More Secure, Could Legitimize Intrusive Surveillance and Drag Down Global Privacy and Free Expression Standards」という記事を翻訳したものである。
EFF、その国際的アライであるAccess Now、Article 19、Epicenter、Global Partners Digitalは、今週から来週にかけ、国連サイバー犯罪条約案の第5回交渉のためにウィーンに滞在し、100名を超える加盟国代表とともに新たな文書案を検討する。
我々はまだ議場で発言することを許されておらず、代表者たちと同じ部屋に座ることさえできないが、それでも我々はユーザのために、人権セーフガードの欠如、オンライン言論の犯罪化、監視権限の強化など、現在の条約案がもたらす危険性について声を上げていくつもりである。
昨日ウィーンで開催されたライブストリーミング・ブリーフィングでは、交渉がいかに厄介な方向に進んでいるかについて現状を確認し、この貴重な機会(国連条約交渉は10年に1度しか行われない)を捉えて、プライバシーと表現の自由を損なうのではなくそれらを保護するサイバー犯罪条約を策定するよう交渉担当者に呼びかけた。
メディアブリーフィングはこちらから。
https://www.youtube.com/watch?v=POwrbFrJADU
カティッツァ・ロドリゲス(EFF, 国際プライバシー担当政策ディレクター)
私たちが直面している大きな問題は、人権を確実に行使できる有効なグローバルシステムが欠如していることです。市民を執拗にスパイし、追跡する権力を政府が自ら制限しようとすることはないでしょう。そのため、本条約は市民の私生活に侵入し、人権侵害的かつ侵入的な監視権限を正当化することにもつながりかねません。
バルボラ・ブコフスカ(ARTICLE 19, 法律・政策担当シニアディレクター)
私たちは、本条約の多数の条項が表現の自由を制限しうることを深く懸念しています。コンテンツ犯罪が監視権限やその他の制限と結びつけば、このツールを使って表現の自由を制限しようとする世界中の権力者たちに国際的な白紙委任にを与えることになるという事実を、各国は直視すべきです。
ラマン・ジット・シン・チマ(Access Now, シニア・インターナショナル・カウンセル/グローバル・サイバーセキュリティ・リード)
私たちの考えはシンプルです。国連サイバー犯罪条約は、我々をセキュア(安全)にするものであって、インセキュアにする(危険に晒す)ものではないはずです。そうした国際的な法的フレーム枠に重要なのは、サイバーセキュリティにかかわる人たち、すなわちセキュリティ研究者やデジタルセキュリティのトレーナー、コンピュータシステムの脆弱性やギャップを調査するジャーナリストを重用することです。残念ながら、国連サイバーセキュリティ条約プロセスにおける現在のテキストは、抜本的に改善されない限り、私たちのサイバーセキュリティを低下させることになるというのが私たちの見解です。
セキュリティ研究者への法的保護の欠如――中核的なサイバー犯罪(とりわけ不正アクセス)に対する意図的な要件強化であれ、独立して行われる適法なセキュリティ研究の「セーフハーバー」義務であれ――は、グローバルな情報セキュリティコミュニティにとって許されざる過ちとなるでしょう。
タニヤ・ファチャタラー(Epicenter.works, ポリシーアドバイザー)
(国連条約は)サイバー犯罪と戦うためのグローバルスタンダードの設定を目的としていますが、それが失敗に終わった場合、私たち全員のプライバシーの剥奪方法のグローバルスタンダードを設定することにもなりかねません。強力なセーフガードが緊急に求められていますが、残念なことに現時点ではそのようなものは提示されていません。現時点で提案されている多くの条項は過度に広く書かれているため、政府によるハッキングを排除するものにはなっていません。
デジタル通信やサービスのセキュリティを損なわないよう捜査権を制限しなければならないという明確な要件を追加することを私たちは提案しています。
エリー・マクドナルド(Global Partners Digital, グローバル・エンゲージメント/アドボカシー・リード)
多くの国がこのプロセスに関与しているのは、まさにサイバー犯罪捜査の国際協力を強化したいからでしょう。しかしその一方で、既存の人権法上の義務に由来する現実的かつ強力なセーフガードを盛り込むことを拒否する国もあるようです。人権セーフガードは国際協力の障害などではなく、むしろ国際協力を可能にする前提と考えるべきでしょう。セーフガードの欠如は不確実性をもたらし、本当に必要としていた国際協力の妨げにすらなり、またもっとも重要な人権に対するリスクを引き起こすことにもなりかねません。
EFF, International Allies Warn That Proposed UN Cybercrime Treaty, Rather Than Making Us More Secure, Could Legitimize Intrusive Surveillance and Drag Down Global Privacy and Free Expression Standards | Electronic Frontier Foundation
Author: Karen Gullo / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: April 14, 2023
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Towfiqu barbhuiya