以下の文章は、電子フロンティア財団の「The New U.S. House Version of KOSA Doesn’t Fix Its Biggest Problems」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

今週、米国下院で審議される「子どもオンライン安全法」(KOSA)修正案は、7月に上院を通過した版と同様、オンライン検閲を助長する危険な法案であり、根本的な問題点を多く抱えたままである。この修正によっても、KOSAが大手ソーシャルメディアに合法的なコンテンツの遮断やフィルタリングを強いること、そして多くのユーザにプライバシーを侵害する年齢確認を強制する事実に変わりはない。むしろ、この修正はKOSAの成立へと近づけ、政府当局者にオンラインで共有・閲覧できるコンテンツを恣意的に決定する、危険かつ違憲な権限を与える方向に着実に歩を進めている。

注意義務を再定義しても危険性は変わらず

長年にわたり、デジタルライツ団体やLGBTQ+組織をはじめとする多くの団体が、KOSAの「注意義務」条項を厳しく批判してきた。今回、文言に若干の修正が加えられたものの、KOSAは依然として注意義務と過失責任の基準を設定している。これにより、連邦取引委員会(FTC)は、未成年者への「害の防止・軽減」措置を十分に講じていないとみなしたアプリやウェブサイトを訴える権限を持つことになる。この「害」の定義があまりにも曖昧であるため、保護されるべき表現の多くが萎縮させるおそれがある。

注意義務に関する最大の変更点は、プラットフォームが防止・軽減すべき害の記述だ。前版のKOSAでは、「医学的根拠に基づく」不安、うつ病、摂食障害、物質使用障害、自殺行動などが含まれていた。新版ではこの部分が削除され、代わりに「重大な身体的危害、深刻な情緒的障害、または死亡を引き起こす可能性が高い、本質的に危険な行為の助長」という文言が加えられた。ここでいう「深刻な情緒的障害」とは、「過去1年間に診断可能な精神的、行動的、または感情的障害が存在し、家族、学校、またはコミュニティ活動における未成年者の役割や機能を実質的に阻害または制限する機能障害をもたらしたもの」と定義されている。

しかし、この新しい文言を用いても、条項の広範さと曖昧さは解消されていない。つまり、特定のコンテンツにどのような対応を取るべきかについて、プラットフォーム側が依然として明確な指針を得られていないのである。更新された害のリストには、中絶へのアクセスやジェンダーを肯定するケアから、薬物使用、学校銃撃事件、タックルフットボールに至るまで、完全に合法で有益なコンテンツまでもが含まれてしまうおそれがある。

さらに、この法案は依然として、中毒、摂食障害、いじめなどの問題に関する合法的な情報や重要なリソースへのアクセスを制限し、逆に子どもたちがオンラインで被害を受けるリスクを高めかねない。また、オンラインで自分の居場所を探そうとしている未成年者の足かせにもなりうる。

もちろん、この法律が可決したところで、子どもたちはその後も有害なコンテンツにアクセスできるだろう。しかし、最も多くの子どもたちが利用する大手プラットフォームは、これらのトピックの議論を許可することでより大きな責任を負うことになる。その結果、深刻な危機に直面している子どもたちに自殺防止のメッセージが届かなくなり、若者がセクシャル・ヘルス情報やジェンダーアイデンティティに関するサポートを見つけることが困難になる。さらに、年齢確認技術によるプライバシーとセキュリティの侵害リスクを避けたい成人までもが、そうした情報へのアクセスに支障をきたす可能性がある。

過去の版と同様、KOSAの施行はFTCと、一部は各州の司法長官に委ねられている。「診断可能な精神的、行動的、または感情的障害」の定義について、彼らの判断に同意するかどうかは別として、KOSAの問題点は実際の施行だけでなく、責任追及の脅威にも関係している。これらの定義があまりにも曖昧であるため、プラットフォームは何が許容範囲を超えるのか明確な指針を得られない。そのため、当局が実際に行動を起こさなくても、自主規制による検閲が行われる可能性が高い。

以前の下院版では、「影響力の高いオンライン企業は、未成年者に対する以下の害を防止および軽減するため、あらゆる設計機能の作成と実装において合理的な注意を払わなければならない」とされていた。新版では、「そのような企業は、未成年者に対する以下の害を合理的に防止および軽減するために設計機能を作成し実装しなければならない」と若干修正されている。しかし、この文言の変更は表面的なものに過ぎない。この部分は依然として、プラトフォームにユーザ生成コンテンツのフィルタリングを義務づけ、「合理的に」それを行わなかった場合に責任を問う基準を課しているのだ。

上院版と足並みを揃える下院版KOSA

下院版KOSAへの最新の修正により、数か月前に可決された上院版との整合性が高まった。ただし、これは決して法案が改善したことを意味しない。

現在の下院版KOSAは、前回の下院版で設定されていた注意義務の影響を受ける企業を決定する基準を引き下げている。上院版のKOSAには企業規模による制限がなく、大小問わずすべての企業に影響を与える可能性があった。一方、前回の下院版では企業の規模に応じて段階的な基準を設けていた。今回の版でも同様の段階的基準を維持しているが、最高基準を年間収益25億ドルまたは年間ユーザ1億5000万人から、年間収益10億ドルまたは年間ユーザ1億人に引き下げている。

また、この下院版には1年前に上院版に追加された「フィルターバブル」に関する条項も含まれている。これは、「主にユーザ生成コンテンツのためのコミュニティフォーラムを提供する一般公開のウェブサイト、オンラインサービス、オンラインアプリケーション、またはモバイルアプリケーション」に、検索ワードや位置情報などの限定的な情報のみを使用するアルゴリズムをユーザに提供することを要求している(ただし、検索履歴は除く)。KOSAのこの部分は、ユーザを時系列フィードに誘導することを目的としている。

以前にも指摘したように、オンライン情報を時系列で表示すること自体には問題はない。しかし、政治家に新聞記事を特定の順序で並べ替えさせないのと同様に、ブログやその他のウェブサイトの表示順序は政府の意向によって決められるべきではない。これはウェブパブリッシャの編集の独立性を脅かす介入である。

最後に、下院の法案起草者は、この法案がプラットフォームや裁判所による法律の解釈には影響を与えないという文言を追加している。これは我々が提起した懸念を直接指摘するものだ。具体的には、「政府機関は、設計機能の運用の結果としてユーザが利用可能になる可能性のある、合衆国憲法修正第1条によって保護された言論、表現、または情報の特定の観点に基づいて、この法律またはこの法律に基づいて公布された規制を執行してはならない」と述べている。しかし、KOSAはまさにそれを行っているのだ。FTCは、そこに記述された見解のみに基づいて、特定の種類のコンテンツをモデレートまたはブロックするようプラットフォームに強制する権限を持つことになる。

KOSAは依然として違憲の検閲法案である

KOSAは、若者に何を表示するかとは無関係に、Googleの検索結果には影響を与えないが、Instagramは幅広いコンテンツに責任を負うというように、依然として著しく包括性に欠ける。その一方で、精神的な苦痛を抱える若者が感情的、精神的、性的健康に関するサポートを見つけることを困難にするのだ。

この修正版の唯一重要な変更は、KOSAを上下両院で可決に近づけたことだけだ。つまり、すべての人の言論の自由とプライバシーを脅かすオンライン検閲体制の確立に、我々を一歩近づけたのである。

The New U.S. House Version of KOSA Doesn’t Fix Its Biggest Problems | Electronic Frontier Foundation

Author: Jason Kelley and Aaron Mackey / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: September 17, 2024
Translation: heatwave_p2p